明日から5月の業務が始まります。
三月決算五月申告のため繁忙期の始まりです。
明日の月例ミーティングの準備を終え、先ほど夜の散歩に行ってきました。

GW中には各地で色々なイベントが行われていたと思います。
私はボランティアで社労士、行政書士、弁護士、司法書士の先生たちと地域のイベントにブースを出す無料相談会を続けてきています。
複数の専門家による相談は、どこに相談したらいいかわからないという案件や、複数の分野にまたがる複雑な相談がその場で解決するのでなかなか面白い試みだと好評です。
今年は術後ということで事務所の所属税理士達に頑張ってもらい、私は免除してもらっていますが少しだけ顔を出してきました。

がんと就労の問題で中小企業の領域で何とかならないか考えていると話してきたのですが、社労士の先生たちいわく、最近顧問先の社長さんたちに「『ながらワーカー』というのを最近よく見るが小さいところでは無理だ」とよく言われるそうです。
確かにもっともだと思います。

「ながらワーカー」の問題を経営者の視点から見ると、今働いている従業員ががんになるケースと、がんを治療中の人が求人に応募してきたケースがあります。
前者は何とかサポートすることができるかもしれないですが、会社によっては結構きついものがあると思います。後者に関しては、社会的には大事なことかもしれませんが、一つの私企業で対応するには限界があり、あえて治療中の患者を雇用することは企業体力が弱い中小企業では難しいです。

だからこそ、がんと就労の問題を専門とする社労士さんたちの多くが「がんになっても絶対に仕事をやめないで」と書いているのですが、仕事を辞めないよう呼びかけるだけでは本質的な解決には程遠いと思います。
がんというなかなか手ごわい病気になってわかったことですが、この病気の治療は予定を立てやすい面と立てにくい面の両方があります。
定期的あるいは不定期な離脱による業務の穴をどうするか、補充人員をどうするか、籍を置くことにより発生する固定費をどうするか……「ダイバーシティマネジメント」というきれいな言葉一つでは乗り越えられない現実的な問題が山積みです。
このような状況下で「治療に専念」という便利な言葉が働くがん患者を切ったり、就労をあきらめさせたりするよい口実となっていることも少なくないと思われます。

今の制度では最大のがん保険はアフラックでもメットライフでもなく、新卒で公務員になっておくことだったということになりかねません。

私の事務所では今のところ従業員が「ながらワーカー」になるケースは3例程対応してきましたが、求人にがんの治療中であることをオープンにした方が応募してきたことは一度もありません。
もし応募してきたらどうするか、なかなか難しい問題です。
過去に障害や持病を採用面接時にオープンにしていた方を、仕事に差し支えないよう配慮した上で雇用したことは何回かありますが、がんは未だないです。
がんと一口に言っても様々です。ステージ1なら雇うのか?ステージ4ならどうするか?生存率の高いがんなら雇うのか?難治性のがんならどうするか?初発なのか再発なのか?治療中か経過観察中か?
一番シンプルな解決法は「全員お断り」ということになりかねません。

東京都では昨年度より東京都難病・がん患者就業支援奨励金を始めているそうです。
新規採用と継続雇用の二つが対象となっていて、がん患者を新規に雇った企業に60万円(週20時間以上雇用)の助成金、休職中のがん患者の復職には最大60万円の助成金が企業に入るようです。
少しずつこのような制度が、企業に負担を強いる形ではなくどんな会社でも簡単に使えるようになるといいと思います。

また治療中に働くという選択肢が守られるのと同程度に、治療中に働かないという選択肢もある程度守られるようになることも望ましいと思います。
働かざるをえないから働くのではなく、治療しながら働きたいから働く。働かせてもらえないから働かないのではなく、治療に専念したいから働かない。
もちろん企業の経営や国家財政の観点から無尽蔵にとはいきませんが、一人ひとりの状況に依存した選択をある程度担保する制度設計は必要になると思います。
税制に関して、障害者控除のようながんサバイバー控除を新設することなどがあってもいいかもしれません。

20世紀には多くのがん患者は短期での死亡あるいは完治しかありませんでした。
しかし治療の飛躍的な発達により、中長期的にQOLを保ったまま治療を続けるがん患者が沢山社会に登場することになりました。
このような現象は、がんで死ななくなる時代が訪れてがんが単なる慢性疾患の一つになる前触れです。
新しい時代にあわせて社会が変化することを望まずにはいられません。