眠れませんのでこんばんは、だんごです。
なんだかいつもよりも、お布団がほくほくと、暖かいような気がします。
もうすぐ春なのですね。
もうすぐ春というこの時期に起きた、突然の事を今でもよく思い出します。
*****
5歳だった私は、いつもどおり、朝食のホットドッグを近所の喫茶店へ買いに行き、持ち帰って食べた。
ホットドッグにはケチャップとマヨネーズがかかっていて、炒めたキャベツの千切りがウインナーの下にぎっしりつまっている。毎日たべてもとてもおいしくて大好きだった。
夜遅くまで働いてきた母がいつのまにか目を覚まし、こたつでインスタントコーヒーを飲む。
いつもはテレビを見始める母が、ふいに私の方に向き直り、私にたずねた。
「だんごちゃんは幼稚園に行きたい?」
ひとつ前の春に通い始めた保育園には、5月の連休明けから少しずつ行かなくなり、梅雨の終わる頃に母と兄と私の三人で夜中にゴミを捨てにでかけ、そのまま父と暮らした部屋に戻ることはなかった。
母の働く店の寮でしばらく暮らしたあと、よく休日に遊んでくれる男のひとが手伝って引っ越しをした。
兄は引っ越す度に転校をし、小学校に通っていたが、私は毎日をひとりで自由に過ごした。
好きな時間に起き、ホットドッグを食べて、散歩をする。猫をみつけては尾行し、見知らぬ人と目が合うと逃げた。
アパートのドアはたくさんあって、どのドアが自分の部屋か分からない時はひとつ目のドアに戻って数え直した。
コンクリートの道ばかりで、公園もなく、電車が走る橋の下には駐車場があった。
駄菓子屋も無かったので、おやつはいつも酒屋で買った。
同世代の子どもに会うのは夜の託児所ぐらいだったが、暗闇で眠れないのが苦痛で、行かなくなっていた。
「行きたい」
思わず言ってしまった。
最善の答えを考えるまえに、勝手に口からこぼれ落ちてしまった。
母は立ち上がり、段ボールにあれこれ入れはじめる。
「じゃあ、おばあちゃんのところへ行こう。」
その後私は母に連れられ、父方の祖父母の家に行った。
幼稚園が楽しいことや、祖父母と毎日居られることを話したかもしれない。
私は幼稚園に行けることを素直に喜んでいた。子どもがかかえられるような、小さな段ボール箱をひとつ持って。
別れ際に
「必ず迎えにくるからね」と母は言ったが、結局そんなことは起こらなかった。
もう捨てられてしまったんだと、当時も、うすうす気づいていた。
あの時もしも私が、「行きたくない」と言っていたら、何か違うことが起こっていたのだろうか。
*****
だんご
なんだかいつもよりも、お布団がほくほくと、暖かいような気がします。
もうすぐ春なのですね。
もうすぐ春というこの時期に起きた、突然の事を今でもよく思い出します。
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5歳だった私は、いつもどおり、朝食のホットドッグを近所の喫茶店へ買いに行き、持ち帰って食べた。
ホットドッグにはケチャップとマヨネーズがかかっていて、炒めたキャベツの千切りがウインナーの下にぎっしりつまっている。毎日たべてもとてもおいしくて大好きだった。
夜遅くまで働いてきた母がいつのまにか目を覚まし、こたつでインスタントコーヒーを飲む。
いつもはテレビを見始める母が、ふいに私の方に向き直り、私にたずねた。
「だんごちゃんは幼稚園に行きたい?」
ひとつ前の春に通い始めた保育園には、5月の連休明けから少しずつ行かなくなり、梅雨の終わる頃に母と兄と私の三人で夜中にゴミを捨てにでかけ、そのまま父と暮らした部屋に戻ることはなかった。
母の働く店の寮でしばらく暮らしたあと、よく休日に遊んでくれる男のひとが手伝って引っ越しをした。
兄は引っ越す度に転校をし、小学校に通っていたが、私は毎日をひとりで自由に過ごした。
好きな時間に起き、ホットドッグを食べて、散歩をする。猫をみつけては尾行し、見知らぬ人と目が合うと逃げた。
アパートのドアはたくさんあって、どのドアが自分の部屋か分からない時はひとつ目のドアに戻って数え直した。
コンクリートの道ばかりで、公園もなく、電車が走る橋の下には駐車場があった。
駄菓子屋も無かったので、おやつはいつも酒屋で買った。
同世代の子どもに会うのは夜の託児所ぐらいだったが、暗闇で眠れないのが苦痛で、行かなくなっていた。
「行きたい」
思わず言ってしまった。
最善の答えを考えるまえに、勝手に口からこぼれ落ちてしまった。
母は立ち上がり、段ボールにあれこれ入れはじめる。
「じゃあ、おばあちゃんのところへ行こう。」
その後私は母に連れられ、父方の祖父母の家に行った。
幼稚園が楽しいことや、祖父母と毎日居られることを話したかもしれない。
私は幼稚園に行けることを素直に喜んでいた。子どもがかかえられるような、小さな段ボール箱をひとつ持って。
別れ際に
「必ず迎えにくるからね」と母は言ったが、結局そんなことは起こらなかった。
もう捨てられてしまったんだと、当時も、うすうす気づいていた。
あの時もしも私が、「行きたくない」と言っていたら、何か違うことが起こっていたのだろうか。
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だんご