今日は二日にまたがった税務調査の立会いの後半戦でした。
秋の税務調査シーズンのため毎週どこかしらの税務調査に立ち会っています。
準備や立会いに時間がかかり何かと忙しく過ごしています。
しかしながら一日仕事や二日がかりでの立会い中、顧問先の社長さんや社員さんとゆっくりと話もできるため、得ることも多いです。

最近してきた話の中で、「突然死とがん死のどちらがましか?」というのがありました。
よくがんと闘病中の方が「死ぬならがんがいい、何故なら猶予期間があって準備ができるから」と言っているのを目にします。
確かに一理あると思います。
しかし私はやはり死ぬなら突然死がいいなと思っています。
死ぬことがわかっていると、あれもこれもと準備するのが大変で、しかもがんだとそれが年単位となるので厄介で仕方ありません。
突然死ならば確かに準備が不十分なので残されたご家族が大変だったりやり残したことなどもあるのでしょうが、死後に大抵のことは何とかなるものです。
(もちろん死後にどうにもならないこともありますので、日頃の最低限の準備は大切ですが…)

どうせ死ぬならがん死より突然死のほうがまし、というのが私の持論ですが、最近お話しした顧問先の社長さんは突然死は絶対嫌だとのご意見でした。
この社長さんは心臓に持病があり、突然死する危険が高いので毎晩寝る前に「このまま二度と目が覚めないかもしれない」と心配でなかなか眠れないとのことです。
ああこういうこともあるのか、と目からウロコでした。
結局「突然死もがん死もどちらも嫌だ」という結論に落ち着きました。

当然ながら死ぬのはいつ誰にでも起きることです。
だからこそ日頃の備えは大切です。
しかしながら人間は自分が死ぬことを考えるというのがとても苦手です。
わざわざ「メメントモリ」と言わなければいけないくらい普通ではないことなのです。
死ぬことを考えられないのは生き物として当然と言えば当然ですが、現代人は死を前提に準備しないと大変なことになってしまうケースが多すぎます。

この仕事をしていると準備せずに亡くなってしまった際に残された関係者が困って身動きが取れなくなってしまったケースを時々見ます。
たとえば、仕事をした先の会社の社長さんが突然死して代金をもらえなくなってしまったケース。
また、土地を売って銀行にお金を返す予定だったのに突然亡くなってしまって土地を売れなくなってしまったケース。
そして、社長が亡くなってしまって今どのような仕事をしていたのかわからなくなってしまい相続人が途方に暮れたケース。
相続税の申告準備中に相続人が突然亡くなってしまい遺産の分割がまとまらなくなってしまったケースもありました。
個人事務所を経営している開業税理士が突然亡くなると次の日から税理士業務が一切できなくなり勤めているスタッフや顧問先が途方に暮れて本当に大変です。繁忙期に起きると目も当てられません。
あとは社長が後継者をきちんと決めないまま亡くなり後継者争いが始まってめちゃくちゃになるケース。次の社長が決まらないと何も前に進めません。
もちろん大抵のケースは残された人達で何とかすることができますが、上記のようにどうにもならずに大変なことになる場合も時々あります。

こうやって列挙してみると、やはりがん死の方が突然死より少しだけましかもしれません。
しかし私自身まだまだがん死するつもりはないので準備にほとんど手を付けられていません。
他人のケースは沢山見てきましたが自分となると話が全然違います。
2,3回くらい死ぬことができるならそれなりに経験を積むことができますが、稀に起きる蘇生のケースを除いて人は一度しか死ぬことができないので、出たとこ勝負にならざるをえませんね。