○八月十六日

何も無かった今年の北海道、しかし友人は増えた

曇りのち晴れ 午前八時

1996年のツーレポで『来年は静かなで順調でそれでいて、いい出会いがある旅であってほしい』と後書きで結んだ記憶があった。
 今年は去年とは対照的に、余りにも何もなく、あまりにも平凡で、余りにもつまらない、もしも連れ合いが居たら起こって途中で帰ってしまうであろうI週開だった。殆ど人と話すこともなく、新しい出会いもなく室蘭フェリー埠頭にやって来た。

 乗船手続きを済ませベンチでボーッとしていたら、一人の青年が声を掛けてきた。彼は秋田からフェリーに乗って三日間の北海道ツーリングをして、今日の船で帰るのだそうだ。年は自分より三~四歳年下だろうか、でも社会人だという。今回が初めてのロングツーリングでそれが北海道なのだそうだ。道中の天気は悪かったがとても楽しかったという。自分のようにたった三回目なのに知ったふうな顔で[つまんね」とか「退屈だ」と文句ばかり言っているのとは違う。心から楽しかったようだ。
 彼はライダーハウスをメインに宿をとったらしい。でも自分はかねてからライダーハウス絡みの悪い噂を耳にしているので、彼にはこれから旅慣れたらキャンプにしたほうがよい、とアドバイスしておいた。ライダーハウスについての私的意見は以前にも述べたと思うので、ここではやめにしておく。
 トイレから戻って来ると彼の横にもう一人、ライダーが座っていた。田中邦衛を若くして眼鏡をかけた感じの中年男性で、名前を谷さんと言う。この後大洗までの航行中自分と谷さんはフェリーのロビーのソファーに座って、六時間近くお喋りする事になったのだ。帰りのフェリーの座席は、アイサービスのトンマがろくな働きをしなかったので雑魚寝部屋となっていたが、長きに渡る旅の最後はゆっくりとベッドの中で休みたかったので、船内ての受け付けにてキャンセル待ちの申し込みをする。


 谷さんは雑魚寝部屋に居すわるつもりらしい。他の客が雑魚寝部屋を嫌って二等寝台へと移っていけば、残った自分のスペースはどんどん広くなるからである。自分は追加の料って無事に二等寝台をゲット。でもよくよく考えたらアイサービスに払った金は一等料金にも値するものだったのに、またもここで出費である。
 谷さんの話を聞くと、上陸は小樽でその後ニセコ近辺で大雨に降られたものの、その後は雨から逃れるように一気に北上、稚内や礼文・利尻島に滞在していたが天気は申し分無かったという。
 座談会はその後人数を増やし、谷さん以外からも色々話を聞いたが、道北へ行ったのは彼以外には誰もいなかったという。皆さん大雨と低温に崇られた散々な日々だった、とこぼしていた。やはりあのサロマ湖で見た遥か彼方の青空は本物だったのだ・・・
 船はあと数時間で大洗に接岸するらしい。今年はこれで終わり、来年に斯待するしかない。