あいつ
完全に勘違いしてる
説明した……はずだよな?
いや待てよ?
忙しさにかまけて説明してなかったか!?

櫻井家の長男としての家のため
『結婚』しなければならなかった
けど
そこに愛はあるはずもなく偽装結婚
『妻』と呼ぶそいつも他に相手がおり
家のために俺と結婚
すべてが偽装で固められた生活
当然相手を束縛しない事はもちろん
俺が潤だけなのも密かに勘づいてる
『妻』の相手も同性だから
俺と『妻』の企みは合致した訳だ
時期が来れば離婚する事も了解済みだ

潤が悲しそうに部屋を出て行った後
ポツンと1人残された俺は
ソファーに見慣れた物を見つけた
かなり前に潤にあげたブランケットだった
俺が忙しいと夜な夜な
ブランケットにくるまっていたのは知っていた
淋しい想いをさせてるのも知っていた
でも親父に逆らうとろくな事がない
そっちで手一杯で
潤の事を構ってやれなかったのは事実だ

潤は今
大きな仕事を抱えて頑張ってるのに
俺が支えてやらなきゃならないのに
何やってたんだよ
自分に反吐が出る

ここが俺の本当の家だ
潤と築き上げてきた家だ
潤が帰宅するその時には
それをきちんと伝えなければ
全身全霊で伝えなければあいつの信頼は揺らぐ

潤だけを想っての俺がいる事を伝えるため
今日は寝ずに待っていよう
伝わるかどうか不安だけど伝えなければ
『俺には潤しかいないんだよ?』と………