予防法学 | 「弁護士 立石量彦」 公式ブログ

予防法学

企業家は,税理士(会計士)と弁護士の顧問を持つべきといわれます。

確かに,企業経営の「守り」を固める上で,これらは必須でしょう。


しかしながら,現実には,ほとんどの企業が税理士の顧問は持つものの,弁護士顧問は持たない企業が多いと思います。

これは,なぜでしょうか。


おそらく,これは必要性の実感の差なのだと思います。

年に一度の税務申告がある以上,税理士の顧問の必要性はすぐに理解できます。

ところが,法務リスクは,トラブルに直面しないと,その未然防止の必要性が身に沁みて感じられないのでしょう。


実際に当事者になってみると,法的トラブルの対処はなかなか大変です。

経営をしていれば,トラブルの種はいくらでもあります。


・取引先が売掛金を支払ってくれない

・発注者から力関係を背景に無理な条件ばかり提示される

・工場や操車場がうるさいと近隣から苦情が出る

・不良品が原因で健康被害が出た

・職員の不祥事が発覚した

・不良社員を辞めさせようとしたが,弁護士や組合から内容証明郵便が届いた

・反社会的勢力から脅される

・創業者が亡くなり,後継者争いや,それに伴う金銭給付を巡っての争い


このような問題がこじれていくと,紛争は長期化しますし,やがて裁判や警察沙汰になることもあります。(ちなみにこの段階で弁護士に依頼しようとしても,なかなか予約が取れないことがあります。また,相談だけでなく正式に依頼する場合,費用も相当高額に上ることが通常です。)

経営者は,これらの問題に精神的にも時間的にもかかりきりになり,本業がおろそかになってしまうのです。


そこで,このような法的トラブルを未然に防ぐ体制を作り,仮にトラブルの芽が出てきたときも,小さいうちに摘み取ってしまおうというのが,「予防法学」です。

医療の世界でも,ガンは「早期発見」すれば治癒可能な時代であり,人間ドックなどの「予防医学」が重視されています。法の世界も同様です。


弁護士と顧問契約をしている方々は,気軽に弁護士に相談できる体制を作ることで,このような「予防法学」のメリットを享受しようとしているわけです。