オイル漏れ・川原毛・稲庭・狂乱の宴
秋田市~盛岡市
秋田は今日もいい天気。そのかわり、暑い。クーラーを必要としないのだろうか、姐さん宅にはそれが無い。しかし、朝日がキッチン辺りから差し込んでいて部屋の温度は相当に上昇している。眠気と周りの音で、意識は朦朧としている。しかし、隣りで寝ていたリンゴさんも起き出し、姐さんは自分の為に朝ご飯を作ってくれていた。夕べだって遅く(朝早く)まで起きて、今日明日明後日の為の準備をしていたのに誰よりも早起きして、朝ご飯をわざわざ作ってくれるとは、本当に頭が下がる。
リンゴさんは普段から朝飯は食べない生活習慣なのでのんびりしていたが自分はご飯が出来上がる前に、出しっぱなしにしたままのPCやら身の回りの荷物を片付けに掛かった。しかし、ちょっと3人とものんびりしすぎたせいか、出発の時間が大幅に遅れてしまった。今日の集合場所、川原毛温泉には10時の約束になっている。この時刻は姐さんと自分が昨日、岩手近辺から来る別働隊と電話で打ち合わせをしている時に決めた物だ。だが、時計は既に9時を回っている。地図から見ても、高速を使っても到底約束の時間には現場には辿り着けない。姉さんにお願いして別働隊に予告遅刻の連絡をしてもらった。
ところが・・・・問題は更なる展開を迎えていた。アパートの駐車場に下りると、姐さんの9Rの下に大きなオイル溜まりが出来ているのを発見したのだ。
最初は、昨日姐さんがGSで初立ちゴケをかました時に、カウルの内側にたまたまオイルが溜まっていたのが流れ出したのだろうと思っていた。しかし、それにしてはオイル溜まりが大きくしかもついさっきまでオイルが滴っていたように見える。その事を姐さんに報告し、掛けてあったカバーを取り外し、どこからオイルが滴っているのかを点検した所、そのオイルはカウルからではなく、亀裂が入ったサイドカバーからであった。亀裂は思いの他大きく、どうやら昨日の立ちゴケが原因としか考えられない。折角納車したての9Rでお披露目したかった姐さんは一瞬茫然自失になりかけたが直ぐに気を取り直してバイク屋に電話で連絡、昨日入れ替えに預けていったバリオスに急遽乗り換えて現地に向かうことになった。
9Rを買ったバイク屋。
乗ってきた9Rの問題の部分を見て、バイク屋のメカニックの人はガレージから液体パッキンを持って来てそこに塗りこみオイルが染み出てこないのを確認して、「大丈夫。これで行きなって、駄目な時は駄目だから」と言った。確かに、サイドカバーのある所はオイルは溜まっているのだろうが、油圧が掛からない所だから、噴出すような事は無い。しかし、だからと言って油断は許さないだろう。という事で、姐さんは一端バリオスに乗せ買えた荷物を再び9Rに括り付けるという大変な目に合いながらも、どうにか出発。今後はオイルの染み出し具合を見ながら現場に向かうと言う、なんとも心もと無いツーリングのスタートとなった。
秋田南ICから秋田自動車道に乗って、かなり急ぎ気味に移動を開始した。大曲近辺にて先頭を走る姐さんが対向車線を指差す。その先には出口に向かって並ぶ長蛇の車の列が。この日は丁度、大曲花火大会がある日で近県から沢山の観光客が車に乗って押し寄せているのだ。姐さんの話によると、竿灯祭りとこの花火大会がある日の秋田県の国道は何処もマヒ状態になってしまうらしい。我々はたまたまその流れとは逆方向に走っているので、その影響を受けずに済んだのは不幸中の幸いだった。これで、渋滞にはまって擦り抜けなんて始められたらたまらない。相方は相変わらずのフル積載状態、そして姐さんは慣れないモンスターに手を焼いている。問題なく走っていられるのは、リンゴさんのGPだけだ。しかし、真面目で心配性のリンゴさんのこと、とてもじゃないが我々を置いて先に行く事は出来ないだろう。ましてや、秋田自動車道はその殆どの区間が暫定一車線という交通量がチョットでも増えれば即大渋滞になる造り。しかし、流れが悪くなるどころか、ガラガラでストレス無しで一気に湯沢ICまで走りきってしまえたのは大きな誤算だった。
湯沢IC直ぐそばのGSにて自分とリンゴさんがガス補給。しかし、ガスを入れていないはずの姐さんがバイクから降りてどこかに電話している。戻ってきた姐さんに聞くと、やはり応急処置したところからオイルがにじみ始めているようだ。これは、この先様子を見ながら走るしかない。バイク屋も既に部品を注文したとの事だから、帰ってきた頃には修理のための段取りは直ぐつくだろう。GSを出発、花火大会の影響で流れの良くない国道を走り繋ぎ、11時半にどうにか集合場所の川原毛地獄温泉の駐車場に到着。
既に岩手側の別働隊は到着していて我々を待っていた。しかし、約束の時間から相当立っているのにも拘らず彼らはいらだっている様子もないし待ちくたびれている感じも無い。恐る恐る聞くとどうやら彼らも遅刻をしてしまったらしい。しかも自分たちが到着するほんの少し前に此処に着いたとの事、と言う事で、お互いに遅刻をしたと言う事でお咎め無し。暫く久方ぶりの再会の雑談を交えてから、用意をして温泉に向けて出発、
勿論此処からは徒歩で向かうのだ。最初は、緩やかな山道を下っていったが、やがて登山道を思わせる急な坂道を下り始めた、既に嫌な予感はしていた、風呂から上がってこの坂道を帰りは登っていかなければならないのか。今日のこの天気を考えたら、間違い無く駐車場に戻ってきた頃には汗だくになっているに違いない。森の向こう側から大きな滝の流れ落ちる音と、沢山の人の歓声が聞こえてきた。坂道を下りきると道は終わり、目の前に落差20メートルはあろうかと言う大きな滝が現れた。川原毛温泉の湯の滝である。滝壷にはざっと20人位の人がいるだろうか、しかしここは露天風呂の筈なのだが、全員が水着を着ている。誰も風呂に入るような恰好はしていない。しかも、流れの緩い所では家族連れが腰から下を湯の流れに浸からせて、昼飯なんぞを食べている。どう見ても風呂場で見るような光景ではない。でも、自分はこれまでの北海道での露天風呂で晒し者になるような所を幾つも、フル●ンで入ってきているので、全然臆する気持ちは起きなかった。メンバーの中のS氏(CB1300)も、水着ははなっから持ってきておらず自分と同様フル●ンで入るつもりだったので、この光景を見ても平然としている。しかし、姐さん始め他のメンバーはちょっと引いている様だ。「やっぱり、水着持ってくりゃ良かったかな~」なんて言いはじめる人も出てきた。
しかし、こう言うときは誰かが進み出て行動に移さなければいつまでたっても風呂に入れなくなる。姐さんは女性と言う事で洒落になんないから、最悪の場合を想定してか水着をちゃんと持って来ていた。確かに、場違い(本当は水着姿が場違いだと自分は思うのだが)な恰好で風呂に入る時野郎は笑われるか、羨ましがられるかのどっちかだが、女性、ましてや姐さんぐらいの若い女性ともなると、不届きな輩から好奇の視線を浴びせられる可能性もある。時刻は昼になろうとしている時だし、脱衣所以外はは身を隠すような所が全く無いので致し方の無い所か。
自分とS氏は小さなタオルでズンズンと、周りの水着軍団を押しのけ風呂に真っ先に飛び込んだ。他の男性陣も、この二人も勇気ある行動に決心が固まったのか同じ恰好でやってきてくれた。(やっぱり、単車乗りは他の人種と違って行動力があっていいなぁ)姐さんは「本当は水着つけないで入りたかったんだけどさぁ・・・」
と残念そうに言いながら水着着用で滝壷にざぶん。さて、これで全員が無事に湯に浸かる事が出来た。これでもう余計な事を考える費用は無くなった訳だ。滝の飛沫が目に染みる、この温泉もカムイワッカと同じ酸性泉のようだ。湯舟の底は柔らかい砂地になっていて深さは、座り込んだ状態で胸の辺り。カムイワッカのようにおぼれるような事は無い。湯加減もこの季節なら丁度よく、長湯が出来る。落ち着いた所で、周りを見渡すと自分たちが浸かっている所から上、更に一箇所小さな湯船が有るのを発見。
真っ先に自分は其処へよじ登ろうとしたが、小さなタオル1枚での姿では余にも見苦しいので止めてくれとの苦情が滝壷のメンバーから飛んできたので仕方なく断念した。それに、その時には別の一組のカップルが湯舟に入っていてその立ち振る舞いからしてどうやら両方とも水着を着けていないらしい。最初はたかが一組のカップルにそんなおいしい所を独占されてたまるかと思って侵入を試みたが、下の滝壷からは上手く登っていけるような足がかりが見当たらない。無理して登れば足を滑らせて転落、打ち所が悪かったら人様にはお見せできないような状態のまま、単価で運ばれる可能性もあるにはある。本当に上の湯舟に入りたければ一端上がって、何処からかの道から登っていかなければならないようだ、ううむ残念。しかし、下の大きな滝壷でも楽しく気分が良い事には変わり無く、暫くの間は皆で写真を撮ったり、滝壷の中を泳いだりしてまるで子供のようにはしゃいで過ごした。その内に気がついたのだが、ふと周りを見渡すと自分達以外にも水着を着けないで風呂に入ってくる人が増えてきたのだ。どうやら我々の勇気ある行動が、彼らの気持ちに変化を与えたようだ。やはり、自分達のやったことは間違いではなかったのだ。
だが、そんな楽しい時間もこれまで。もう時は昼を過ぎており、みな口々に腹が減ったと言い出したのであがる事にした。嫌な帰り道が、自分たちを待っていた。あの急坂を登らなければならない。
しかし、登らなければバイクに辿り着けない。
坂道を登り始めて数分と経たない内に、全身から汗が噴出した。それもそうだ、只でさえぬるめのお湯に浸かっていたのだ、体は芯まで温まっている。折角温泉でサッパリしたのに、来ているTシャツはもうぐっしょりだ。最悪の気分。おまけに猛烈にしんどい。無理して歩くと吐き気が襲ってきそうな気がした。風呂に入って、こんな思いをするのはちょっとない。かのカムイワッカでは、行きは沢登り。帰りは下りなので湯冷ましには丁度いい。しかし川原毛の湯の滝は落差が余にも大きいので、上から降りることは無理である。ここは、もう少し涼しくなった頃に訪れるのが正解のようだ。
山に入る前に水を買っておけば良かった・・・・・そう思ったのは駐車場にヘロヘロになって辿り着いた時だった。駐車場には公衆便所があったので、自動販売機は無くても手洗い場が必ずあるものだ。しかし、その便所の壁には「この水は飲めません」とデカデカと張り紙が貼り付けてあった。取り敢えず、バイクに乗って下に降りるしかないようだ。荷物を纏めながら、昼飯の場所を決める。即決だった。そう、ここら辺に来たら行くしかないでしょ稲庭うどん。(お、いいゴロだ)
場所が決まってから動き出すまでのまた早い事早い事、みなさん相当にお腹が減ってたんですね。川原毛温泉から山を降りる超タイトな山道を駆け下りる。ここで、何故か自分が先頭に立たされてしまったので、試しにちょっとペースを上げて駆け下りてみた。自分の直ぐ後ろにS氏のCBが付いてきたからだ。「ほほう、最新型のバイクで来たからには、ちょっとマジになるかな」しかし、こちらはフル積載、四半世紀前のバイク。話には最初からならない事は分かっていた。しかし、だからと言って「先に行ってください」と合図はする気にはなれなかった。ましてや、相手がCB(ここがキモね)ともなれば余計に燃えてくる。何を考えてるんだか。空荷でライダーはベテラン、排気量は1300。分が悪いのは承知の上だ。だから、効きの悪いブレーキをピストンが飛び出さんばかりに握り締めながらコーナーに飛び込み、ハングオフで対向車が来ない事を確かめ、直ぐにバイクを直立させて1秒でもはやくアクセルを開けるようにする。コーナリングスピードは徐々に上がって行く。アホである。
それでも、当然だがCBのS氏は相当の余裕でくっ付いてくる。くっそ~いつかは空荷で、もっと長いワインディングで勝負したる!懲りない奴だ。道は、やがてT字路になり、山道はお終い。2台は同時に道端に停まり、後続が来るのを待った。かなりの時間を置いて、姐さんを先頭に残り3台がやってきた。やはり、このタイトな道は9Rの有り余るパワーでは持て余しているだろう。
見渡す限り青々とした田んぼの中を突っ切る農道を、先頭になってぶっ飛ばす相方Z1、その後に影の様に付いて来る、S氏の2台。途中で工事中の場所に差し掛かり、路面はダートに急変。しかし、こう言う所では自分はかえってアクセルを開ける。リヤがもうもうと砂煙を上げて空回りする、「ひゃー!!!」カムイワッカで、痛恨の転倒をしたというのに全く学習しない奴だ、俺は。後ろの人、煙幕浴びせてすんませんでした。元オフ車乗りでもある自分にとって、ダートを見るとどうしても血が騒いじゃって・・・・
稲庭うどんの総本山。
陽助稲庭干し饂飩本舗前に到着。店舗前には20人ほどの待ち客の姿が。待ち時間は30分位らしい、でも皆で相談した結果待つことにした。外に用意された椅子に腰掛けて、待つことやっぱり30分。名前を呼ばれ店内に、席は全て埋まっている。その後もドンドンとお客が車やバイクに乗ってやってくる。ここにくるまで自分は知らなかったが、相当にこのお店は有名らしい。確かに、店の壁にはTV取材の記念写真が幾つも並べられている、いかがわしい「お前誰やねん!」という様なサイン色紙とは違ってこう言うのは説得力がある。注文して待つ事20分少々、頼まれた物がでてきた。ここで、何時もの自分だったら箸をつける前にデジカメに撮っておいて、それから頂くのだが、猛烈に腹が減っていたのでそれをすっかり忘れて食べだしてしまい、気が付いた時には何を食べているのか分からない状態になっていた。やはり空腹に勝る物はないのか?稲庭饂飩の総合的な感想。
自分は生まれも育ちも関東なので、饂飩と蕎麦どっちを取る?と尋ねられれば蕎麦と即答し、旨い蕎麦の為には県境を幾つも乗り越え食べに行くという自称筋金入りの蕎麦党である。でも、西日本に赴く時は素直にトラディッショナルヌードルは饂飩と決めている。しかし、稲庭は東北東日本。南の山形県は東北でも屈指の蕎麦の名産地。そこに、饂飩というからには相当に評判が高くなければ、東日本の味蕎麦勢力に駆逐されてしまう筈。しかし、あの客の入り。見た目は饂飩ではない。細いのだ。まるでそば粉をケチったインチキ蕎麦のようだ。しかし、食べて見ればやっぱり饂飩。これがまた、格別に旨い!
すきっ腹に冷たいなめこ下ろし饂飩が胡麻ミソタレと一緒にドッカンと落ちてゆく。あっと言う間に、自分の分は完食。おまけに姐さんが少し残してくれて、それはポン酢で頂いた。これも旨い!!!見た目の量は少ないが、それは麺が細いからで実際に食べて見るとかなり食べ出がある際立ったキャラクターと独自性にすっかり自分はこの饂飩のファンになってしまった。これなら、自分の友人で饂飩好きが居るので自信を持って進めることが出来る。ただ、住まいが埼玉なのが玉に傷ね。
さて、皆さんのお腹が落ち着いた所で移動開始。ここで、東京から走ってやって来るメンバーから姐さんの携帯に現状報告が入ってきた。菅生PAに居ると言う。随分と近づいてきたようだ。姐さんの提案で、東北道の紫波SAで合流しましょうと伝言を入れてもらっておいた。これで、上の道でメンバーが全員揃えばバッチリではないか。しかも、自分が前々から是非お目通りしたかったZ-MLの新メンバー「あみ」ちゃんとも逢える。相手は20代入ったばかりのピッチピチの現役女子大生(うお、なんちゅうおっさん表現だ!そんな自分がいやんなる・・)とくれば、少々溜まってきた疲れも一気にぶっ飛ぶ筈。(姐さん許して!)
此処から先は、皆さんの意見を交換した結果、フリー走行で紫波SAに集結する事に決定。さらに交通量の多くなってきた国道を走り繋いで、自分は湯田まではそこそこ楽しそうな道があるので下道で行く事にした。リンゴさんは、手持ちのお金に不安があるとの事なので沿道にあるATMに寄ってお金を下ろしてくると言って、走っていった。CBのS氏はガソリンを入れてから高速に乗りたいとの事で先に国道をカットンデ行った。残りのメンバー自分と姐さんとつもちゃんの3人で湯田までを走ることとなった。うむ、大曲市と反対方向だから車も少ない。日も傾いて涼しくなってきた。快適だ。しかし、連続したコーナーが終わると直線を姐さん9Rがぶっ飛ばすぶっ飛ばす。怖いなぁもう。ここは一般道っす、本州の。北海道じゃないんだから。湯田から高速に乗り、自分は一番最後を走る。姐さんは途中のSAでガス補充をする為一端、離れる。その後はそれぞれ単独走行、つもちゃんは姐さんにお付き合いしていったのだろうか、姿が見えない。東北道に合流し、北上開始。法定速度+αで淡々と走る。加速すると、チラホラと油圧警告灯が瞬きする。そろそろオイルをたさなければならんようだ。この調子では千葉までは間違いなくオイルが枯渇してえらい事になる。
暫く抑えたペースで走ること数10分。夕暮れを迎え薄暗くなってきた紫波SAに到着。既にS氏が到着していてタバコをふかしている。直線番長の姐さんも流石に此処までは追いつけなかったようだ。しかし、程なくして2人がほぼ同時に到着。その後東京からの遠征隊を待っていたが、伝言で伝えた約束の時間が近づいてきても彼らの姿は見えない。その内に植え込みの向こうに本線を3台のビッグバイクと1台の甲高い音を立てて走りすぎていく姿が見えた。どうやら、連絡は伝わっていなかったようだ。しかし、あの組み合わせは間違いなく遠征隊のバイクだ。ということで、我々も後を追うようにして出発。
しかし・・・・小さな荷物しか積んでいないバイクの人たちは見る見るうちに小さくなっていく、でも下りるICはもう決まっているし、はなからあのペースでは追いつく訳はないので、またも淡々と走る。後ろを走っているリンゴさんも、抜かすようなそぶりは見せずついてくる。この人、相当自分の走りに哲学を持っているのかも知れない、そう思った。
夕闇の中、盛岡南IC。
今度はリンゴさんを先頭に医局長宅に向けて出発。数分走って間もなく、旧国道沿いの医局長宅に到着。沿道には医局長の旧友A氏が待ち構えていた。この人とは春の仙台オフ会でお会いしている人、久方ぶりの再会である。A氏も他の人に同じ、相方に山と詰まれた荷物を見てゲラゲラ笑っていた、まぁ笑うだろうな。あれは。
その後荷物をばらしている間に、遠征隊が到着。
山口Zミーティング、留寿都のZミーティング、そして今回のKCBMと、今年だけで3回もミーティングで合流した東京の鉄骨D1氏、神奈川の在住の赤玉Z1乗りのぶちさん、そして過激な2本だしマフラーが印象的なFZ400のあみちゃんが無事に盛岡に到着し、これでバイクで集まるメンツは全て揃った事になる。
宴会会場は医局長宅からタクシーに乗って15分ほどの所にある居酒屋だった。奥には待ちくたびれた様子の医局長が一人で座っていた。用意された座敷に上がり、座布団座り込む。医局長の希望で、あみちゃんがお隣りに。なかば抜け駆け的な勢いで、自分がその隣りに座った。
ぽちゃっとしてて、一見バイクなんかに乗っているような女の子には見えないのだが、これでも東京から600キロ掛けて走って来たのだから、それも免許取り立てで、バイクに乗り出したのはつい2週間前だという、まさに出来たてのワカバマークなのだ、恐れ入る。ここまでエスコートしてきたお二人も相当に気づかれしたことだろう、頭が下がる思いだ。
全員が揃った所で乾杯。さて、その後は皆さんドリンク類は呑み放題との事でかなりのハイペースで飛ばしていたのでいやな予感はしていた。その予感はまたも見事に的中。狂乱モードに突入だ。まず、口火を切ったのはCBS氏だ。オヤジギャグ連発、滑ろうと引こうなんだろうと構わず飛ばす。自分でギャグを言って、自分で笑っている。重症だ。次に、医局長。初対面の女の子が居ると言うのに、医者と言う立場を利用して医学用語を連発。その医学用語、昼間の路上で大声で言ってみなさいっての。挙句の果てに、トイレに行く途中で他の会場に乱入しようとしたり、使っていない隣りの部屋に入り込んで暴れまわっているし、手がつけられない状態。
つぎに、かなりお疲れだった筈の姐さん。同性なのをいい事にすっかりあみちゃんと打ち解けてしまい、「あみ助~~~!!!」「お姉さま~~~!!!」と二人してムギュ―ッと抱き合っているし、医局長はその様子を見て「おらも入れれ~~~!」と乱入する始末。まさに酒池肉林だ。一方、リンゴさんを中心としたメンバー数人は真面目な顔をしてバイクについて語り合っている。
俺は、どっちに居たら良いのだろうか・・・・・
怒涛の1次会お開き。
店の外に出て、タクシーが拾える場所まで歩いて移動する。その間なぜか、ヘロヘロになったあみちゃんが、擦り寄ってきて「TNTさ~ん、これ着てくださぁい♡」とチーム前夜祭のTシャツを俺に渡そうとする。「いや、それはあみちゃんが着る着るって事になってるんでしょ」といったら、
「え~じゃぁあ、これ着てくださいっ♡」と差し出されたのは、この子がさっきまで来ていた薄手のカーディガン(?)だ。しかし、なんでおいらがあんたの服着なきゃいけないの?と思いながらも、袖に腕を通す。これがまたきついきつい。両方の腕が出ても、脇まで通らない。腕が下がらないのでヤッコ凧みたいな体制になっている。それを見て姐さんが爆笑している。
いいさらしもんだ。あたしゃバイク乗りの芸人だ、受けて頂けるなら、本望だっての。
医局長宅に戻ってきた。夕方医局長からの伝言によると、自宅には奥さんと子供が居る筈なのだが、今夜は追い出した筈だった。しかし、家に上がってリビングに荷物を置いて一息入れようとした瞬間、隣りのアコーディオンカーテンがシャッと開いて、奥さんが出てきたではないか!「すみません、灯かり落として良いですね?」と言って、部屋の電気を消してしまったのだ。・・・・・・おいおい、全然話が違うじゃないの。
それまで上機嫌だった全員が、水を引いた様に静かになり、そそくさと一端外に出る。2次会は表の駐車場が会場となった。火を入れ、用意してきた薪が燃え始めた。その間、またまた乾杯をし呑みの始まり、バイクの話や、オネイチャンの話、地元の走りどころの話やら、様々なお話がアチコチで展開する。自分は、用意してきたキャンプ用の椅子を持ってきて、据わろうと思ったら、「あ、あたしと言う者がいながら、お前は椅子に座るのか?あたしは川原毛で尻餅ついてお尻が痛いんだよね~~~」と聞こえるように遠くを見て呟き始めたので、即座に席を譲った。ヘベレケあみちゃんは、その間シャワーを浴びて、寝かせるつもりらしい。しかし、相当に酔っている感じだったので、機転の効くリンゴさんが姐さんに「あなた、同性なんだから、ちょっとあみちゃんの様子見てきてよ、浴室でぶっ倒れてたら大変だから」と頼んだ。
しかし、当の本人もかなりベロベロになっている。「ん!あいよ!わ~ッたよ~」と立ち上がって、家の中に入ろうとするが、なぜか門柱の前で回れ右をして戻ってきてしまう。
「何やってんの、入り口はこっち、大丈夫なの?」と姐さんを皆で支えると、「んあ!、ダイジョブだってばさ、行って来るべさ」といって、門柱の前でまた2~3回クルクルと廻った後、家の中に消えていった。「ミイラ取りが、ミイラにならなきゃいいんですけどね・・・・・」と思わず呟いてしまった。
暫くして、姐さんが素の顔でもどって来た。「どうだった?」「ん!もう部屋で寝てた」一安心である。
そして、さらに2次会は続いた。薪が其処をつくと、医局長は何を考えたのか駐車場の暗闇に消えて、なにかゴソゴソやっている。バキッツ!ベリベリッ!!!ガシャン!!
ナンダナンダ!この夜更けに物凄い音がしたぞ。すると、医局長が長く白い塗装された材木を抱えて出てきた。「そ、それは・・・」「これね、大丈夫ね。取り壊す建物の柱だから、これで燃やせば取り壊しが少しでも安くなるかな~なんて思ってさ」その現場を見てみると、患者用の自転車置き場の屋根が無残にも崩れかけている。豪快な人だ。これで、最後の一本を取り去った途端に、廃屋となっている病院の建物が前部崩れたら面白いだろうなぁ。(アメリカンギャグ?)
時間も時間とあって、2次会も終了。明日の出発時刻は?と医局長に聞くと「朝の7時には出発するから」
「へ?今何時です?」
「3時」あいたたたた・・・・ま~た寝不足だ。明日起きられるのか?こんな調子で。
医局長宅の2階に抜き足差し足で、登るとすでに寝室に布団が用意されていた。その数男性陣だけでも、8人分はゆうにある、布団敷くだけでも大変だったろうに、まったくご苦労様です。適当に自分の場所を決めて、布団に横になる。遠征隊のぶちさんと鉄骨さんは直ぐに鼾をかき始めた。つもちゃんも、しんどかったのかもう寝息を立て始めている。リンゴさんはお酒が飲めないので、いたって普通の状態。問題はS氏と医局長だった。この二人元気元気。このまま寝ないで朝を迎えるつもりらしい。医局長にたっては、学生時代のアルバムうぃ引っ張り出してきて、みんなに見せて廻っている。S氏は、夕方高速の待ち合わせ場所で飲んだという眠くならない栄養ドリンクを2本もいっぺんに呑んでしまったらしく、目はランランとしている。自分は、かなりやばい状態ではあった。気分は悪くないが、ねた場所が悪い。医局長とS氏の直ぐ傍だからだ。
そのうち、さっきまで爆睡していたらしいあみちゃんがふら~っと、やってきた。どうやら、復活したらしい。随分と元気になったようだ。しかし、まだ完全に酔いが醒めている訳ではなく、なんだか挙動がおかしい。ベタッと布団の上に座り込んで、オッサンドモとお話し相手をしてくれるのはいいのだが。話が途切れると相変わらず、人の顔をジイ~~~ッと見つめるし、喋り方はメールの文面そのままだし、肌の露出が多い服着たままで、ゴロゴロ横になったり、四つん這いになったりするもんだから、まわりの野郎ドモは気が気でならない。この子はこういう環境に慣れているのかどうだか知らないが、良識ある(?)大人が回りに居るからいいようなものの、そうでなかったら、チョット危ない。一つ一つのポーズ(本人はぜんぜん意識してなかったらしいが)がえらく悩殺的なのだ。自分は、「これはこれ以上見たらあかん」と思って、向こうを向いて寝てしまった。
それをみたリンゴさんも機転を利かせて、「あみちゃん、ハイ!退場」といって向こうの部屋に連れて行ってくれた。ふ~~・・・・女ッ気ない生活が長いもんだから、こう言うのは刺激が強すぎる。まったく、あの子には初日から振り回されっぱなしだ。でも、本人は意識がないんだろうなぁ・・・・もしかしたら、あの子は100%天然なのかもしれない。いや、そうだ。そうに決まっている。目を閉じて少しでも寝られる様に努力する。枕もとでは医局長とSうじが地獄の其処から聞こえてくるような子守り歌を歌っている。
寝られるか!そんなので。
その内・・・・・チュンチュン・・・・カーカーあ~あ、夜が明けちゃった。明日は辛いな。行けるのかな?田沢湖まで。