今日は徘徊について書きます。
認知症の症状の一つとして徘徊という行動があります。徘徊にもいくつか種類があるのですが、今回は私が出逢った方を例にして紹介したいと思います。もちろんその方のプライバシーもありますし、会社にも迷惑がかからないよう配慮して書きます。
(仮名)佐藤さんという方は現在一人暮らしでデイサービスを毎日利用されているのですが、デイサービスでは落ち着かず常にふらふらと歩き回っています。いつ勝手に外に出るか分からないので、常に目を配っておく必要があります。また転倒にも気をつけなければなりませんし、周りの利用者の方々も落ち着くことができません。
家までお送りしても、またすぐ外に出ようとします。実際に迎えに行ったときも家にいないことが多く、近くの空き地や道路までふらふらと出ています。
徘徊する理由としては、自分でも訳が分からなかったり道を全く覚えることができず迷ってふらふらしたりと様々なのですが、佐藤さんにはちゃんとした理由がありました。私が「どうしたの?」と聞くといつもこう答えるのです
「お父さんに逢いたい」と。
佐藤さんはご主人を探しているのです。
今までご主人と一緒に過ごしていたのですが、ご主人が入院されてからは独り暮らしが続き不安な気持ちになったのでしょう。それまですることのなかった徘徊をするようになりました。
私は佐藤さんにいつも「今度お父さんのところに一緒にいこうね」と言って落ち着かせています。そういうと佐藤さんは「ほんと?ありがとう」と私の手を握り涙ぐみながら言います。ですが、私の職務上佐藤さんをご主人のところに連れて行くことはできないので、私はいつも佐藤さんに嘘をついていることになります。ただ、そのときの佐藤さんは本当に嬉しそうな顔をしているのです。
こういった理由を話せる人に関しては、相手の話を最後まで聞く必要があります。毎回同じ話を聞くことになるので、つい話を遮りがちになるのですが、相手にとっては初めて話しているつもりでいるので、絶対に遮ってはいけません。外に出ている場合は「せっかくだから着替えましょう」と言って家に戻ったり、相手の要望に応える振りをしたりします。そうして落ち着かせた後、興味を別の対象に持っていくのです。例えば、「トイレに行きませんか」だったり「先に食事にしましょう」だったり何でもいいのです。その行動をとったときには、既に自分がさっき何をしようとしていたのか忘れるのです。相手が認知症であることをうまく利用した方法なので、すっきりした解決法ではありませんが、現状はこれが一番だと考えています。仮にご主人のもとに連れていったところでまた行きたいと言うので、我々ができる範囲での解決方法は限られているのです。
認知症には様々なケースがあり、おおまかな括りはあるものの、ひとりひとり症状が異なります。なので、その人にあった接し方をしなければりなりません。その人が今までどんな暮らしをしてきたのか、今どんな暮らしをしているのか、周りのサポートがどれだけあるのか、そういった背景を理解しておかなければなりません。
次回も、認知症の方の話を書こうと思います。
よければまた読んでください。
