アンディ・ウィアー著「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読んだ | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




※重大なネタバレあり

ライアン・ゴズリングが映画化権を買ったという本作。ネタバレ寛容派な私ですら何も言えなくなるほど、中盤の展開が重要な作品です。今後の映画化のことも考え、間違いなくネタバレなしで触れないとダメな作品なので、読んでない人はこの記事を見ないでください!














  ​プロジェクト・ヘイル・メアリー






アンディ・ウィアーの「火星の人」という作品がありましたが(マッド・デイモン主演の「オデッセイ」の原作)、それが私の人生ベストの小説で。絶体絶命の状態から抜け出すヒントがあるとするなら、それは「科学とユーモア」であるという素晴らしすぎるメッセージでして、幾度となく元気をもらってきた小説であります。


そんなアンディ・ウィアーの新刊「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が日本でも読めるようになるや否や各界隈から大絶賛の嵐。しかもぜったいにネタバレをしてはいけないタイプの作品ということで、誰も詳細に中身を明かさない。一体どんな作品なんだ?と思っていたらあらビックリですよ。上巻の真ん中あたりでしょうか。作中の主人公同様「えっっ??なんてこった!!!」とほんとにびっくりしすぎて声が出ました。そっちに行くの?そういう話なの?と。


ーーー病室のような部屋で目を覚ました主人公は、記憶を喪失していた。ライランド・グレースという科学者であることを思い出した主人公は、実験からここが宇宙船の中であることに気づく。また徐々に取り戻される記憶から、地球が滅亡の危機に瀕していることと、自身が地球を救うためにここにいることにも気づき、一人地球の危機に立ち向かう。ーーー


というのがwikiから引用したあらすじ。


地球が危機!というのは太陽のエネルギーをバクバク食べる地球外微生物がいまして、いろんな惑星がその微生物にやられてエネルギーを奪われてる中、頭のいい人たちが宇宙の彼方にあるとある惑星がその微生物に侵されてないことを確認。そこになにかあると睨んだ偉い人たちがその惑星にヘイルメアリーという宇宙船を飛ばしたのでした(後からわかるけど片道切符、同意なし、記憶消去という役満…)。


主人公の目が覚めて宇宙船の中であれやこれやしていく現在パートと、断片的に思い出される過去の記憶(なぜ今俺ここにいる?)という作戦ミッションの概要がわかってくる過去パートの2つが同時に進んでいくというのが、お話の構造。


ま、そんなこんなで、火星の人を連想しつつ、宇宙の彼方で科学とユーモアを駆使しながら、地球の存亡をかけた不可能なミッションに取り掛かる話(ではあるが)………と思ってた!思っていたが!


上巻の中盤でまさかのビッグサプライズ。謎の宇宙船が登場して、エイリアンが登場。そこからまさかのエイリアンと友達になってバディとなり、一緒に宇宙を救うという超胸熱展開になっていく…。なんてこった!こんな話だなんて!まったく知らずに読んだので、この展開はほんとに凄かった。まじでビックリしました。


あらゆる方面から語れそうな本作ですが、やっぱりこの作品はバディものとしてのおもしろさがずば抜けていました。なんせ言語も違えば、文化も違う、そしてなにより生物としての成り立ちが違う。そんな2人が共通の言語を構築するところからはじまりコミュニケーションを形成していく過程はもう何気ないシーンでも涙が出そうでした。なんて素晴らしいんだ!「火星の人」が1人で生きていくためにどうするか、そうだ最大の武器は科学とユーモアだ!という作品だったとすると、今回は俺たちのコミュニケーションの可能性なめんな!という作品になってて、その過程が構築され続ける上巻後半から下巻の流れはあまりのポジティブさと可能性と優しさとユーモアに胸が熱くなりまくりました。


人間という同じ生命体なのに、憎み合い、殺しあうこのご時世に、この作品を投げかけてきたアンディ・ウィアーの人類をいや宇宙生命体の全てを「信じてる」姿勢は今読むべき作品なんだなと思った次第。だって宇宙の彼方で出会った宇宙人とバディになれるんだよ?人間同士でできないはずはない…はずなのにね。あらゆる展開、SFとしての科学要素のおもしろさ、バディモノとしてのアツさ、そしてあのクライマックスからのラスト。(この本のラストシーンを読んだ人は「火星の人」の映画化作品であるリドリー・スコットの「オデッセイ」からのオマージュであることが明確にわかるでしょう。)


本当に素晴らしいものを読ませてもらった!今年触れた全エンターテインメントの中で今のところトップ。圧倒的な作品でした。


最後にこの作品映画化が進行中。ライアン・ゴズリングが映画化権を取り、おそらく主演予定。監督候補は「21ジャンプストリート」「レゴ・ムービー」など傑作しか撮ってないフィル・ロード&クリストファー・ミラー。脚本はドリュー・ゴダードの予定だとか。座組みはめちゃくちゃいい!いったいこれをどうやって映画化するんでしょうか。とにかくビジュアルが命。どうなるんだろ。楽しみに待ちたいと思います。


「プロジェクト・ヘイル・メアリー」人生の中でも間違いなく忘れ難い傑作となりました。素晴らしかった!!!!