窓から空を見上げる
撮影が始まって早数ヶ月
と同時に
家康公を演じさせてもらって数ヶ月
時々不安になる
俺の演技で新しい家康公が成り立つのか

『どうしたんだよ 松潤』
俺の片思いの相手の翔くんが
俺の背中を優しく叩いてきた
『うーん 既にスランプかも』
『重たいもん背負っちゃってるからなぁ
でも いつもの松潤で良くね?』

ほんの些細な会話でも
俺の原動力になる

翔くんが俺の元を離れ
今度は違う奴がやって来た
俺の全てを知る男 ニノ

『翔さんと話せて良かったですね』
小声で話しかけて来る
『まぁ…ね』
『何 歯切れの悪い』
『少しスランプ気味なんだよ』
『潤くんの家康公を楽しめばいいんですよ
翔さん 絶対録画して観る気がしますよ』
『はぁ 余計プレッシャーだよ』
『大丈夫大丈夫 肩の力抜いて  ね?』

家康公を無事に演じ切った暁には
翔くんに言うと決めている
それが仮に思い描いた結果にならなくとも
それまでは
俺の良き理解者で想い人

もう一度空を見上げてみる
大きく深呼吸してみる
台本を開く 
家康公になりきるために……