貴方はやっぱり
違う部屋へ帰って行ったんだ

ガランとしたリビング
ここの所使った形跡のない個人部屋

貴方は俺なんてどうでも良くなった?
前に貰ったブランケットを抱きしめながら
リビングにボーっと佇む

涙が出そうになるけど駄目だ
撮影に響く
台本とスマホと必要な物を鞄に入れて
ブランケット置いていかなくちゃと
ソファーに置いた瞬間
玄関の扉が勢いよく開いて
貴方が入って来た

『潤!いるか!?』

何で?何で今なの?
貴方は俺を見つけると『ごめん!ごめん!』と
キツく抱き締めながら謝って来た

『もう行かなくちゃいけないから…』と
その抱き締められた腕を振り解き
『何に対して『ごめん』なのか分からないけど
無理にこの部屋に帰って来なくていいから』
なんて
想いとは逆の言葉を発してしまう俺も俺

『撮影何時頃まで?』
『知らない』
『じゃあ帰るまで待つ』
『貴方の部屋でもあるんだからご勝手に』
『あぁ もう1つの部屋が良ければ引っ越すから』
『潤!帰って来てから話そ?』
『俺には話す事なんて何も無い』

強がった
強がってしまった
本当は
いつでも側にいて抱き締めてもらいたいのに
でももう無理だ  無理だよ
束縛は出来ない
貴方の自由は奪えない

考えても考えても答えは出ないから
用意していた鞄を乱暴に握り締め部屋を出た




『あいつ……勘違いしてるのか?』