裁判年月日 平成25年10月10日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決

事件番号 平24(ワ)16515号

 

賃貸人(夫妻)は二世帯住宅を所有し、3階建て。

その一部を他人に貸していたが、体調不良につき、息子夫婦を呼び寄せるため立ち退きを求めた。

 

ポイント)

正当な理由があるか?

更新料を払わないことをどう評価するか

 

◆原告の体調不良と息子B夫妻との同居の必要性

原告は,妻と共に60歳を超えて,夫婦2人のみでの生活には不安を感じている。具体的な不安を感じる原因としては,年齢だけでなく,健康状態が良くないからである。原告はメニエール病を患い,めまいや頭痛といった症状に悩まされている。また,原告の妻は平成18年に乳がん,平成22年ころに子宮がんを患っている。健康状態への不安が原告夫婦の現実的な問題であることは,本件裁判の証拠調べ期日の2日前に原告が発作性上質頻脈により倒れて救急搬送されたことからも明らかである。


 そのため,原告は,二男であるB(以下「B」という。)に,本件賃貸物件への居住をしてもらい,原告夫婦の生活を助けてもらう必要がある。B夫妻は,原告夫婦と本件建物に同居して安心して子育てをすることを希望しており,本件建物が明け渡されればすぐに引っ越しをする準備はできている。

 

◆建物の老朽化と耐震工事の必要性

本件建物は,軽量鉄骨造であるが,平成23年3月11日の東日本大震災などを経て,本件建物の1階駐車場部分の土間には多数のひび割れが生じており,駐車場入り口上部にも梁たわみによるクラックが生じている。これらひび割れ等に対しては,耐震補強工事が必要であると建築会社より指摘されている。その補強工事では,本件建物外周に仮設足場を設けて工事を行うため,本件建物に居住しながら行うことはできず,引っ越しをすることが必要となる。
 したがって,この修繕を行うためにも,被告に本件建物を明け渡してもらう必要がある。

 

◆更新料を払わない

原告は,平成21年の本件契約の更新の際,本件契約の内容のとおり更新料の支払を希望していたにもかかわらず,被告が本件契約の内容とは異なり更新料なしでの契約更新を希望したことから,被告に対する信頼を失い,本件契約の解除を申し入れる状態にまで至っている。
 これらの事情はいずれも本件契約の更新拒絶の正当事由の存在を肯定すべき事情と評価できる。

 

 

被告側の事情を最大限考慮したとしても,本件契約の期間満了日である平成23年7月9日時点において正当事由が具備されていたものと評価することができ,この場合の立退料は,本件契約上,賃貸人による更新拒絶の通知に要する期間が6か月と定められていること等の本件における事情に照らせば,102万円を相当というべきである(家賃6か月分)

 

建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件) 
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、
 
●建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情
●建物の賃貸借に関する従前の経過、
●建物の利用状況及び建物の現況並びに
●建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
 
を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。