日本人初でアーベル賞を受賞されたとのことで、少しはその研究内容を齧っておこうとD加群を調べようとしましたが…加群の認識が「係数付きx」くらいの認識(ひどすぎる…)しかなかったので再整理。
加群とは…係数付きのx が元である集合、ある集合の元がXとYのとき(aとbが係数)、
aX + aY= a(X + Y)
aX + bX = (a+b)X
(ab)X = a(bX)
1X = X ※1は単位元
を満たすものとされています。
これを見ればわかるとおり、係数は体であるが、より一般的に環Rを想定するのが普通である(除算について閉じてない、つまり元が全て逆元を持つとは限らないので)。この場合をR加群という(つまり、環R上に、その元から生成される加群を構成できる)。
ここで、微分演算子Dを考える。
Dを関数の集合M(f(X)を集めたもの)の元Xに作用させると、微分後の(X)’が得られるが…(これは1ですね)
上記の例をDにも適用すると(Dとδは微分演算子の元、XとYは関数の集合の元)
DX + DY= D(X + Y)
DX + δX = (D+δ)X ※D+δは直接計算できない!関数に作用させてはじめて値が出る
(Dδ)X = D(δX) ※一般には Dδ = δD とは限らないので注意
1X = X ※1は単位元、恒等写像
といったことが成立する。
つまり、Dを作用させた元は加群とみなせそう…だが、以下に注意。
微分演算子 D は数ではなく、関数に作用する演算子である。
そのため、D を通常の加群の係数として扱うことはできない。
そこで、微分演算子Dや 掛け算演算子x(※注意。ここでは乗算作用素を指す、内積でも外積でも行列積でも数の掛け算でもない)を含む微分作用素環 を作る。
この環は非可換であり、微分の関係 D x − x D = 1 を満たす(※ここでのx は掛け算演算子です)。
ここで、D x − x D = 1 とは、例えるならば、
「微分してから 関数集合Mの元X を掛ける」と
「関数集合Mの元X を掛けてから微分する」の違いが(Xは通常の関数xのこと)
ちょうど恒等写像 1 になる、という意味。
実際に関数 f (→f(x))に関数集合Mの元X をかけて作用させると、
D(X f) = f + X f' ※Xf → X x f 、X f' → X x f' のこと
X(D f) = Xf'
fだけズレる→つまり上記の差は f となり、
(D X − XD)(f) = f = 1(f) ※ここのXも元Xです
※ここで補足
具体例のために、関数集合Mの元Xをかけましたが、
別にこれを持ち出さずとも微分演算子Dおよび 掛け算演算子xを用いて、D x - x D = 1 と表し、これが
• 「微分してから掛け算演算子 x を作用させる」→左辺1項目
• 「掛け算演算子 x を作用させてから微分する」→左辺2項目
この差が、恒等写像 1 になるということなので…
実際に関数 f(x) に作用させると
D(x f) = f + x f'
x(D f) = x f'
よって差は
(D x - x D)(f) = f = 1(f)
つまり、
D x - x D = 1
が成立する…とするのが本来です(具体例で元Xを持ち出す必要なし)。
※↑補足はここまで
つまり
D x − x D = 1 (※微分と掛け算演算子xは、一般に順序を入れ替えると一致しない。)
となるため(fで両辺を除せるとは限らないことに注意)、この式が成立する。
これは微分作用素が非可換であることを示す。
(※掛け算演算子xは、いったんここまで)
この非可換関係を満たすように構成され、
掛け算演算子x と 微分演算子D
をまとめて扱うための演算子の世界→環 となるもの、
それこそがワイル代数である(掛け算演算子や微分演算子 D、そしてそれらを組み合わせたあらゆる微分作用素もまとめた「(非可換である)演算子の環」。つまり、関数の集合がMであり、それに作用できる掛け算演算子や微分演算子Dの集合がワイル代数)。
ここまでくると、微分方程式を代数的に扱いたい欲望に駆られるが…そのためには、
演算子 を自由に足したり掛けたりできる“演算子の環”が必要になり、 その役割を果たすのが、微分作用素をすべて含むワイル代数そのものである。
つまり、ワイル代数のどんな元(微分作用素)も M の関数に作用できる(M はワイル代数の作用を受ける構造を持つ)ことから、M はワイル代数を係数とするワイル代数上の加群として扱うことができる。
これが D 加群の基本的な考え方であり、この環の元(微分作用素)が関数に作用する構造をD-加群(D-module)と呼ぶ。
ここで、Dを体のように扱える関数集合Mを考えたくなりますが…
D の逆元が存在する関数だけを集めても、
D の逆操作である積分は積分定数の分だけ一意でなく、
また D の核(定数関数)が 0 でないため D は単射ではない。
したがって D は逆元を持てず、体の元として扱うことはできない。
さらに、D と 掛け算演算子x は
Dx - xD = 1
を満たすため可換でもなく、体の構造にも適合しない。
よって、D を「係数」として扱える M は一般には存在しない
(現状では不可能とされているそうですが、もしあったら教えてください…)。
しかし、D が自然に作用できる関数集合 M は多数存在する。
代表例は、多項式環C[x]、解析関数、C∞関数、シュワルツ関数、分布など…。
これらの M は、x(掛け算演算子)と D(微分演算子)の作用を受けるため、
ワイル代数 R の作用を受ける R-加群(D 加群)として扱うことができる。
つまり、D を体のように扱うのではなく、
D を作用素として扱える M を選ぶのが D 加群の本質である…とのことでした。
• ホロノミー
• 階数
• 層との対応
• Riemann–Hilbert 対応
もいかが?と、コパ先生が執拗に進めてきましたが…食傷気味なので今度にします(笑)。
※微分方程式とD加群のつながりについて
イデアルとは「0 とみなしたい式(関係式)の集まり」である。
同次系微分方程式 P(D,x)f = 0 は、
「演算子 P を 0 とみなす」という関係式を表し、
ワイル代数 R の中ではイデアル (P) を作る(方程式を満たす解、関数の集まりはker P)。
このイデアルで R を割った商 R/(P) が、
その微分方程式に対応する D 加群となる。
一方、解析的には P のカーネルが解空間であり、
D 加群のソリューションも微分方程式の解を求めることとなり、これらは軌を一にする。
つまり、
同次系微分方程式 = カーネル(解析)
同時系微分方程式 = イデアル(代数)
という二つの観点から解釈可能である。
