最悪だって良いじゃない「わたしは最悪。」を観た | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 
 

  ​わたしは最悪。

 

 

監督:ヨアキム・トリアーさん

出演:レナーテ・レインスヴェさん、他

最悪だっていいじゃない

 

 

誕生日は仕事を休んで、映画館にこもる。というのを社会人になってから続けていまして、久々に2日で6本映画を一気に観たのですが、その5本目。

 

「わたしは最悪。」を観ました。監督はヨアキム・トリアーさん。監督作これまでなぜかどれも観たことがなかったのですが、予告から大好きな「テイク・ディス・ワルツ」のにおいがしたので観てきました。めちゃくちゃよかったー!!大傑作でした。

 

先に観ながら思い出した作品を並べます。↓

 

 

 

 

 

 

映像、音楽、編集、作品のテーマなど、とにかく「好き」な作品でした。まじ何から何まで好き。特に主人公がほんとに魅力的で、感情移入しまくった。恐らくこの主人公と私、同い年で。それを30歳になる誕生日休暇に観るというリアル。それも含め忘れがたい映画となりました。ここまでの当事者性を感じたのは去年の「花束みたいな恋をした」以来かも。性別は違うけど、悩みの根本とか、30なのにまだ何者でもない感じ。思考のひとつひとつが手に取るようにわかる。その決断が正解でも、間違っていても、そのどれもに寄り添いたくなる映画で、他人事じゃない感情移入で観終えました。

 

人生にとって何が幸せなのか、「幸せな人生」って何なのか、私も30になると考えるわけだけど。この映画の主人公のする数々の選択って決してこれまでの社会や常識の中では「正しい」ものではないと思うんですよね。でもなぜだろう、物凄く清々しくすら見えるのは。彼女の間違った選択に勇気をもらえるのはなぜだろうか。そういう意味では観る前はとても似ているとさえ思った「テイク・ディス・ワルツ」とは真逆の後味でしたね。間違った選択の先にある、突き抜けた清々しい、本来の行きたい自分に行きつくという優しさと力強さがある映画でした。

 

全12章立ての本作ですが、独立した12本というよりも独立しているように見えて最終的に有機的につながってくるような構成。あと今作特出すべきは映像美でしょうか。あの時世界が止まっているように「見えた」、本当はこういう決断をしたいという欲求を脳内そのまま映像化したような数々のセンスオブワンダーな映像にしびれます。

 

良く友達と飲んでたりすると、私自分で私のこと最悪だと思うわーなんて話になったりしますが、もうこの映画を観ると最悪だっていいじゃない、と思ったりします。最悪でいいじゃない、自分にわがままでいいじゃない、迷惑かけまくりでいいじゃない。この主人公の行きつくラストショットには、今だからこそ描ける力強く清々しいヒロイン像がそこにありました。言っちゃえば倦怠期カップルものという枠に入る本作だと思いますが、彼女の選択を作品や作り手が決してジャッジしない、断罪しないというのもこの近年の流れだからこそ生まれたものかなと思います。この手の映画の最終形態というか最新進化系を観たなという喜びを祝福したい。ポップながらも非常に力強い一本でした。めっちゃ好き。