○その時は、突然やって来た。○

相方と付き合い始めて、8回目の正月を迎えそして世の中が動き出す2000年1月7日の夜。ワタクシメと相方は交換したばかりのスーパートラップの音色を楽しむべく、千葉陸運事務所の前の通りを稲毛海岸に向かって走らせているところだった。
そこへ、脇の会社の駐車場から出てきたRAV4に行く手を阻まれ、行き場を失った我々はその車に激突してしまったのである。
ワタクシメは道路に投げ出され、相方もワタクシメの後方でガシャンという鈍い音とともに倒れこんだ。
地面に落ちた時、背中をキャッツアイにぶつけた様で、激痛が走った。道路にねそべったまま反射的に足を動かしてみる、両方の足は自分の意志どおりに動いてくれた。このときほどホッとした事は無かった。
痛みをこらえて、相方を歩道に移動する。自分の携帯電話で警察に電話をし、自宅にも連絡を入れた。救急車は呼ばなかった。体のアチコチが痛くてしょうがなかったが、実況見分が終わるまでは絶対にここを離れまいと思っていたからである。(4輪のドライバーは自己保身の為に、一様にしてオートバイの側に過失があるように証言するのが多いから)
相方はとても自走出来る状態ではなかったので、取り敢えずRAV4が出てきた会社の駐車場に預かって貰い、Automagicに連絡をして引き上げて貰う事にした。


○廃車か? 修理か?○
Automagicに運ばれた相方をみて、どれだけのダメージがあるのかを調べてみた。

  1. ウィンドバイザー全損 
  2. ヘッドライトリムとステー破損
  3. 右側前後ウィンカー全損
  4. プラグコード破損
  5. シリンダーヘッドフィン 一部破損
  6. フューエルタンク 一部へこみ、タンクエンブレム右側破損
  7. ステップ左右 曲がり大
  8. マフラーステー 破損
  9. シート皮 一部破損
  10. サイドカバー 右側 破損
  11. ハンドル 右側 変形大 修理不能
  12. メーターブラケット 全損
  13. フロントブレーキマスター 破損
  14. フロントフォークステー 左右 変形大
  15. ミラー右 破損
  16. スロットルホルダー 破損
  17. シートレール 曲がり
  18. ハンドルストッパー 凹み大
  19. テールカウル破損
  20. エンジンガード変形、特に地面に当たった部分、右側が酷い。

社長と相談して算出した金額は約100万ほど。社長はこの金額なら同程度のZが買えるから代替した方がいいのでは?と提案してきたが、ワタクシメはこれを拒否、7年以上の付き合いで愛着もあったので、時間がかかってもいいから直して貰うことにした。


○往生際の悪いドライバー○

ある日、ワタクシメが自宅にいるときに相手方のドライバーから電話が掛かってきた。最初のうちは素直に自分の過失を認めていたが、そのうちに警察への人身扱いの届出は考え直してくれ的なことを言い始めた。理由を問いただすと、それをされると免許停止等の行政処分が下され仕事に支障が出るかららしい。その余りにも自己中心的な言葉にワタクシメは勿論キレタ。「あんたね、怪我してんのはこっちなわけよ。おれのほうにも少しは過失があったとしても、けが人のお見舞いくらいするのが普通でしょ?それをなに?仕事に差し支えるからとか寝言いっちゃって、その言葉がどれだけ心証悪いかそれも分からないの?警察に人身扱いするかどうかはこの場では言えないね、取り敢えず誠意が感じられないって事だけは分かったけど」
と、かえしてやったら相手は急に低姿勢になりしきりに謝罪の言葉を連発し始めたが、電話を切った後ワタクシメは近くの警察署に赴き、人身扱いの届け出を済ませた。


○保険会社の動きの悪さ○

には、本当にイライラさせられた。相手方のT海上火災は、保険金の金額が決定する協定が成立するまでに10回近く電話をしなければ動こうとしない会社であった。まぁ、保険会社なんてどこもこんな感じなのだろう。大事なのは自分とこが抱えているお客だけなのだ。
結局は責任分担は、完全に納得できない8対2というものだった。協定が無事成立しAutomagicさん側でも部品の調達に取り掛かってくれた。しかし、5月連休までに完成することは無理ということが分った、その後外装品をばらして車体を詳しく点検した所、足回りに重大なダメージはなさそうだと社長からの話を聞いて、なんとしてでもG/WのツーリングはZⅠでいくと決めていたので、社長が所持している外装品を一揃え拝借する事で一段落した。ゴールデンウィークのツーリングは、Automagicのロゴがデカデカと入ったタンクを付けてのちょっと恥ずかしい道中となった。

無理を言って外装を快く貸してくれた、Automagicの社長さんには今でも感謝しております。

 

○相方再入院○

保険金の協定までに時間が掛かったせいで、手がつけられなかった足回り関係の修理をするためにツーリングから無事帰ってきた相方はAutomagicに再び入院生活する事になった。
その後、保険会社とワタクシメとAutomagicを挟んで修理金額のことで、色々と話し合った結果90万円位で収まるようにとの結論となった。
一番の懸念材料だった、シリンダーヘッドのフィン欠け、これも事故直後はシリンダーヘッドボルトまでダメージがおよんでいるように見え、すわ中古ヘッド乗せ替えか!!!???とまで考えられたが、実際はフィンの欠けのみで済んだようで、相当にホッとした。ここは、社長じきじきにアルゴン溶接で肉盛りして直してくれるとの事。
それ以外の修理個所部品の注文先がおおよそ決まり、あとは全ての部品が注文した通りに揃ってくれればいいわけだ。

  1. ウィンドバイザーGIVI製新型を取り付け。
  2. ヘッドライトリム純正新品を使用。
  3. ヘッドライトユニット本体HONDAX4用をチョイス。
  4. ウィンカーステーは全てCGC製新品交換。
  5. プラグコードはアクセル製のイェローに。
  6. ステップ曲がりは、曲がりを修正のみでOK.
  7. ブレーキ・シフトペダルも曲がりを修正するだけ。
  8. シートは、内部のフレームまでダメージが及んでいたので、PMCオリジナルのZシリーズ用シート(¥200,00)に交換。
  9. サイドカバー中古品を取り寄せ、塗装(Z750D1)する。
  10. K&Nパワーフィルターを現在の物より小ぶりな物に変更。
  11. ハンドルバー、この際オリジナルの大アップハンからもう少し前傾をきつめにした、現行車なみのバーハンドルにした。
  12. スピード、タコメーターはO/Hを兼ねてAutomagicオリジナルのホワイト文字盤に変更、イルミライトはブルーを選択した。
  13. 曲がってしまった、フロントフォークはトリプルツリーごと交換。アドバンテージKYBのフォーク&ステムセットを選択。¥198、000
  14. ブレーキキャリパーは純正ノーマルを再使用。キャリパーサポートは特注品。
  15. スィングアームも交換、ホイールはノーマルのまま。PMCオリジナルのアルミボックススィングアーム¥36,000
  16. 15のスィングアームには、ノーマルドラムブレーキ用トルクロッドのマウントサポートが付いていなかったので、溶接して取り付け。
  17. フロントブレーキマスターシリンダーはNISSIN製(採用車種不明)に交換。多分ホンダ車辺りに付いてるやつかな?
  18. 磨耗の進んでいたドライブチェーン(RK)交換、サイズダウン630⇒530に。併せて前後のスプロケットも交換。
  19. 全ての外装オールペン、Z750D1の深みのあるグリーンに、タンクにはゴールドのラインを入れた。しかし、全て同じ塗装にしたらナンチャッテD1仕様になってしまうので、テールカウルにはZ1-Aと同じラインを入れ色はゴールドにしてもらった。
  20. タンクエンブレムは右側が凹んでしまい左側も変形しているので、タンクの板金と合わせて、左右とも新品に交換。
  21. トラップのサイレンサーのブラケットがもげてしまったので、中古品の合う物で間に合わせとする。
  22. 先端が曲がってしまってタイヤと干渉しているフロントフェンダーは中古品に交換。
  23. トリプルツリーの交換のついでに、ステムヘッドベアリングの打ち換えも依頼した。
  24. エンジンガードを左右共にZ1000Rの物に交換した。

PMCの不手際


上記の部品の全てがスムーズに揃う事は無かった。とくにPMCが扱っている商品では問題点が幾つかあり、それによって完成が1箇月伸びた。
配送されてきた新品のステムを点検したらなんとベアリングレースがガタガタになっており全くチャンと圧入されていなかったということ。次は、フロントフォーク、ここにはノーマルのホイールノーマルのブレーキキャリパーをつけるつもりだった(カタログにはボルトオンと記載されていた)が、キャリパーサポートの形がまるで合わない、PMCに事情を話したら、専用設計されたAPの2ポッドキャリパーを取り付けるようにしかなっていないとの事、これではボルトオンにはならない。メーカー側の説明不足ということで、特別にキャリパーサポートを図面から起こして削り出しで製作して原価のみの価格で配送するとのことで、決着がついた。これを待つだけで1ヶ月がたってしまった。
まだある、スィングアーム。これもカタログにはボルトオンと記載されていたが、ワイドタイヤにも対応できるスィングアームを取り付ける場合には、4本マフラーが交差するところにあるステーを切断しなければ付けられないという事だ。思い返して雑誌のZ特集を見てみると、アルミボックスのワイドなスィングアーム取り付け車はみなマフラーステーが切り落とされていた。それさえクリアすれば、確かにボルトオンだが要加工って一言でも書いといてほしかったなぁ。
で、スィングアームでもう一件、リヤドラムブレーキ用のトルクロッドが固定されるはずのマウントがアーム側に付いていなかった事。これは本来だったらメーカーに返品してマウントをつけた上で送り返して貰う物なのだが、社長が大の溶接好きだということでAutomagicさんでここは加工してもらうことにした

○修理完了・・・しかし○

 半年間満足に相方と走る事も出来ず、悶々とした気分が続き、それがピークに達し様としていた時に、そして毎年恒例の北海道ツーリングが間近に控えていた事もあって、今年はZでは行け無いかもと考え初めていた矢先にはいった朗報にワタクシメの喜びは爆発した。

ところが、毎年の恒例行事であった北海道ツーリングは、会社の上司の理不尽な強制却下により(連休をとるか、今の職場をとるか決断を迫られた)泣く泣く断念せざるをえなくなった。その悔しさは4ヶ月近く経ったいまでも心の中に強く残っている、結局それが尾を引いた訳ではないと考えたかったが、仕事現場の環境の急激な悪化によりワタクシメは神経を病んでしまい、仕事が手につかなくなるほどに酷くなり、とうとう10月一杯で3年間勤めた会社を辞めることにした。
話は前後するが、北海道行きを断念した8月はそのショックも大きく暫くは、退院してすっかりリフレッシュした相方がガレージで待っているにもかかわらず、殆ど遠出をする気にはなれなかった。下旬になってようやく落ち着いたところで、ようやく重くなってしまった腰を上げ宮城の温泉地に一泊のツーリング「蔵王山ツーリング」に出かけた。


○走ってみて感じた変化○

 足回りの大幅なモディファイを加えた相方の走りは正に、激変の表現にふさわしい変わり様だった。とにかく、直線は安定しているの一言に尽きる。
よく、Z車体に関するモディファイではフレームの補強が必須項目のように挙げられるが、Automagicの社長いわく、「フォーク周りとスウィングアームの強度を上げさえすれば、充分に車体の剛性はアップする、フレームの補強はエンジンのスープアップをしてからでも遅くは無い」
その通り、ワタクシメの相方はキャブを換えてエンジンのレスポンスは大幅に向上しているが、ピークパワーはさほど変化していないはず、ということはフレームの補強は必要ないわけだ。
街中から高速、そしてワインディングを含めた「蔵王山」ツーリングでの相方の印象は、本当の意味で更に乗りやすくなったの一言に尽きる。


○あれから一年○

相方のオドメーターは6万キロを超えている。(’0011月現在) ちなみに用賀の絶版車販売店で買ったときの走行距離はマイル表記で3万5千マイルだったから、まもなく10万マイルに達するわけだ、勿論キロに換算すればとっくに10万キロは超えている。購入当時は自分ながらに覚悟していたが、あまりの維持費の高さに一時は手放すことも考えていた時があった。しかしそれがZ乗りとしてはあるまじき考えである事を最近思うようになった。ピークシーズンを終え、出番が少なくなり(普段の足はR1100Rが担っている)ガレージで佇んでいることが多くなってきたZを改めて見ると、今だもって自分が相方に対して飽きていない事を確認する事がある。やはり、流行を追いかけない不変のデザイン(丸いヘッドライトからテールカウルまでのラインの流れ)は、とりたてて特徴と言える物はないし、目立つような人目を引くような飾りつけも無い。
それが、飽きの来ないデザインといわれる所以なのかもしれない。突出した性能を望まなければ、これほど手入れのしやすい単車はそうそう無いだろう。
もう事故は沢山だ、これ以上つまらない事で相方と離れ離れになりたくなければ、全国のライダーの皆さんは分かっているとは思いますが、4輪ドライバーの運転技術を信用してはならないということを、いまもって肝に命じたいと思っている。
そして、当たり所が悪ければ車椅子の生活になるところだったのに、打ち身とかすり傷で済んだのは不幸中の幸いとしか言い様が無い。こうして今もオートバイに乗れる身体でいられる事を幸せに思っている。
もちろん、オンシーズンの間は、たとえ日帰りのツーリングであっても、ダイネーゼの脊髄パッドを付ける事を現在でも習慣として守っている。
[完]