妖怪 「酒呑童子」(その13)-住吉大社- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

 住吉大社は大阪の堺市にある。(訂正:大阪市住吉区にある)現代でこそ大阪は日本第二の都市であるが、それは中世以降、室町時代に浄土真宗の蓮如上人が今の大阪城の地に小さな隠居の庵を建ててから以降のことである。その庵の跡に石山本願寺が建ち、その後に大阪城が建ち、城下町として発達してきた。古代に難波宮(なんばぐう、なにわのみや)があったが、奈良時代以降室町時代までは廃墟となり風化してただの石ころの山だった。


 この頃は、大阪というより堺が中心になっていた。古墳で有名な応神天皇、仁徳天皇の頃には住吉大社はすでにあり、宮司は「津守」という名を歴代継承していて地名にもなっている。(明治時代に世襲制廃止に伴って宮司=津守ではなくなった。現在は真弓宮司)現在住吉公園のあるところが昔の海岸線。

 住吉大社は海の神様遣隋使遣唐使はここから出発して津守氏が同行したと言われる。源氏物語や一寸法師にも出てくる大社である。


 なお、住吉は昔、住ノ吉と書いて(すみのえ)と呼んでいたらしい。


 また、頼光の父満仲(みつなか)が摂津守の時にこの大社からの神託により兵庫川西の多田神社を拠点に清和源氏を起した。頼光は満仲の長男である。

 余談だが、満仲の三男が河内源氏を名乗り、その系列に有名な頼朝と義経がいるとされている。



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(住吉大社)


 頼光一行は住吉の津(港)に着いた。船が多く人の行き来にも活気があった。既に山伏の姿では異様に移るので旅の姿に戻している。


「宮司様、ご無沙汰でござる」

「お、これはこれは頼光様、お久しぶりでございます。」

「父の代より何かとお世話になり申す」

「とんでもございません。さ、奥にお部屋を用意しておりますので、ごゆるりとなされてくださりませ」

「かたじけない」

「しばらくは、ご逗留されるのでございますね」

「いやいや、それが今回はそうもしてはおれんので、数日だけお世話になりとうござる」

「かしこまりました。しかし今日のところはごゆるりと、旅の疲れを癒してくださいませ。」


 宮司は奥の書院に案内して、酒肴の用意を指示してからどこかに下がっていった。


 酒肴が始まった頃に宮司がまた顔を見せた。

「何でも今回は戦勝祈願とか、してその相手はどちらでございますか」

「丹後にある大江山の主で酒呑童子という鬼です。」

「鬼、でございますか」

「もちろん真(まこと)は人間であろうが、様々な術を使い、剣も強く人心を掴む力にも長けている。軽々とは攻められぬ故、神もお力添えをと思い、やってまいりました」

「そうでございますか、…うん、よい物がある。しばらくお待ちくださいませ」

 宮司はしばらくして何かを持って戻ってきた。

「これは宋(そう)の酒でございます。」

「宋(そう)」

「ご存知の通り、菅原道真公が遣唐使廃止なされました。唐が滅びようとしていた為でございます。そしてその後宋(そう)という国が出来ました。今は昔のように使いは送りませんが、交流はございます。その中で奇妙な酒があると聞きました」

「奇妙な酒。なになに、神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)。なにやら意味ありげな酒でございますな」

「何でも、鬼や妖怪、魔物が持つ力を削ぐ酒であると聞きました」

(注:通史では日本の老人が渡したとなっていますが私の感覚で書かせていただきます)

「それでは、我々の目的には必要な酒ではございませぬか」

「しかし、とても強い酒なれば、くれぐれも共倒れには用心してくださいませ。」

「かたじけない、頂戴つかまつります」


 翌々日、一行は本殿にて戦勝祈願を行い、京都は八幡へと足を向けた。




【14へ続く】


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