約束の一打席 第4話『球場へ…』 | 黄昏の黄色い帽子に一番星……☆

約束の一打席 第4話『球場へ…』

第4話 『球場へ…』


今日の、市民球場の第3試合が、佐伯君の初戦......

それに私は、今日は先生の都合で、午後3時頃に練習終了の予定だから、、、、
その後、タクシーでも使って、市民球場に直行しようと考えていた。

・・・・・
練習終了後、
慌てて着替えをしながら、ケータイを見ると、メール下手な母からメール


““練習終了後、正門に直行!””

(何だ??)

正門に行くと、
『さおりちゃーーーーん!、こっちこっち!』
ナント、そこに居るのは、佐伯君のお母さん!!
『さあ、乗って乗って!!市民球場へ行くよ!』
『あっ、ハイ!』

車は、クーラーの効いた状態で一路、市民球場へ・・・・
『今朝ね、さおりちゃんのお母さんから話しを聞いてね』
『えっ!?うちの母が頼んだんですか??』
(何て無神経なんだ!!)
『いいのよ、あの子もまだ試合に出てないみたいだから・・・』

カーラジオから試合中継が流れている・・・
・・・・<<<試合は6回裏を終わりました、1-0で第一商業リード。好投手、山口君いぜん、ノーヒットノーランを続けております>>>・・・・・

『今日、ラジオ中継があったからさぁ、球場でヤキモキしながら見てるより、さおりちゃんを待ってる方が、気が楽だったよ』
『ホントにスミマセン。ワガママなお願いしまして.....』
『あの子ったら、約束の1打席の話しなんて、全然、私に話さなかったのよ』
『(母さんのおしゃべり!!!)』
『私にはね、「10点差くらいになったら、お情けで代打、あるかも・・・」って言ってた。でも1点差の接戦じゃ、やっぱり出番がないかもね。しかも、チームもノーヒットだし・・・・・』
『10点差って、、、、』

ラジオが試合の模様を刻々と伝える
・・・・<<<好投手山口君、絶好調のピッチングを続けております。この回の先頭バッター、早くもツーナッシングに追い込みました。第3球、投げました、空振り三振!!!速い速い、今日最速の145kmーーーッ!!!>>>・・・・

(145km・・・・・)

佐伯君の、

漁港の蛍光灯の下で聞いた、言葉が静かに私の中で蘇る・・・


・・・・・(『今のオレなら、山口の140kmが145kmでも打てそうな気がする。いや、絶対打てる!』)・・・・・


・・・・・

『さおりちゃん、少し遅れたけど、全国大会出場おめでとう!』
『ありがとうございます。いつもトレーニングに付き合ってくれた佐伯君のおかげです。』
『そういう、お礼を言うのは、私達の方かも知れないよ』
『えっ??』
『浩二が、こうやって3年間野球を続けてこられたのは、さおりちゃんのおかげだよ』
『そっ、そんなことは......』
『私ね、あの子が腰をケガしてる時でもね、夜のトレーニングに行ってるじゃない。

・・・・こっそり見に行ったことがあるの。。。私はてっきり、さおりちゃんと楽しいおしゃべりでもしてるのかなぁって思ってたんだけどね。全然、おしゃべりなんかせずに、黙々とウェイトトレーニングしてるじゃない。』
『そうなんです、一言もしゃべらない時も多いんです』
『二人とも背を向けるようにして、トレーニングしててもさ、お互い背中で励ましあってきたんだよ。』
『・・・・・』
『お互いが、知らず知らずのうちに励ましあってて、お互いの見えないハードルを、、、、いくつもいくつものハードルを乗り越えて、今日まできたんじゃぁないかなぁ・・・・本当に有難うね!』
『・・・・・』
『背番号13番を縫い付けているときにね、そんな事、漁港での二人の姿をを思い浮かべながらね、、、、そりゃぁさ、レギュラーナンバーだったらなぁ、、、レギュラーだったらなぁっては思うけど、、、』

『・・・・・・・・』

『この13番は、3年間頑張った証(あかし)なんだなぁって・・・・』
『その13番、、、試合に出て欲しいですね。。。。。。』
『さぁねぇ、、、、そればっかりはねぇ・・・わかんないよ、さおりちゃん』

・・・<<<7回裏を終わりました、いぜん山口君のノーヒットノーランは続いております>>>・・・


・・・・市民球場に車が着く
『一塁側だね・・・・』
二人は、小走りにスタンドへの階段を上がりかけた時、歓声が沸き起こった。

一塁側スタンドが歓声に包まれている
スコアボードに“H”のランプが、
チーム初ヒットのツーベースが出たみたいだ。
ツーアウトながら初めてスコアリングポジションに進んだ。

初めてのチャンスに沸き返るスタンド・・・・

そして、次の打者はここまで、1点はとられたものの、好投をしているエースピッチャー、、、、
ベンチに呼ばれたのか、、、ベンチに歩を進める。

その時、、、
ベンチからヘルメットをかぶった
13番が見えた・・・・・

ついにきた!!
約束の1打席が・・



黄昏の黄色い帽子に一番星……☆



プラセンタ100