彼女との思い出の品や彼女との写真。
これってどうすればいいんだろうな。
捨てるべきなんだろうけど、消すべきなんだろうけど、いつか彼女が戻ってきたときに、なんて思ってしまう。
私は弱い人間だ。
過去を過去と割り切ることもできない。
過去と決別することが未来への第一歩だ、なんてよく言われる。しかし私はそれを正しいことだと思えない。
過去の自分は過去の自分として確かに存在していたのだ。それを否定してまで私は未来を生きたくない。

決別とは否定することだ。過去を忘れ去ろうとすることだ。過去を忘れて何になる。過去は絶対に、その時に存在していたんだ。時間の連続性を否定することなんてできてたまるか。
思い出は思い出だ。二度と更新されることがない、別れた瞬間に止まった時計のようなものだ。
過去と決別することは、その時計を捨てて新たな時計を買うことだ。何故捨てる。何故大事に取っておいてはいけない。

こうした考え方を持つ私は「女性は上書き保存」という考え方に凄まじい嫌悪感を覚える。実に哀れだ。壊れた時計をすぐに捨て新しい時計を手に入れる、物持ちの悪い人間の生き方だ。
私は軽蔑する。私は愚かだと思う。
別れた瞬間に過去の者として相手を遮断する人間を。別れた瞬間に「前を見る」等といって過去と決別する人間を。

壊れた時計には壊れた時計の価値がある。また修理すれば使えるかもしれないし、壊れたとしても価値が残ってるかもしれない。それを見ようとせずに、決別、なんて一言で片付けようとする愚者を私は心の底から軽蔑する。

以上