隣の男は、よくお菓子を渡している。
私の反対側の隣の女の子に。

優しいのね、と思った。

最近あの子、イライラしてるもの。
だからきっと、気遣ってるんだ。

いい人ね。

 

そして次の日。

女の子は男に、お菓子を渡した。

ああ、なるほど。

お返しか。

 

さらに次の日。

男は私にお菓子を渡した。

 

——来た。

 

私は理解した。

これはもう。

 

恋。

 

私は気が利く女だから、わかる。

ここからが大事なのよ。

恋は初期対応を間違えると、
すぐ壊れるものだから。

だから私は決めた。

 

この二人、絶対くっつける。

 

私は、サポート役。

 

隣の男はよくお菓子をくれるのは…
男はきっとあの女の子に渡したいんだけ!
きっと好きなのね。
わかってる。
私は気が利くから。サポートしてあげないと!!

 

だから私は、ちゃんと考えた。

 

ただ渡すだけじゃだめ。
 

自然に。
さりげなく。
気づかれないように。

 

恋の橋渡しは、静かにやるのが一番だから。

 

「ねえ。」

 

私は隣の男に声をかけた。

 

「はい?」

 

「そのお菓子、今日もあの子に?」

 

一瞬、固まった。

 

やっぱり。
図星だ。

 

「い、いや……これは別に……」

 

照れてる。
間違いない。
好きなんだわ。

 

「大丈夫。任せて。」

 

「え?」

 

「こういうの、得意だから。」

 

私はそっとお菓子を受け取った。

そして、彼女のところへ歩いていく。

 

「はい、これ。」

 

「え? なにこれ?」

 

「隣の人がくれたの。」

 

「……え?」

 

後ろで椅子が鳴った。

振り返らない。
こういうとき、振り返るのは野暮。

 

「えっと……ありがとう?」

 

女の子は首を傾げながら受け取った。

 

よし。
成功。

席に戻る。

 

隣の男は、固まっていた。

 

「気にしないで。応援してるから。」

 

「……何を?」

 

「わかってるでしょ。」

 

——恋って、糖分が大事なのよ。

 

そう思いながら、私は今日も袋を開ける。

最近のお気に入りはこれ。

 

▶︎【今日の差し入れ】かりんとう

 

 

 

外はカリッとしてるのに、中はほろっとやわらかくて。
甘さも強すぎなくて、ちょうどいいの。

恋の応援には、これくらいが最適ね。