ちょっとずつではありますが読書はしていますので、最近読んで面白かった一冊について感想を。
『ぼくはソ連生まれ』
ヴァシレ・エルヌ著
篁園誓子訳
群像社
著者は1971年ソ連生まれで、現在はルーマニアで執筆活動をなさっているようです。この『ぼくはソ連生まれ』は2006年の作家デビュー作で、その日本語訳である本著は昨年の出版です。
著者と同年代の私にとって旧ソ連は、鉄のカーテンの向こうの怪しげな国、みんな平等に貧しい国、といったイメージでしょうか。ソ連崩壊前夜の出来事として、サハリンで大やけどを負った少年を人道的且つ超法規的措置で北海道の病院で受け入れたこと、マクドナルド目当てにモスクワの街角に大行列ができたことなどが、私のソ連に対するイメージの元になったような気がします。
つまり、ソ連の人たちは不幸だったに違いないと思い込んでいたのです。この本を読むまでは。
ところが少なくとも、この本の著者と彼の周囲にいた人たちは私が想像していたほど不幸ではなかったようです。そして、ソ連指導者を尊敬もしていた。
しかし、ソ連は崩壊した。
これが歴史的事実です。
内容で興味深いのは、ソ連における彼らの日常生活について綴られているところです。一例を挙げると、居住移転の自由がなく、血縁でもない人たちとの共同生活がソ連の一般の生活だったということ。つまり、生活にプライバシーというものがなかったわけです。
私にとっては信じられないこんな生活も、著者はけして否定的には書いていません。他にも、初めてのジーンズ、夏休みのキャンプ、ソビエトのご当地ロック、セックス事情などについてエッセイ風に記録されています。
ちなみに、内容について、私はどこか昭和的な、共同体で助け合っていた頃の懐かしさを感じたわけですが、似たような感想を寄せる日本人は他にもいるようで、それについて「日本人の考えていることは分からない」と著者はおっしゃっています(笑)

