手術のための入院まであと二日。
仕事の引継ぎは粗方終わり、懸案だった床屋さんも歯医者さんも済ませ、あとは入院グッズを揃えるくらいです。
今週新しく相続税申告を依頼されたお客様の話を守秘義務に触れない範囲で少しだけ。
被相続人(亡くなられた方)が生前エンディングノートをつけていたおかげで、銀行預金や保険や有価証券、誰にどれだけ生前贈与していたかなどがまとまっていました。相続人(ご遺族)に負担がかからない非常にスマートな相続ができそうです。
生前贈与の有無や変な使われ方をしていないかを見るために銀行口座などを5年くらいまで遡って調査しますが、ご本人がその都度書かれていることなので大変わかりやすくて助かります。
相続トラブルで家族がいがみ合うことはよくありますが、エンディングノートにお金のことがまとまっているだけで回避できるトラブルがかなりの部分を占めているなというのが私の肌感覚です。
エンディングノートは各社から発売されておりますが、お金のこと、財産のこと、交友関係、治療の希望、葬儀の方針、自分史など多くの項目があり、まさに人生の集大成の様相を呈しています。
どこから書けばいいか途方に暮れる方もいらっしゃると思います。
好きなように書くのが基本だと思いますが、相続税申告の観点から見てここだけ押さえておけばいいなというポイントは、
①預貯金リスト(銀行名・支店名・種別・口座番号)
②加入している生命保険(保険会社名・契約者・被保険者・受取人・保険証券番号)
③生前贈与リスト(いつ誰に何をあげたか)
④有価証券リスト(投資信託・株式)
⑤第三者への貸付金リスト
⑥貸金庫の中に入っているものリスト(亡くなられると貸金庫の中を確かめるのに手間がかかります)
これ以外の項目は後から調べれば比較的簡単にわかります。
例えば土地建物は名寄帳(固定資産課税台帳)から簡単にわかります。
しかし上記六つはややこしいため、残していただけると財産漏れを防げますし、ご遺族のトラブル回避に繋がります。
なお、預貯金の通帳等は使い終わってもできるだけ捨てないで取っておいて下さい。
人間の生物学的な死を看取るのが医療者だとしたら、私たち税理士は人間の法的・社会的・経済的な死を看取る専門家でもあります。
多くの顧客の「看取り」を経験しました。
生前に相続対策のためにご相談に来る方の中にはがん患者さんもいらっしゃいました。
病院まで相談に伺ったことも何度もあります。
私自身がステージ4のがん患者になって、あの時あのお客様が言っていたことはこういう意味だったのかなあと初めてわかったことも多いです。
がんの方もそうでない方も、ある一定以上の年齢の方は法的・社会的・経済的な死に向けて、少しずつ整理すると安心です。
専門家の手を借りずともご自身でできることがほとんどですので、トライしてみて下さい。