〇八月一五日

午前五時 晴れ 天売島→稚内市

ここ最近の天候不順で海上は湿度が高いのだろうか、昨日はガスが濃くて待望の日没は臨めなかった。
 しかし、島の東側にあるこの公園からの日の出は感動的であった。夜通し吹いていた風はすっかり止み、水平線はくっきりとその姿を現し、その上から真紅の太陽が昇ってきた。
 「なんだ・・・寒い思いをして日没を待つよりは、テントから顔を出すだけでご来光が拝めたのか」
 春の日差しを思わせる朝日のな加で撤収を始めたらウミネコの親子がやって来た。体格は殆ど同じだが鳶色をしているの雛鳥はやっぱり好奇心旺盛なのだろう、東家の屋根の上の親鳥が盛んに窟めているにも係わらず、雛鳥はある一定の距離を保ちつつウロウロと自分の周りを歩き回っている、時々体躯に似合わない声でピイピイと囀るのがかわいい。
 自分はなるべく彼等を脅かさないように静かにエンジンを暖機をし走って五分の港町へと走り出した。フェリー乗り場について乗船の申し込みをすると、受け付けの人が自分の顔を見ただけて「あぁ、オートバイのTavitoさん来たよ!」と奥に居た作業員に知らせていたのには少々驚いた。ま、この小さな島に大型バイクで乗り込んで来る事自体、道内の人には珍しいことに違いない。
 島じゅうに散らばっていた観光客たちが再び集結し、船になだれ込んでくる。今では珍しくなってしまった紙テープが風に扉いている。「ポーーーーッ」という汽笛を鳴らしてフェリーおろろんは天売島の岸壁を離れた。



 定刻どおり羽幌に到着。すぐ北上を再開、これで去年の借りを一つ返すことができた。
 羽幌から北の国道ではライダーとチャリダーの姿を良く見かける。ここは稚内・礼文・利尻を目指す旅入たちの銀座通りなのだ。天塩を過ぎて国道から道々に入る。サロベツ原野までもう少しだ。法定速度十α程度でゆっくり走っているのに信号が無いのと交通の流れがよいので思いの外先に道む。四国山中とは道路のまっすぐ具合が道うだけなのに偉い違いだ。
 やがて山頂は厚い雲に覆われているものの、あきらかにそれと分かる「利尻山」が見えてきた。こちらの天気は相変わらず晴れ、正午すぎに図ったかのようにサロベツに到着したが、脹前に広がる光景は拍子抜けするものだった。
 そう、今の北海道は花の季節は終わり、緑の小高い山に囲まれた緑の草原のみが辺り一面を支配しているだけ、だだっ広い緑一色の殺風景な草原かおるだけだった。自分としては地平線の彼方まで草原が広がっているものだと思っていたのだが、これも期待のしすぎだったか・・・・・


 だが、初めて北海道に訪れた人はその広さに感動するのかもしれない。しかし、此処とは比べものにならないような、一種の恐怖感さえも抱かせるような光景を目の当たりにしてきた自分にとっては、いい意味でも悪い意味でも目が肥えてきてしまったのだろうか?
 ここで軽い昼飯とする。

 高い木の生えない、低い草に覆われただけの山々が続く北国らしい風景を見ながら抜海を抜け稚内市内に入った。


 日本のなかて最も北に位置する都市、稚内。その外れにあるフェリーターミナルにはライダーやチャリダーが沢山居た。


 今夜の野宮地は翌日のフェリーと今夜の夕食の事などの利便性を考えて、お約束の防波堤ドームに決定した。そのドームては、夏休みのお盆の間だけ色々な出店が立てられ、土産物を品定めしたりジンギスカンを食べる人で大いに賑わっている。しかし、ドームの先端近くは駐車場が入りロとなっており港湾関係者以外は立入禁止なのでガランとしている。
駐車場で番をしている兄ちゃんにナシをつけOKを貰い、相方ごとドームの先端へ乗り入れテントを設営する。
 身軽な恰好になり、市内にて食料買い出しを済ませ、野寒布岬を挟んで反対側の稚内温泉にて夏だというのに冷え切った体を温めた。(北海道のいいところは何度も口にしているが、キャンプ地に困らないという事と有料の温泉施設はどれも料金設定が良心的だという事だ)
 昨日の昼飯ですっかりいい気になった自分の今夜のディナーは自炊せずに市内で済ませる事にした。だとしたらまたまたウニ丼しがないでしょう!
大盛り弐千五百円也、ああお金が北風に吹かれて飛んでゆく!!!!!
腹も落ちついて満足満足、日も暮れてドームに戻ると地元出身だろうか、無名の演歌歌手が歌謡ショーをやっていた。しかし、それも終わってしまうと辺りは船の発電機の音以外なにもしなくなった。周りの迷惑もかえりみず騒ぐキャンパーもいない、夜の道路をイカレたように走り回るローリング族もいない静そのものだ。場所が場所だけに騒々しい所か?と考えていたが見事に裏切ってくれたこの来た防波堤ドームキャンプ場(?)を自分はいたく気に入ってしまった。


 さて・・・ビールの酔いも回ってきたことだし、明日は早起きしなければならないのでさっさと寝ることにする。

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