結果発表まで落ち着かない日が続く。
次男は気持ちを切り替えて
「後期の横国大受験を頑張るわ」
と言うがモチベーションが上がらないらしい。
合格発表の前夜も暗い顔をしている。
そして運命の合格発表。
次男は結果を確認しようとすらしていない。
私も平静を装うが緊張が高まる。
発表15分前にいたたまれず、習慣になっている筋トレで気分を紛らす。
8時58分。居間のパソコンから合格発表のサイトにアクセス。
無事アクセス完了。
9時ちょうど。経済学部の結果をクリック。
心臓の鼓動が凄い。
画面を凝視して次男の受験番号を探す。
あった!!
「うわ~、やった!!」
私は思わずそう叫び、次男の部屋へ突入する。
突然の私の侵入に驚いている次男。
「おまえの受験番号は◎◎◎◎◎◎だな?」
「えっ!確認するわ」
次男の部屋を飛び出し、再び居間のパソコンへ向かう。
受験票を持って次男がやってくる。パソコン画面を見る次男。
「やった~。合格したわ。信じられんわ」
そう言ったものの、まだ事態が理解出来ないようであまり感情を表に出さない。
次男にプリントアウトした合格発表掲示板を渡し受験番号に蛍光ペンでマークする。
「確かに合格しとるなあ」
傍では妻が涙ぐんでいる。
私は1年半前から単身赴任しており、その期間、妻がずっと次男の体調管理に努めていた。
阪大受験から今までの期間は、妻にとっても長く辛く苦しい時間であったことは間違いない。
まだ実感は湧かないようだが、その後、大分のじいちゃん、ばあちゃん、親戚、高校の先生、塾の先生に報告する。
仏壇にも線香をあげて合格の報告をした。
みなさん、本当に喜んでくれたようだ。
次男の顔から徐々に緊張が抜けていく。
高校受験でお世話になった個別指導塾のH先生は
「本当ですか!凄い!私の教え子では2人目の阪大生ですよ」
と非常に驚いていた。
「最初、先生に「偏差値47です」って言われたんですがねえ」
「そうですよねえ。あれからよくここまで頑張りましたねえ。本当に凄いですよ」
その後、高校に行き直接、先生方に報告。
次男の高校から大阪大学への合格は4年ぶりということで随分と喜んでくれたらしく、なかなか帰って来なかった。
高校でも2次対策として英作文の添削をしてくれたりと大きな支援をいただいた。とても有難い。
「俺、ΣΣ高校に行って良かったわ。本当にそう思うわ」
中学の最後の半年間、次男の担任としてずっと支援してくれた先生にも挨拶に行った。
とても驚き、そして、喜んでくれたそうだ。
「Y県の中学時代の友達に伝えたら「おまえが阪大に???スゲ~!!あんなにアホやったのに信じられん!!」と絶句してたわ」
次男はそう言って笑った。
元上司も
「そうか。良かったなあ。俺の直属の後輩だな」
と言い喜んでくれた。
あの事件の時、元上司のアドバイスがなければ今日のこの日はあり得なかったことだ。
あの事件の時、本当にどん底に落ちた気持ちだった。
こんなことが現実に起こるのか?と戸惑うばかりで、どう状況を改善すれば良いのか分からなかった。
その時、元上司から言われたのが
「勉強させろ!」
であった。
手をこまねいていても状況は何も変わらない。
状況が好転することを信じて懸命に何かに打ち込む、努力する。
当時の次男にとって、それこそが勉強だった。
あれから懸命に愚直に勉強した。
自分を信じてひたすら努力を続けた。
その結果が大阪大学現役合格だったのだ。
「俺、柔道辞めたことが正解だったのかって、ずっと心のどこかで引っかかっていたけど、阪大合格で全て吹っ切れたわ。これまで頑張ってきて良かった。本当に嬉しいわ」
次男にとっても私達家族にとってもずっとずっと心のどこかに引っかかっていた思いからやっと解放されたのだった。