昨夜は大学OB会関連で毎年恒例の横浜中華街での会食に行ってきました。

これから始まる治療に備えて風邪などひろわないよう厳重にマスク装備です。
少し時間があったので早めに家を出て、前々から気になっていた横浜開港資料館に寄り道しました。
特別展「明治の戦争と横浜」をちょうど開催していました。
徴兵制が始まった経緯などなかなか知らなかった近代史を資料によって見ることができて面白かったです。
みなさま「血税」というと税金のことを指すと思っている方が多いのではと思いますが、実は「血税」とは税金ではなく、血によって納める税、すなわち徴兵のことを意味していました。
徴兵は日本の歴史の中ではなかったため庶民から大きな反発を集めたそうなのですが、「西人はこれを『血税』という」と欧米では徴兵がスタンダードであると説明した文章が出回ったそうです。
これを見て、本当に血で支払わなくてはならないのではと勘違いした人々が大騒ぎしたという記録も残っていました。

この週末も会う人会う人に再発した、手術は断られた、これからセカンドオピニオンに行く、という経緯を説明して回っています。
ちょうどお歳暮シーズンのためお歳暮のやり取りをしている方々ともお電話する機会が
多いのですが、そのたびに同じことを繰り返して言っています。
手慣れたもので説明するもの上手くなってきたのですが、何度も繰り返すうちに、やはり手術は無駄なのか、局所療法による根治がだめなら延命しかないのか、とずしりと厳しい現実に実感がわいてきました。

私はがんであることもステージ4であることもフルオープンにしています。
当然再発もオープンです。
なのでがん患者の多くが悩む「カミングアウト」の問題とは無縁でした。
これはやはりある程度年を取っていることと、自営であること、そして子供が後を継ぐための資格取得を済ませていることなどがあるため可能になったことです。
この点では恵まれていると思います。
仕事柄、がんであることを公表できない人や病状を隠さなくてはならない方も多いです。
最近お電話した方の中にまさに公表できないお仕事の方がいて、同じがん患者といえど違った悩みがあるのだなと実感しました。
お仕事上の問題がなかったとしても、病気というのは究極の個人情報です。
人には言いたくない方もいるでしょう。

人それぞれの事情があり一概には言えませんし、公表すること自体ができない方も少なからずいらっしゃいますが、私自身としてはフルオープンにがんを公表したことはよかったと思っています。
本人としてはとても気が楽です。
再発したとか手術ができないとか打ち明けられた方は気が重いかもしれませんが、わからないよりは情報がある方が接し方も見当がつくでしょう。(都合のよい解釈かもしれませんが)

春の手術が終わったあたりにお会いしたことがある方は術後の絶食で少しスマートになった私を見ていたので、現在のメタボ体形を取り戻した私を見て「良くなったんだね」「治ってよかったですね」「元気になりましたね」と思い思いの声をかけて下さるので、「いえいえ再発しまして」と言うこちら側も少しばつが悪いです。
こんな会話をして、がんであることが「がんという病気」を患った以上の意味、後ろ暗いスティグマ性を帯びないよう自然体でふるまっています。
無理に明るくポジティブにするでもなく、気後れして隠すのでもなく、普通にがん患者として過ごしています。
「がんのことなら何でも聞いて」と二言目には添えるので、相談や愚痴などを寄せられる機会も増えました。
思った以上にがん患者は多いです。
実はうちも…とか、実は私も…と思わぬところから登場することもよくあります。
積極的にアピールする必要はありませんが、もっと隠さずがん患者が自然に生きられる世の中になってほしいものだと思います。