「この取り組み(自閉症児の指導の最適化をめざした教育)は自閉症の教育だけの問題だけでなく、すべての子どもたちの教育にも通じることであります」。
これは平成13年度の北海道教育大学教育学部付属養護学校の研究紀要のまえがきにあった木村校長先生の文の一部である。「自閉症児の教育に視点を置いたこの4年間で、学校が大いに変わりました。わかりやすさを追求していくことが、学校の環境を大きく変えました。教師の教育に向かう姿勢が大きく変わりました。(中略)私たちの実践は養護学校内にあるバリア(物理的、教育的)及び家庭や地域に対してもつバリアを取り除く取り組みであると言えましょう」に続く言葉でした。
この研究紀要は2色刷りでとても読みやすく、理論編と実践編の2分冊、理論も実践もコラムも実に新鮮で魅力的。「将来の豊かで充実した生活」に向け、研究グループを「くらし」「しごと」「よか」に分け、徹底して「わかりやすさ」を追求した研究でした。当時、臨床心理士のIさんを中心に養護学校や小学校の教員が夜集まり、これをテキストに勉強会を続けていました。
私たちは知的障がいの支援学校や支援学級でTEACCHを学びながらスペクトラム支援の実践していたので、スペクトラムに分かりやすい支援は、知的障がいをもった子どもたちにも分かりやすい支援であることを実感し、さらに障がいを持たない子にも有効であることも想像できました。また知的障がいに有効な支援は、スペクトラムに有効な支援ではないことが多いこともを実感していました。したがって木村校長先生の言葉に大いに納得。まさに私たちの言いたいことを代弁してくれた言葉でした。
私は20年以上スペクトラムを学びながら60年以上も生きてきました。そんな私に校長先生の言葉を借りて言わせてもらえば「自閉症スペクトラムにやさしい支援は、全ての人にやさしい支援です」。