2026年1月21日。
正月の浮ついた空気もすっかり消え、部屋の中まで冷え切るような寒い一日だった。
特別な予定があるわけでもなく、いつものようにベッドに横になり、携帯を片手にYouTubeとインスタを行き来する。指は勝手に動き、動画は次から次へと流れていく。何も考えず、何も生み出さない時間。ただ、時間だけが静かに削られていった。
そのとき、ふと頭をよぎった。
——今、自分は29歳。今年で30歳になる。
俺は、20代を本気で生きてきただろうか。
大学を卒業してから、すぐに社会に出たわけじゃない。就職もせず、フリーターとして過ごした時間もあった。周りと比べて焦ることもあったし、何者にもなれていない自分に嫌気がさす夜も多かった。
そんな自分を変えたのは、今の妻との出会いだった。
「このままじゃダメだ」
そう思い、必死に就職活動をして、ようやく掴んだ仕事。採用されたあの日から、死に物狂いで営業をやってきた。
がむしゃらだった。
成果を出すために頭を下げ、数字に追われ、必死に走り続けた。
それでも、どこかで違和感は消えなかった。
雇われとして働き続ける限り、自分の時間は給料に変換されて消えていくだけ。これで本当に幸せになれるのか——そんな疑問が心の奥に残り続けていた。
だから、不動産業界に入り、宅建も取った。
いつか自分の会社を立ち上げるために。
社長になって、世の中に自分の名前を残すために。
家族を、自分の周りの人を幸せにすると決めたはずだった。
それなのに。
今の俺はどうだ。
ベッドに潜り込み、何も考えず、何も生まないSNSを眺めている。
貴重な20代最後の一年を、こんな風に消費している。
自分に、心の底から腹が立った。
欲しいものも買えない。
住みたい街にも住めない。
選択肢が限られている今の状況を作り出したのは、紛れもなく自分自身だ。
嫌気、苛立ち、そして気持ち悪さ。
胸の奥がザワザワして、逃げ場がなかった。
仕事も楽しくない。
頑張れていないからだ。
毎日、死人みたいに何も考えず、ただ時間をやり過ごしている。
鏡に映る自分の目から、覇気が消えている気さえした。
——もう、やめよう。
自分で自分を不幸にするのは、もう終わりにしよう。
刑務所に入っているわけじゃない。
やりたいことを、やっていいはずだ。
毎日、必死に生きてみよう。
完璧じゃなくていい。
少しずつでいい。
ゼロの自分を、ほんの一歩でも前に進めていこう。
そう、静かに決意した。
寒い冬の日、ベッドの上で。
でも、この日を境に——
もう、立ち止まるのはやめる。