太平洋の奇跡 青野千恵子の戦争②
19年7月7日のバンザイ突撃後の日本兵の生き残りは
ジャングルでの生活が続きました
生き残っていた日本兵はバンザイ突撃で奇跡的に生きていた兵士と
バンザイ突撃があるということを知らされていなかった一部の部隊でした
日本兵は約600人ほどがジャングルに潜んだものと推測します
また、ほかに500人ほどの民間人も小グループに分かれて潜んだものと思われます
その中にタナパグの小学校の校長の子供を引き連れた青野千恵子もいた
9月に入ると大場隊がジャングルでの陣地を移動するとき
120人ほどの民間人と遭遇した
それが青野と大場の出会いである
大場大尉はこのときの青野の姿を見てとても日本女性とは思えなかったという
シャツを腹で結び腰にはジャックナイフをぶら下げていたのです
看護婦をしていた青野は大場大尉に重宝されるようになります
民間人の中から戦闘要員になるものも含め兵士は120名ほどの部隊となり
多くの兵士は民間人の女性と一緒に暮らすようになったのです
しかし、青野千恵子だけは違っていました
11月に入り米軍の大掃討があるとの情報が入り
隠れる場所は断崖絶壁の岩の上しかないと考えた
しかし民間人が米軍が通り過ぎるまで黙っていられるかどうか心配だった
岩の上では立ったまま壁に張り付いていなければならない
老人やか弱い女性では無理だと判断し多くの民間人を米軍の捕虜となるように勧めた
青野千恵子は大場隊には看護婦が必要だと説得し大尉は特別に了承した
そんな青野に気を寄せていたのが木谷敏男曹長でした
木谷はいつももじもじして青野には弱かった
そんな姿を見て青野千恵子に寄り添ったのは
ヤクザ兵士の堀内今朝松一等兵だったのです
青野千恵子の入浴中に堀内が忍び寄り
裸で逃げる青野を堀内が捕まえて後ろから抱きしめます
「お前はどうして男を作らないんだ?」という言葉に対して
青野は般若の刺青が入った手を思い切り噛みつき逃げたのです
青野千恵子は自分の目の前で両親を殺され妹まで殺され
目を開けた時に機関銃で目の前の米兵を撃つことができなかったことを悔やみ続け
どうしても復讐をしたい気持ちが強かったのです
しかし看護婦の誇りは捨ててなく、献身的に患者を救うことに努力してました
20年の4月を過ぎると医薬品の欠乏から病人の治療が難しくなり
一人の病人を救うために医薬品があれば救えるか?と大場大尉に聞かれると
あればなんとかします
という言葉に米軍の病院に侵入する作戦をたてます
木谷をはじめ4名が選ばれ病院に向かいます
青野はこっそりと後をつけて進みました
途中で木谷が気づき青野とわかると帰るようすすめるが
医薬品のことは私が必要だと説得されてしまいます
病院に到着すると青野は銃を持たされて柵の外で待つように命じられる
4人が袋一杯に医薬品を詰め込み出ようとしたときに
米兵の歩哨が青野に近づいてきていた
青野はこのとき復讐をすることを決意したのだろうか
これまでも何度も発砲する機会があったが大場に止められていた
数メートルの距離になったとき青野は引き金を引いた
中の4人は一斉にジャングルに向かって走るが
銃声を聞き集まった米兵に狙われる
すでに二人が倒れていた
木谷はジャングルへ飛び込み青野が見えるところまで進んだ
青野は片膝をつき米兵向けて銃を撃ち続けていた
しかしその狙撃する姿が後ろへ倒れた
米兵の数はかなり増えていた
木谷は声にならない悲鳴を上げて青野のもとへ走り、這い、向かった
青野は倒れたままだった
木谷はそっと青野を抱き上げ泣きしゃくり、顔を見ると薄ら笑みを浮かべてるようだった
そのまま青野は息を耐えた
米兵がすぐそこに来ていることもわからず木谷は青野を抱きかかえたままです
米兵の銃剣の先が木谷の胸にあてられ
そのままその剣は胸を貫きました
こうして青野千恵子は最後に家族の復讐を少なからず果たしたのだと思います
それが望みでジャングルで生き抜いたのです
青野千恵子さんは姿こそ日本女性的でなかったにせよ
その心は日本人の心だったと思います
映画では最後まで生きていたような設定になっているようです
井上真央さんが演じるのですから、少し事実と違うのも無理はないかなと思います
映画の最後はジャングルでの青野ではなく普通の日本女性となって投降した大場大尉の前に現れるストーリーで締めているようです
それも、大場さんが望んでいたことなのかも知れません
青野千恵子さんのご冥福をお祈りします