「チィ……!」
「ほれ見ろ!破れんかったわい! 人の話を聞かんからじゃ!」
「父さん、そんなこと言わなくても……」
「ンだよ!何回でもやりゃいいだろうが! できるできないの問題じゃねぇ! やるんだよ!」
「か、カズマさん、落ち着いて」
制止に入るマミ。しかしカズマは聞かない。
「目の前に壁がある! だから俺はこの力を使う! 折角手に入れたんだ、俺はもう迷わねぇ!
俺は迷わずこの力を使う!」
「ふん!勝手にせい! ワシらはワシらで対策を練るんじゃ!」
「ああ、勝手にするさ!今までそうだったからな!」
憤る二人。場に不協和音が流れ始めた。
「まぁ、落ち着きなって」
それをかき消すように声を上げたのは、佐倉杏子だ。
「何も一匹狼気取る必要はないんじゃないか? お互い協力しようってんだ。
アンタを待ってるダチのことも考えたらどうなんだい」
君島のことが脳裏を掠めたのか、カズマの表情が曇る。
「悪い話じゃないと思うね。アンタは力を試してさっさと森を出る。
その力試しにちょいと協力しようってだけさ」
杏子は見事、不協和音を調律して見せた。
「――なぁマミ」
巴マミに丸投げという形で、だが。