Seasons end
盛岡市~千葉県
邦題が「美しき季節の終焉」という、このマリリオンのアルバムタイトルチューンが帰りの高速道路を走るときの自分の鼻歌となる。 この曲をご存知の方は殆どいないと思うが、ここ数年何百という洋楽特にプログレッシブロック系の曲としては、まさに珠玉の傑作だった。秋の始まりを思わせるイングランドの憂鬱な空をイメージさせるこの曲は、まさに短い夏を謳歌した後のなんとも言えぬ物悲しさあの砂を噛むような感覚に聞き手を引き込んでくれるのだ。 盛岡のYHを6時に起床し、朝飯は最初から食べない事にしていたのですぐに荷物を纏め始める。同室に居合わせた2人組の男性客は、こっちの物音に気が付いてモゾモゾとしていたが、間もなく寝てしまったようだ。外に出る。別室のお客と挨拶を交わし靴を履きながら少しの間話をした。その男性は一人で来ているのだが、今日は八幡平に行くつもりだと言っていた。しかし、天気は小雨が降る生憎の空模様である。過去に、自分も八幡平に行ったことがあったが、その時も真っ白だったという憶えがあった。しかし、翌日キャンプ場を出発してもう一回行って見ようと、見返り峠まで登った所で天気はいきなり回復し素晴らしい眺めが眼前に広がり、大感激したのだった。 しかし、今日1日は無理だろう。すこしでも、待っている間に天気が変わってくれれば良いのだが・・・・ お別れの挨拶をし、自分は相方に最後のパッキングをする。小雨が降っているだけの天気だが、この先500㌔以上の間でどう変化するかは予想がつかないので、フル雨装備にしておいて間違いは無いだろう。「今まで重たい荷物載せて悪かったね、それも今日が最後だ。もう一頑張り頼むよ」と言い聞かせながら、一つ一つ丹念に荷物を固縛して行く。もう、ゴム紐もツーリングネットも限界を超えている。ただの紐になってしまっている。今日の殆どは路面状態の保証されている高速道路しか走らないから、その点は救われている。ここから家まで持ってくれれば、あとは処分するだけ。ただ、捨てる前に長い間荷物を抑えてくれた事に感謝して、写真を撮ってから処分したいと考えている。 午前8時過ぎ、盛岡南ICから東北自動車道に乗る。ヘルメットのなかで「ふーーっ」と大きく息をし、ゆっくりと加速を始める。最後の大仕事だと言う事を分かっているのだろうか、相方もアクセルの開度にあわせて、スムーズに回転を上げていく。速度が上昇し、交通の流れに乗る。 法定速度+αのペースをこれから都内までキープして走るのだ。いかれた走りをするような車がいても、煽ってくるようなトラックがいても全く無視する。そうでないと、ペースキープは難しいし、注意力が散漫する。道路に張り出して点滅している電光掲示板には気温23度と出ている。まさに長距離移動には恰好の気温である。太陽も出ていないし、雨も弱い雨が時々降る程度。自分が一番望んでいる、天候状態だ。 後は、ガソリンがリザーブになるまで走り続け、リザーブになったらガス補給と休憩を兼ねてSAに寄り道するという、行動パターンを繰り返せばいいのだ。 盛岡から浦和本線料金所まで、512キロ、千葉まではさらに60キロ以上を走る。しかし、北海道での移動距離を考えたらものの数ではない。お盆の時の気違いじみた渋滞も無い、所々車線規制している工事箇所があったが、通過する車そのものが圧倒的に少ないので、殆ど影響は無い。休憩するPAやSAも閑散としている。 天気が悪いのもあるのだろうが、殆どの利用客がネクタイを締めたサラリーマンや作業服を着た工員ばかりだというのも、何だか妙な感じだった。自分も少し前まではあっち側の人間だったのだ。しかし、これが終われば間違いなく自分もあっち側に行かなければならないのだろうか、それとも行きたくても行け無いかもしれない。 あああ、こんな事まだ考えるような場所ではない筈だ。 振り切るようにして、再び本線に戻る。ひたすら、余計な事を考えずにストイックに速度を保って走りつづけていく。天気はこの先もあまり芳しくないようだ。だが、その方がいい。 もう、寒かったり暑かったりと極端な天気はもう沢山だ。宮城県~福島県~栃木県・・・・もう間もなく首都圏だ。旅も本当に終わりなのだ。 なんだか、数週間まで前には知床や根室にいた筈なのだが、全く実感が湧かない・・・・すでに夢から覚めてしまったのだろうか・・・・・・ 夕方5時半。自宅に到着。 総走行距離約5000キロ超、1箇月と20日間の今年の夏は終わった。 近くの草むらからは、すでにコオロギの大合唱が始まっていた。もう、秋なのか・・・・・。 Special Thanks For
これからは、ツーリング仕様としての現役は勇退して遠出を控え、近所の美味しいワインディングを攻めに行くだけにしましょう。え?はいはい、その前にくたびれた所を徹底的に直します。完璧にリフレッシュして走り出すのは年明けになるかな?まぁそれでもいいでしょう。 なんせ自分の地元、千葉県はほぼ1年中単車に乗れるんですから。 そして今後の長旅は、将来手に入れようと企んでいるBMW R-GSにその使役はバトンタッチされます。これからの長旅の新展開、オフライダーに返り咲いたTNTにご注目を!!! 旅先日記>完 |