1 号(21・2) 家族信託情報
家族信託の専門家
家族信託研究所
090-4984-8624
家族信託を情報発信します。
この度、民事信託その中の個人信託で家族に的を絞った家族信託について情報を発信することにいたしました。
当研究所では新しい相続に関する手法である家族信託を中心として活動し、相続に関するあらゆるご相談を受け、ご支援やご指導等を行ってまいりました。これは、従来の制度や手法のみでは、お客様のニーズに充分にお答えできない部分がるために、家族信託を積極的に活用するべきだとの考え方からです。
今回、当研究所のホームページを通して、さらに多くの皆様に“家族信託”に関する情報を、私なりに解説しながら発信させていただくことにいたしました。
今後は“家族信託”に関する市販本にはない、実際の事例に基づいたユーザー向けの情報を 発信させていただこうと思います。
Ⅰ 信託とは
まず信託とは何か、民事信託、個人信託、家族信託とは何かということ、及び信託の分類等についてご理解ください。
「信託」(trust)
信頼して委託すること。 他人をして、一定の目的に従い財産の管理・処分をさせるため、その者に財産権を移すこと(広辞苑)。
つまり本質的には、「財産を預ける」ことを意味する単純で理解しやすいものです。
1 新信託法の施行
新しい信託法は、平成18年12月8日に国会で成立し、平成19年9月30日に施行されました(自己信託は平成20年9月30日から施行)。
大正11年に制定された旧信託法は、実に84年ぶりに全面改正されたことになり、信託が相続対策や事業承継対策に活用できるようになりました。
しかし新信託法の施行から15年が経過しているのに、世の中ではあまり信託が実用化されていないのが現状です。
これは「信託」とは難しいもので、自分には関係がないという印象が一般に浸透していることと、「信託」が事業継承等の財産管理や承継に非常に有効であるということがあまり伝えられていないため、そして家族信託に係る専門家の経験不足による家族信託の運用面での問題があるのではないかと思われます。
信託法改正当時、インターネット検索で“家族信託”というキーワードで検索しても100件に満たない情報でしたが、現在では1,000万件をはるかに超える情報が出回るようになってきました。
これは良いことなのですが、困ったことに中には誤った情報も多く存在していることも事実です。
2 信託の領域・分野
一般に、「信託」といいますと、信託銀行や投資信託などをイメージされる方も多いかも しれません、これらは信託会社に報酬を払って行う≪営利信託≫ を指し、一般的には“遺言信託”や“投資信託”などが知られています。
ここでいう信託の概念は
① 本人の“想い”を法律的な形にし
② 財産管理と資産承継について信託法を用いて、
③ 自分の愛する家族の生活を守るために、信託という制度を利用し、
④ 中長期的な視点に立ち、安心して現在から未来に繋げる仕組み
と言えます。
これからご案内するのは、従来型の≪営利信託≫ではなく、“非営利”つまり“無報酬”を原則とする≪民事信託≫の考え方です。
注)法律的に報酬を得てはいけないということではありません。
一部報酬は法律的にも認められています。
預かった財産の運用や管理を行うためには時間を要することから、そのための報酬や
経費は必要と考えられるためです。
3 個人信託、家族信託とは
≪民事信託≫の中でも、個人が自分の財産を特定の目的のために預ける仕組みを≪個人
信託≫といい、個人信託の中でも、特に“高齢者や障害者のための財産管理”や“家族・親族に対する資産承継”の手法を、私たちは“家族信託”と呼んでいます。
もちろん、個々の家庭の事情・環境はそれぞれ異なりますが、「扶養、後見・管理、遺産分割、事業承継、社会貢献」を組み合わせ、財産の承継・移転と財産管理の二つの側面を同時に、そして確実に満たす仕組みが求められているのではないでしょうか。
Ⅱ 家族信託のニーズ
家族信託のニーズとしては、次のような例があります。
1.自分の判断能力低下の場合に備えた生活維持と財産管理のため
あるいは、配偶者(病弱・認知症)のために、自分なき後でも生活が安定するよう、今から準備をしてきたい。(成人後見人代用)
2.シルバー再婚後の老配偶者と、先妻の子のために
再婚後の老配偶者の生涯に渡る生活安定のための居住・生活資金の確保を行うと共に、死別した先の配偶者との間の子(直系卑属)に確実な財産承継・帰属できるようにしたい。
3.家の伝統的財産承継や事業承継を円滑にしたい
先祖が苦労して守り育て承継してきた不動産の管理や自社株式の議決権行使を円滑にし、また今後の相続による財産の分散を少なくしたい。
4.遺産分割における選択肢を広げたい
財産の収益及び配当・賃料などの請求権を老妻等特定の家族が受け取ることができるようにし、その元本は自分の意思を継ぐ者に帰属(引き継ぐ)させるなど、遺産分割における選択肢を広げたい。
5.財産管理・判断能力が乏しい家族を守りたい
散在する者や騙されやすい者や障がいを持ったかわいい我が子、管理・判断能力が乏しい子供や孫の生活維持や財産管理に不安があるため、確実な誰かに託したい。
6.子孫の豊かな人生や家族への感謝の気持ちを形としたい
同居または近隣居住の可愛い孫が、(浪費しない形で定期的に支援し)十分な教育を受け、豊かな人生を送ることができるようにしたい。また何かと世話になり頼りになる存在としての子孫とその家族に、感謝の気持ちとして残った財産を有意義に使えるようにしたい。
7.祖先祭祀や公益事業のために残したい
先祖や自分の存在を忘れられないよう、菩提を弔ってもらう寺院・特定の子孫または特定の非営利団体における活動等を定期的に支援または寄付し続けるようにしたい。
8.速やかに残した財産を活用できるようにしたい
全国に広がっている相続人にとって、遺産分割協議や相続手続きは煩わしく充分な話し合いができないと思われるので、煩雑な検認・相続手続きを回避し、速やかに財産を利用できるようにしたい。
また財産管理について、いつでも自由に相談しながらコントロールできる方法を選択したい。
その他、家族信託(民事信託)の手法を使えば、様々なニーズに対応できるものが発見できるのではないでしょうか。
Ⅲ なぜ家族信託が求められるか
上記のようなニーズに対して個々の家庭の事情・環境を踏まえ、適切な財産観に基づい た対応がとられるべきです。現在の制度や手法では限界があります。
1.後見制度や遺言では限界があります。
遺言は、単独行為ですのでいつでも書き替えを行うことができます。
当初の固い気持ちを気力が弱った時点で、誰かの影響を受けて変えられることもありえ得るのです。
後見制度は財産管理を中心とした制度で、後見相当となった方の財産管理には非常に効果的な制度ですが、積極的な財産の活用などはできにくいのが現状です。
後見制度は本人が存命中のみ有効で、遺言は本人死亡後に有効となります。
ご本人が生存中から死亡後まで、連続的にサポートする仕組みはこれまではなかったのです。
2.後継ぎ遺贈はその部分は無効となります。
後継ぎ遺贈とは、遺言でたとえば第一次の事業承継者を決め、その承継者死亡後は第二次の事業承継者を決めておくということがあります。しかしながら、第二次の事業承継者の部分は無効とされています。単なる希望であるということになってしまうわけです。
このような欠点を解決する方法として、これらの制度(成年後見・遺言書等)を家族信託と組み合わせることによって、可能性が大きく広がるものと思います。
信託は、法改正によって利用範囲が広がりました。
これにより「遺言に代わる生前信託」として活用できるようになりました。
「生前に、自分の意思に基づいて、相続後の道筋を決めておく」ことは、相続争いを回避するためにも良いことであると思います。
客家人(華僑と思ってください。)は、大家族を守り、維持していくための知恵として、自分の財産を生前に分配すると言います。死後の分配では、兄弟・親族間でもめごとが絶えないからだと言われているためです。
戦前は家督相続という制度がありましたが、戦後の日本の法律では、生前贈与は相続税の補完税として高率の税率で課税されますので、生前の分配は事実上不可能です。相続時精算課税制度が平成15年に導入されましたが、単に景気対策として導入されたものであって、円滑な相続対策としては不十分です。
しかし、ここで、相続に信託という手法を利用することができるようになったわけです。
Ⅳ 家族信託で老後や相続後の不安を解決
家族信託とは、個人が自分の財産を特定の目的のために預ける仕組みです。家族信託は、 財産を管理するということを目的とした欧米型の信託です。中でも比較的自由に多様なス キームを設定できるオーダーメイド信託がいま注目を集めています。
いうなればSPC(特定目的会社 Specific Purpose Company)の個人版と思っていただければイメージしやすいかと思います。
この特定目的には、
① 財産管理 ② 扶養給付 ③ 認知症に伴う不安や悩みの解消 ④ 円滑な相続のため ⑤ 事業承継対策のため ⑥遺産整理業務 etc
このオーダーメイド信託を使って、“高齢者や障害者のための財産管理”や“家族・親族 に対する資産承継”を行うのが、≪家族信託≫と言えるのです。
今後、このコラムで「民事(家族)信託の基礎」から「民事(家族)信託の具体的活用」方法 にいたるまで、できるだけわかりやすく、様々な手法などを御紹介していきたいと考えて
います。少しでも相続トラブルをなくし、財産を残してくれた先祖を敬って、幸せな生活
を送り、子孫のためにまた財産を残してあげるという、日本古来の考え方を、新信託法の大いなる活用で実現できることができればと思います。
by T.Senoo ( 文責:家族信託研究所 妹尾 哲也)