私の部屋には遺灰がある

それはそれはとても美しく

砂のような滑らかさで風情すら感じる

夜になると瑠璃色に輝く

そしてこれは

母親の遺灰だ

 

母親はとても誠実で私のためなら

毎日働いてくれた

それも独り身で…

 

ある日、私は宝石屋を訪ねていた

母の誕生日にあげるネックレスを探していたからだ

母はアジサイが好きだ

だから私は瑠璃色に輝くアジサイの形を模した

ネックレスを購入した

帰り道、心を弾ませながら私は歩いていた

そのとき…

ピィィィィイイイイイイイイイイ

私は振り返る間もなく大きな衝撃音を耳にした

ドンっ!!

私は押されるような衝撃を体に感じ、

態勢を崩した

そこにはボンネットのゆがんだ車

そして血まみれの母親

暴走車に引かれそうな私を偶然見かけた母は

私を突き飛ばし、助けてくれた

そのそばには衝撃で振り落とされた

アジサイのネックレスが落ちていた

 

 

母親の葬式は身内のみで行われた

私は棺の中で眠る母親のそばにアジサイのネックレスを置いた

もし生きていたら喜ぶ母の顔を見ることができたかもしれなかった

いや、私があの時宝石屋に行かなければ怒らなかったのかもしれない

あの事故は

 

母の遺体は火葬で灰と化した

私はそのときこっそり遺灰の一部をビニール袋に敷き詰めた

私にもなぜこんなことをしたのか理解できない

無意識だったのかもしれない

孤独を和らげるためにしたのかもしれない

そんなことをしても母は

母は・・・戻ってこないのに…

 

あれから何年経ったのだろうか

思い出すたびに目元が熱くなる

このままじゃだめだ…忘れないと…

出てきそうになる涙を私はぐっとこらえた

その時

瓶に詰められた母の遺灰が輝いた

まるであの時渡した瑠璃色のアジサイのネックレスのように

信じられない光景だが

なぜか私はそのことを受け入れることができた

そして心の奥底にある枷が外れたような気がした

 

こらえていた涙がしたたり落ち

その涙は瑠璃色に輝く遺灰の光に反射され

それはそれはとても幻想的だった

 

…ありがとう