「わたしはクズで、生きる価値も無いんです。もう死にたい」
尋ねてきた女性がそう言った。手首には痛々しい傷が幾つもあった。
「私は今、とても悲しい。あなたが死んでしまったら、私は悲しいです。生まれてきた人には全て意味があります。地上に来る必要が無い人は、生まれて参りません。親が幾ら望んでも、子供に地上に来る理由が無ければ、生まれてきてはくれないのです。
あなたは死にたいとおっしゃりますが、死んでも無にはなりません。死では解決しないのです。あなたが見て欲しい、こうありたいという姿ではなく、今のあなたそのままで向こうへ参ります。
環境が悪いなら、変える事です。居たくない場所なら、脱出する事です。人間は火山の中で生活できません。山の生き物は海底で生きてはいけないのです。
いずれ、時が来れば私たちの肉体は滅びます。嫌だと言おうが、こちらの都合がどうであろうが、時が来れば肉体は無くなってしまうのです。
悲劇のヒロインに酔っているより、優しさを配ることです。あなたは、だれかに優しさを配ってあげましたか。なんでも良いのです。座席を譲る、朝の挨拶をする、お風呂掃除をする、簡単なことでよいのです。お礼などは必要ないのです。相手が感謝してくれなくても、あなたは優しさを配ったのですから。それでよいのです」