たった1冊の本が、人生を変えることがある。
私は年間50冊以上の本を購入して読んでいる。ただ、昔から本が好きだったわけではない。学生時代にたくさん本を読んでいたわけでもないし、社会人になってすぐに読書を始めたわけでもない。本を読み始めたのは、20代後半くらいからだったと思う。誰かから、「本を読みなさい」と言われたわけでもない。最初はコンビニに並んでいるビジネス系の雑誌などを買う程度だった。当時は管理職をしていて、部下に対して論理的に説明をしたいと思ったのがきっかけだったと思う。そして、30代に入ると、本格的にビジネス書を読むようになった。自己啓発。経営。マネジメント。マーケティング。財務。心理学。興味を持ったものを片っ端から読んだ。一時期は、「図書館なら無料だから、その方が得だ」と思って、図書館で本を借りていたこともある。もちろん、図書館は素晴らしい。しかし私は、図書館で借りるのはすぐにやめた。理由の一つは、最新の本を読みたいから。そしてもう一つは、自分のお金を払って買った方が、本気で読むからだ。また、私は書籍にマーカーを引くようにしている。1冊1,500円、2,000円程度。私はこれほどコストパフォーマンスの高い自己投資は、他にはないと思っている。考えてみれば、本というのはすごいよね。著者が何年、場合によっては何十年という時間をかけて経験してきたこと。失敗したこと。成功したこと。研究したこと。考え抜いたこと。それらが一冊に凝縮されているんだから。その知識や経験に、わずか数千円で触れることができる。他人の何十年という経験を、数時間で疑似体験できる。そう考えると、とてつもなく安いといえる。本1冊の値段は、外で昼食を食べれば使ってしまうくらいの金額だ。昼食はその日で終わる。しかし、本から得た知識は、その後の人生を変える可能性だってある。もちろん、本を読んだからといって、すぐに人生が変わるわけではない。100冊読んでも、何も行動しなければ意味はない。しかし、たった一冊の本に書かれていた一つの言葉が、自分の考え方を変えることがある。一つの行動を変えることがある。そして、その行動が10年後の自分を変えることだってあるのだ。そう考えれば、1,500円や2,000円という金額は本当に小さい。一方で、大人になると学ぶ機会は一気に減る。厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」では、自己啓発を行った労働者は35.5%だった。つまり、仕事以外で自ら学ぶことが当たり前になっているとは、まだ言いにくい状況だと思う。学生時代は、「勉強しなさい」と言われる。宿題がある。試験がある。嫌でも勉強する環境がある。しかし、大人になると誰も言ってくれない。本を読まなくても怒られない。勉強しなくても試験で0点を取ることもない。だからこそ、大人になってからの学びには、自分の意思が必要になる。もしかすると私たちは、学生時代に「やらされる勉強」を経験しすぎて、「勉強=苦しいもの」というイメージを持っているのかもしれない。でも、本来、学ぶことは楽しいことだと私は思うんだ。知らなかったことを知る。できなかったことができるようになる。仕事の生産性が上がる。新しい考え方に出会う。人生の選択肢が増える。学ぶということは、自分の可能性を広げることでもある。「本を読む時間がない」という人も中にはいるだろう。「文字を読むのが苦手」という人もいるだろう。もちろん、それぞれ事情はある。しかし一方で、私たちは毎日スマートフォンでかなりの文字を読んでいないだろうか。SNSを開く。投稿を見る。ニュースを見る。コメントを見る。気がつけば30分、1時間と時間が過ぎていることもあるはずだ。だったら、その時間の一部を読書に使ってみてもいい。SNSが悪いと言いたいわけではない。私自身もSNSを使うし、情報収集にも使っている。ただ、SNSには他人の人生の「切り取られた一部分」が流れてくることが多い。楽しそうな旅行。高級な食事。成功した仕事。華やかな生活。でも、その人の人生が24時間ずっとキラキラしているわけではない。その写真の外側には、地味な努力や悩み、失敗、何も起きていない普通の時間も当然たくさんある。他人の人生の一部分を眺め続けるより、その時間を、自分の人生を良くするために使う。私はその一つが読書だと思っている。そして、私は基本的に本を書店で買う。ネットで買うこともできるが、書店へ行くこと自体が好きなのだ。書店を歩いていると、自分が探していた本だけではなく、「こんな本があるのか」という偶然の出会いがある。表紙が気になる。タイトルが目に入る。手に取る。少し中を読む。そうすると、自分では検索しなかったような分野の本と出会うことがある。これも書店の面白さだと思う。私はこれからも本を買い続ける。そして、読み続ける。年間50冊なら、10年で500冊。そのすべてを覚えている必要はない。その中から10個でも20個でも、自分の人生や仕事を変える考え方に出会えれば十分だと思っている。知識は誰にも奪われない。そして、学んだことは仕事にも人生にも使うことができる。数千円で、自分の可能性を広げることができる。そう考えると、読書ほどコスパの高い自己投資は、なかなかない。私はそう思っている。浮島 達雄