夕べははぐれてキャンプ場の近くに来てしまったカエルの鳴き声がやかましくてあまり熟睡できなかった。一端目覚ましで、6時辺りに起きたのだがあまりの眠さに再び熟睡。今度起きたのは、テントの中の空気が異常に暑くなったお陰でいぶり出された。「・・・・・!!!晴れとるやんけ!!!」何故か慌ててカメラを取り出し、海岸に出る。雲は多いものの見事に晴れ渡っているではないか。久しぶりに見る青い海と青い空。白く寝起きの自分には眩しすぎる砂浜が眼前に広がっていた。手にしたカメラはこの瞬間を逃すまいと思い持ってきたのである。数回に渡ってアングルを変え、視界一杯に広がる海岸を写真に収めた。
その後、テントに戻り遅い朝食。キャンプサイトに居たほかの旅人達は朝早くからお出かけしているようで、ここでモタモタしてるのは自分だけのようだ、なぜか気が焦る。朝食を済ませ、ろくに後片付けもしないで相方に跨り出発。本来は、今日の予定では洗濯と温泉に浸かる事にしていたのだが、この天気のこと、明日は同じように晴れるかどうかなんて保証はない。(この後、昼飯時に定食屋のTVでの天気予報で、明日も晴れと出た時は少々ずっこけたが)晴れては居るが雲が多いのにチョット引っ掛かったので、念のため雨具をリヤシートに括りつけておいたのは、極端に雨を嫌う単車乗りの悲しい性か?
先ず、R58で一気に南下。島間港で貰った観光パンフをバイザーに洗濯バサミで取り付け、それを走りながらチェック。最初の立ち寄りポイントは、島の東側にある「馬立の岩屋」に決定。沿道に立つ小さな案内標識に目を凝らしながら到着。凄い、思ったよりもでかい。 海水の侵食で出来たいわゆる洞窟なのだが、今日は大潮。満潮と干潮の差がもっとも大きい日に当たる。しかも引き潮の時にしか入れない洞窟に徒歩で入ることが出来た。
大きさは・・・・写真を見てもらわないと説明が難しい、これは後で立ち寄った「千座の岩屋」と同じで、あまりにもでかい洞窟なので人間が写った写真を見てもらったほうが、その大きさが分かりやすいと思う。

洞窟を抜け、海側に出る。「なんて、所だ・・・・」言葉を失うほどの透明な海。この島でスキューバダイビングが盛んだという理由が分かった。以前居た国産ディーラーメカニックでの稼ぎだったら、きっと潜っていたに違いない。旅の前半で船に乗って周遊した「青海島」の海も見事なくらいに透明だったが、ここも負けず劣らずの透明度だ。さぞかし、ダイビングポイントの海底は明るく暖かい事だろう。そして、えらく久しぶりに見たような真っ青な青空。
今日はまた更に腕が焼けそうだ。そして、潮が引いた後の砂浜を歩く時の潮の匂いのきつい事、これも晴れた日でないと味わえない感覚だ。今日は北西の風が強く吹いていて、島の西側は白波がかなり立っていたが、こちらは東側、見事に凪の状態になっている。やけに海の青さが濃いわけだ。
更に南下、県道75号線を走行中、パンフにはない標識を見つけた。「男淵女淵の滝」とある。なんと種子島に滝があるというのだ。これには驚いた。
種子島は周知の通り最高でも海抜200メートルの平らな島である。そこに滝があるなんて、これはめっけもんである。さっそく、標識に従って走り始めるがこれがなかなか見つからない。しかも、屋久島と違って網の目のように農道が走っている為、一体自分がどこに向かって走っているのか時々分からなくなる。一軒だけ立っている雑貨屋のおばちゃんに聞いて、やっと所在が掴めた。いかにも、B級観光ポイントらしく、滝の場所を示す看板は農道の脇にいきなり現れた。加えて「200メートル先に駐車場があります」と看板には出ているが、そこへと通じる道は車一台分の幅しかないあぜ道、しかも未舗装。幾つもの水溜りを通過して、相方は更にドロドロになってしまった。(すまぬ相方、本土に帰ったらどこかで洗車してあげよう)こんなところに爆音立てて入ってくるバイクが居るとは思わなかったのか、何羽もの白鷺が驚いて飛び立って行く、やがて申し訳程度の広場に出て道は終わった、ここが駐車場らしい。相方のエンジンを切ると確かにザーザーという、滝らしき音が聞こえた。ガジュマルのトンネルを歩く事数分で、お目当ての滝が見えてきた。おお、本当に滝があった。しかも2段構えの滝である。

上の小さな滝とその滝壷が「男淵」下の大きなのが「女淵」説明書きを読むまでは逆だと思っていたが・・・水は、先日の大雨の影響だろうか泥水ではないが僅かに白濁している、水に手を入れる、やはり高山からの水ではないせいか思ったほど冷たくない。でも、観光パンフに載っていないしかガイドブックにも載っていないこの滝は、規模こそ、屋久島のもっとも小さい滝にも及ばないが、見る価値は大いにある。話のネタとしてはその価値大だろう。その場所は、おそらく連休中も殆ど人は訪れなかったに違いない、見たい人は自分で探すしかない。なにせ、地図に載っていないのだから。
滝を後にして、更に南下。島に最初に上陸した時に見た「千座の岩屋」と「熊野海岸」に寄って、更に南下。この旅の一泊目に泊まった、大阪の友人に種子島行きのきっかけを作らせた場所、「種子島宇宙センター」に向かった。場所は島内随一の観光名所とあって、直ぐに分かった。だが、言ってもここは宇宙開発事業団の本拠地内、自由に入れるところは限られている、一番の見所と言えば「大崎射場」の展望台くらい。
ここも、ロケット発射の日は満員御礼になるらしい、勿論今日は誰も居ない。
確かに、眺めはよかった。でも、所詮人口建造物。「へ~」という感想しか出てこない。しかも、敷地内にある「ゲストハウス」と銘打っておきながら、そこにある食堂では営業終了5分前だというのに昼飯を食べさせてくれなかった、ここで、昼にして後は最南端の「門倉岬」に行けばいいと考えていたのにお預けを喰らってしまったのだ。もう印象がこれで悪くなった。その後の「科学技術館」で大阪の友人が「あれはおもろかった」と言っていた各種のシミュレーションゲームもなんだか上の空で終わらせてしまった。でも、ロケットを自分の判断で組み立てて、打ち上げるまでのシミュレーションゲームでは見事に一発で成功し、この日の最高得点第2位を獲得し、少しは気分が和らいだ(単純)。
ここで、やるべき事はすべてやったのでまるで定期観光バスのお客のようにさっさと駐車場に戻る。するとそこでショックな事が待っていた。ミラーに引っ掛けておいたメットが折からの強風に煽られて地面に落ちているではないか!しかも、誰も拾ってくれなかったらしく地面に転がったままでいる。このツーリングの直前に買ったばかりのおニューのメットとシールドに傷が・・・・ガックシである。シールドの傷はシールドを交換すれば済む事なのだが、本体のはどうしようもない。考えてみればあご紐をロックもしないでミラーに乗っけただけだったから、落下したのだ。「俺のバカ、俺のバカ」気分は空腹に加えてまたもブルーに逆戻り、早く飯にしないとキレそうだ。
久方ぶりの南種子町にて遅い昼食、時計を見ると3時。テレビでは小泉新総理大臣が血管も切れんばかりの勢いで所信表明演説をしていた。そのオーバーゼスチュアを交えた演説の姿を見て「この人は今までの奴とは違ってなんかやってくれるな」と無意識に思った。食後の一服も満足にせず、次の目的地「門倉岬」に向け出発。
こちらも、手製ではあるがピンク色の分かりやすい標識のお陰で難なくたどり着く事が出来た。鉄砲伝来の碑にて、誰も居ないのでセルフタイマーで証拠写真を撮る。そして、少し離れた所にある展望台に登るとそこに見えたのは西に傾いた太陽を背に受けて浮かび上がる屋久島の勇姿だった。

そのまさに海上にそそり立つような姿を目の当たりにして、全身に鳥肌が立った。少し前まで自分はあそこに居たのだ。でも、その山の険しさは自分の居た場所では余り把握出来ていなかった。しかし、屋久島を離れて初めてみるその姿は「島」ではなく「山」そのものだった。やはり、あの島の全容をみるにはこの島からか、船でないと見ることは出来ない。しかも、屋久島に上陸する時離れるときいずれの日も天気が悪く今日始めて全容を拝む事が出来たのだ。
もう、この島で思い残す事は無くなった・・・おっと、まだ温泉が残っていたっけ。フィルムもここで丁度終わり、速攻で「門倉岬」を撤収。岬に行く途中で「川内温泉センター」の標識があったのを覚えていたので、一気に移動。5キロ強の区間をものの10分少々で走り、田んぼの真ん中に立っている温泉センターはたやすく見つけることが出来た。「風呂風呂風呂!!!!」着ている物を一気に脱ぎ捨て、待ちに待った風呂にドボン。「あ~やっぱり温泉はええわ~」だが、あまりゆっくりはしていられなかった。なんだかんだで、時刻は5時を過ぎていた。ここから島の北までまたもどらなければならない、その距離40㌔以上。湯冷めもなんのそので、相方に跨り北上する。再びR58に出る、さらに北上。島の西海岸沿いを走る。走りながら握りこぶしを水平線にあてがう。太陽は拳の中におさまってしまった。「日没まで1時間もないな」これは、ダイビングをしていた時、仲良くなった船長に教えてもらったやりかたである。
指定速度が無い所では全開ではしり、40・50キロ規制のところではプラス?の速度でじっと走る、焦りは禁物。こう言うときに限ってネズミ捕りをやってたりするものなのだ。夕日との追いかけっこは、西之表市街地に入ったところで終了。夕食と朝の分の買出しを済ませ、幕営地に戻ってきたときにはもうかなり暗くなっていた。到着時刻は7時。1日たっぷり使っての島内ツーリングはこうして幕を閉じた。
さて、今日これだけの用事を片付ける事が出来たお陰で、明日はのんびり出来る。「モッチョム岳」以来全く洗濯をしていなかったので、そいつを全部片付け、そして明後日いよいよ島を離れるにあたっての準備に取り掛かることにする。
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