さらば石鎚山、そして時代は流れていた 5.18

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夕べはおかしな夢は見なかった。熟睡できたようだ。目覚ましがなったが、30分ほど寝坊して起床。やはり、朝は寒い。周りは薄明るくなり、野鳥達のさえずりタイムはピークを迎えていた。
寒いのを我慢して夕べ暗くなってからセットしたPCを大急ぎで取りに行く。自動販売機の裏に回り配線を元に戻し、バッテリーをチェックする、満充電バッチシだ。8時半にキャンプ場を出る、一昨日の夜キャンプ場に居合わせたDRライダーと話をしたと時、そこで驚くべき情報を入手した。

あの、地獄の思いをかました「瓶が森スーパー林道」が全舗装されているというのだ。あの、全長10キロを越えるガレガレダートが全舗装!?にわかには信じられない話だった、でも今考えてみるとここのキャンプ場に付いた時にやけにオンードバイクがスーパー林道方面から走ってくるもんだなとは思った、しかしその時は途中でダートになっているから引き換えしてきたのだろうとばかり思っていた。あの林道がこの4~5年で全舗装なんてそんなバカな・・・だってこの道はつい数年前までは一般車両は通行禁止で登山者と林業関係者の為の道路だった筈。それが一般公開された間もない年に自分はそこに行って大変な思いをしたのである。

走り出しながらも、疑念は払えなかった。しかし、その疑念は走り出して間もなくかき消された。本当に見事に舗装されている。所々工事中で舗装されていない所は昔のままの姿が残っていたが、それ以外は真新しいアスファルトでキッチリと整備されていた。
なんという、変わり様だろうか・・・日本の中でも屈指の道路状況の悪さで名をはせる四国の道が、しかも国道でもないスーパー林道が県道にまでランクアップされている。呆気に取られていた。そして、依然来た時は左右を見ても上下を見ても真っ白だった風景は、霧一つ無い絶景となっている。尾根筋を通るこの道は下から展望が利く事は知っていた。しかし、あの時は見る事も見ようとする余裕さえ全く無かった。死に物狂いだったのだ。だが、今日は全く全く反対である。快適な山岳道路、1車線ではあるがカーブミラーもある。ガードレールもある。待避所まで舗装だ。そして眼下に広がる大風景。そうだな・・・例えて言うならば道路の狭さを除けば長野のビーナスラインと双璧の物凄い眺めである。遠くまで見える。何度も相方を停めて写真を取る。もう、ここも走り納めだからだ。石鎚山が終われば西四国に居る事は無くなる。即ち、この山岳道路ももう訪れることは無いからだ。
R194に入る。ここも3桁国道らしくタイトな1車線道路。その難所の桑瀬峠を下りる。たしかかつてここを登ってきた時は、折からの悪天候に加えて雷が鳴りまくっていたのを思い出した。標高が高いので自分の直ぐ横で稲妻が走り、雷鳴が体全体を振動させ恐怖に陥った、ここも嫌な場所であった。しかし、快晴。道路はオールドライ。なんのストレスも無い。走り納めにしては出来すぎる演出だ。やがて県道17号線に入り、カットブ。集落内以外はぬわわ㎞/hのスピードを出して走る。ここは屋久島や種子島ではない。集落が終われば全くの山道。ネズミ捕りなんか絶対にやらない場所だと言う事は分かっている、そしてこの後にR439を走る事を考えると自然に急ぎ足になってしまうのだ。土佐町に入り、渇水騒ぎで有名になった早明浦ダムを通る、ダムは満々と水を湛えていた。立寄る価値なし。そのまま6速全開で通過。R439に合流。とうとうまたこのライダー泣かせの国道に入ったのだ。しかし、R33に合流し、再び分岐するまでの区間は立派な幹線道路、ヨサクらしさはここでは無い。これは昔も今も同じ。本山町で溜まりに溜まったごみを処分。直ぐ近くのスーパーで買出し。さらに東へ。R33と合流。大型トラックと走る。なんだか久しぶりの光景だ。3日間しか山ごもりはしなかったが、やはりこの交通量の多さにはちょっとの間あわせる事が出来なかった。知らないうちに高知県に入っていた。そして大豊町からヨサクは分岐。勿論我々はそちらに向かう。標識が見えた。R439間違いない。そして「京柱峠まで18キロ」の文字。そういえば、以前にこの峠を通った時はまさに通行止め一歩手前の天候だった。写真も残っているが、相方と峠を示す標識以外には全て真っ白。強風が吹き荒れ気温も下がり、正に5分と居られなかった。眺望が四国でも随一というこの峠の眺めも今回は期待できそうだ。実は、四国に置き忘れていった2つの荷物のおまけとしてこの峠もあった。バイク雑誌等で見たあの、見渡す限りの四国の山々、天下を取ったかのような気分になれるこの峠からの眺めを自分の目で見るのも今回の四国山中行の一つの目標だったのだ。
「瓶が森林道」は豹変していた。しかし、京柱峠に至るヨサクの表情は全く昔のままだった。でも、ちっとも辛くない。むしろ、ニヤニヤ笑いながら「こえ~っ!!!」とか「おととと!!!」とかヘルメットの中で叫びながら、ヘビのように延々と続く超タイトコーナーを次々とクリヤーしていった。楽しくて仕方なかった、はっきり行って第3者から見たら異常そのものだった。
そして、もう着いたの?ってな感じで峠に到着。見慣れた風景が見えてきた。しかし!時代の流れはこんな辺境の山奥にも来ていた。なんと、峠に御茶屋が出来ているのである!丁度、腹が減り始めていて「しまった、早めでもいいから、下の町で昼飯喰っときゃよかった」と考えていた時だった。まさに、ジャストのタイミング。真新しい店に入ると、ひとの良さそうなおっチャンが店番をしていた。壁のお品書きをみて「猪うどん」を注文。「このお店は何時出来たんですか?」と聞くと、「今年で5年になります」・・・・・そうか、自分が死ぬ思いをして通り過ぎた後直ぐに、このお茶屋が出来たのか・・・・・感慨に耽る。ドンブリのおつゆを全部空け、胸に手をやる・・・タバコを買うのを忘れここまで来てしまったことに、今気が付いた。おっチャンに「タバコなんて置いてないっすよね~」と探りを入れると、なんとあると言う。しかし、それは売り物ではなくお客が忘れていった物だという。それならばと有り難く頂戴し、お愛想をして外に出る。「京柱峠」の標識の脇の岩で出来たベンチに座り、深く一服。「んんん・・・上手いっっっっ!!!!!」
あの時見えなかった四国の山がはるか遠くまで見える。素晴らしいの一言だ。空はうす曇ではあるがガスは出ていない。暑くも無く寒くも無い、本当にまた来て良かった。おまけの忘れ物も戻って来た。勿論、ここに来るのも今回が最後だ。見納めだ。
峠を下り一路キャンプ場へ。いくつもの集落を過ぎ、車の列の後ろに並んだ。時間制限通行止めに
ぶちあたったらしい。まぁいい、今日も午前中サクサクと動いたので時間には充分余裕がある。相方のエンジンを切って、タバコを一服する。すると、交通整理の制服を着た若いお兄ちゃんが、自分の姿をみて歩み寄ってきた。
「こんちわ、凄い荷物ですね」
このセリフ今回何度耳にしたことだろうか。相方を挟んで、しばしバイク談義に花が咲いた。「そういえば、これ時間制限で通しているけど、何分くらい待たされるの?」
と聞いたら
「45分です」
と彼はさらりと言った。
「えっ!そうなの?で今度解除されるのは何時?」
と聞くと
「2時です」
と彼。相方のミラーにぶら下げてある時計を見る「1時45分」
さて、思い出してくれただろうか?そう、九州を南下していたR265を走って、今のような通行制限にぶつかった時、待ち時間はたったの5分だったという、あの事だ。本当に今回は全てに置いてツイていることが多い。日頃の行いは自分ではそんなに良いとは思っていないのだが・・・・。お兄ちゃんとバイク談義をしていたら、彼の無線に連絡が入った。
「じゃぁ、もう通れますんで!」
そう言って、彼は持ち場に戻った。通り過ぎざまに彼に手をあげ工事現場を通過、その時現場の傍らに立っていた標識に目をやった。その内容によるとなんと車が通過できる時間はたったの15分。その後はまた45分待たされるという。何と何と、自分達は1日のうちに数回しか通れないこの場所をたった15分間待っただけで通ることが出来たのだ。こ、怖すぎ・・・・この事の運び・・・・。
充実過ぎる、順調すぎる移動は午後3時まえには無事に終了した。いま、夜の帳が下りたキャンプ場にいる。ここでも自分の強運は尽きていなかった。まだ、昼間の明るい時間にここのキャンプ場に到着した。受付を済ませ、さっそく幕営地点を物色する。大きな炊事場が何箇所もある、大きなキャンプ場である。そして、炊事場にコンセントがあるのも目ざとく見つけた。さっそく電気チェック。しかし、電気が来ていない。
やはりこんなときは(お客自分一人)電気を元から切ってしまうのだろう、自然な事である。管理人に悟られないようにキャンプ場の中をウロウロと歩き回る。そして、管理棟の裏手に廻った時、地下水を汲み上げるポンプの音が耳に入ってきた。周りに様子を確かめてポンプの傍による、100V電源だ、これは使える。しかし、併設する宿の厨房の裏手で人気があるので使うとなったら夜遅くになってから出ないと見つかる可能性がある。しかたなく、取り敢えずテントを張る場所を探し、管理棟に一番近い炊事場に決めた。ここの炊事場の造りは良い。
たいがいの炊事場は、建物の真ん中にコンクリート製のテーブルがあって、テントはおろか相方も入れる事が出来ない造りになっているのが殆どだ。数少ないテントと相方が同じ屋根の下に入れる炊事場といえば、写真も残っているのだが、島根県は大山の麓にある「鏡ケ成キャンプ場」はそのタイプだった。後は、テントはどうにか晴れるが相方は申し訳ないがカバーを被ってお外で夜明かしして貰うというもの位。
電気はつかないが、四国の山の中、不意に雨が降って来る事を予想し、近くで草刈をしていた管理人の親父さんに親しげに世間話を交えながら「炊事場内テント設営」を許可して貰った。というより、「この中にテント張ったらええがな」と薦められたのだ。「ここ、夜電気つかないですよね~」「まぁ、他にお客さんおらへんからなぁ」「そうですよね、でも自分、明かり持ってるから大丈夫ですけどね」とさりげなくオヤジさんに言った。
相方から下ろされ、次々と出てくる色々なキャンプ用品を間近で見るのは珍しいらしく、「これはなんや?」とか「これはどないして使うものなんか?」と矢継ぎ早に質問してきた。勿論、こちらも気分は上々だったから一つ一つ丁寧に説明してあげた。それにたいそう感心してくれたのか、そのオヤジさんフライシートを掛けるのを手伝ってくれたのだ。
なんだか、黙って電気を貰うのが恨めしくなってきてしまった。
気分も爽快で、昼も軽く済ませたお陰で夕飯は日没前に全て片付けてしまった。余りに腹が減っていたので「今日は大丈夫か」と思って多めに炊いたご飯もものの数分で無くなった。また、買ってしまったかも井食品のビーフチャーハンも旨かったが、今日は特に旨くご飯も炊き上がり、全てに於いてパーフェクト。こんなに美味しく沢山のご飯を食べたのも本当に久しぶりである。美味しくご飯が炊け、それをペロッと平らげる、この幸せ。これだからキャンプは止められない。そして、予想したとおり雨が降って来た。テントも相方も屋根の下。そして、嬉しい事はまだこれで終わってはいなかった。雨が上がり、西の山に夕焼けが見え始めた頃、駄目もとで炊事場の電灯のスイッチを入れてみた。「ジジーッジッジッ」と音がし、蛍光灯に明かりが灯った。「電気が来た!」嬉しくて飛び上がりそうになった。きっと、あのオヤジさんが気を利かせてくれてブレーカーを入れてくれたのだ。ああ、やっぱり旅に出たら地元の人との交流は本当に大事にすれば、こんなにありがたいことまで施してくれるのだ!!!
お陰で、昨日なってバッテリー上がりが怖くて掛けなかった17日旅先日記と今日の分の日記がゆっくり書ける、しかも蛍光灯の明かり付き。おまけに炊事場のテーブルが、PCを叩くのに丁度いい高さ、しかも炊事場の中に幾つものパイプ椅子。勿論、自分が持っているような小さな物ではなく体育館で並べて使うような普通サイズの椅子だ。これが、このテーブルにジャストサイズ。もう、2時間近くPCを叩いているが全然辛くない、足も痺れないし腰も痛くならない。気温の低さを除けば、自宅でPCを叩いているのと環境は大差ない。雨の心配もバッテリー上がりに神経を尖らす事も無い。
勿論、明日の「剣山」登頂が成功したら、2度と来ないだろうけど。さて、時計は11時半を過ぎた。2日分の日記は書くだけで大変だ。だからといって、はしょりたくは無い。何故か、ツーリングが終わってレポートの作成が始まったら、この文章をこのまま転載するからだ。天気予報では明日も雨の心配はなし。残りの荷物も取りに行ける。
駆け足の四国滞在も後、2日間となった。四国の山とも明日でおさらばだ。
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