約束の一打席 最終話『一瞬は永遠に...』 | 黄昏の黄色い帽子に一番星……☆

約束の一打席 最終話『一瞬は永遠に...』


最終話 『一瞬は永遠に...』


“カーーン!”

快音とともに、強烈なピッチャー返しの打球が!


魂を込めた打球は、

投手・山口のグラブをはじき

そのグラブが、白球が、宙に舞う。

後方に転がった打球を

素手で素早く拾いなおして、一塁に送球・・・

全力疾走の佐伯君は一塁にヘッドスライディング・・・

微妙なタイミングと、土けむり・・・・・・・・


時の動きが息を呑んだかのように止まる、真夏の一瞬


そして、


一塁塁審の右手が高々と上がる

“アウトー!”

相手側スタンドの歓声が球場を支配するなか、
ひざまずいたまま、うつむいたままの佐伯君・・・・・

その時、
先程の麦わら帽子のおじいさんが大声をあげる

『よくやったぞー、ナイスバッティングだったぞー、13番っ!』

この声に呼応したのかのように
一塁側スタンドから拍手が起こる


たくさんの人が立ち上がって拍手を贈っている

この拍手に佐伯君のお母さんは、小さな声で、うつむきながら、

『ありがとうございます。。。。』

私に聞こえるか聞こえないかぐらいの、小さな声。


グランドに目をやると、

蜃気楼のようにゆらめいて、、、、


真夏の

一瞬だったはずの光景が、

永遠のように感じられた。。。。。。。。。



・・・・・・・・・・・・・・・・・


時は過ぎ、

9月になれば、車窓はススキの風景


カンカンカンカン・・・・・


小っちゃな港町の

小さな無人駅に、

踏み切りの音とともに

今日も電車が来る。。。
陽射しに揺れるホーム
名も無き花
さびた駅名板
ほのかに吹き抜ける潮風、、、、、


2学期になって、佐伯君の髪の毛は、ちょっぴり長くなっていた。








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