　その日、カカさまは一人で産科医院へ出かけたのでした。
　体の変調と月のものが予定日をずいぶん過ぎても来ないことで、もしやと思ったのでした。
　お医者様に聞かなくても、ぼくはもうしっかりと元気な命になっていたし、健康でした。
　トトさまは、１カ月後の平成１５年度統一地方選挙の福岡市会議員選挙に向けてあちらこちらと訪問を続ける日々でした。カカさまも誰よりも心強いパートナーとして、そんなトトさまを支えていたのですが、この日はこっそりと一人でトトさまの事務所～と言っても自宅アパートのリビングですが～をぬけだし産科医院をたずねたのでした。

　そして、検診の結果、ぼくがお腹に宿って３カ月だということを告げられカカさまは帰宅したのです。トトさまも外出先から戻り、ぼくのことについての夫婦二人の家族会議が始まりました。お腹のぼくも入れれば三人の家族会議なのですが、とにかくぼくのことについての話をカカさまがはじめました。ハハさまは
　『産科に行ってきたと。３カ月て』
　　　　　　　というなり声を殺して泣きはじめました。

　選挙を１ト月後に控えてお金がないトトさまの選挙はうぐいす嬢ならぬうぐいすおばさんをカカさまがマイクを握ってやらなければ、とても人を雇えるような金銭的に余裕が無い選挙でした。１ト月後、ぼくはカカさまのお腹の中で４カ月目を向かえ、一番注意をしてもらわなければならない時期。カカさまはうぐいすおばさんをはじめ、その他すべての来るべき選挙で強いられるの肉体的負担に、お腹のぼくが耐えられるか不安で頭が混乱していました。もちろん、選挙の当落もわからず全く将来が見えないと云う不安もあったでしょう。

　そして、もう一つ、カカさまが流した涙は、ぼくの命を.絶てとトトさまが言うかもしれないと言う恐怖からでした。業深きぼくのトトさまはハハさまと一緒になる前の奥さん～実は優しいハハさまは初婚なのですがトトさまは再婚です。～にできた子を堕胎させた前科があります。それは、その方と籍を入れる前の話しですが、その頃、抜き身の日本刀のように尖って思想・政治活動をやっていたトトさまは、活動家に子は不要と手前かってな理屈で、ぼくのお兄さんだった命を絶ったのでした。トトさま二十歳の頃です。

ぼくが発見された日1／ぼくの運命をわけた日