震える声で『翔さん……?』と答えると
電話の奥で大きなため息が聞こえて来て

『元気にしてた?』

そう聞いてきたから
冗談半分本音半分で

『誰かさんのせいで元気じゃなかった』

って答えたら
微妙な空気が流れた後に

『……ごめん……』

って聞こえて来た

『嘘だよ  元気にしてたよ』

『こないだ家を調べて行っんだ
    ストーカーみたいだよな  ごめん』

『俺居なかったでしょ?
    斗真に聞いたから』

『とうま……って……』

『うん  今俺が付き合ってる人
    翔さんとの事も知ってる』

『そっ……………かぁ
    そうだよな
    付き合ってる奴位いるよな』

『翔さんは?居ないの?』

『残念ながら(笑)
    仕事が忙しくてなかなか……ね』

『そうなんだ
    もう俺の事なんか忘れて
    誰かと付き合ってるかと思ってた』

『そんな奴に見えるか?
    ……お前にとっちゃ酷い奴だよな  俺』

『そうだよ(笑)
    急に居なくなって消えるんだもん
    あの時捨てられたと思った』

『俺は……捨てたくなかった
    でも世間体を取った
    だからお前にとっては最悪な奴だよな』

『ほんとに(笑)
    で?何か用事があるんじゃないの?』

『いや……もう何でもないから
    お前が今幸せならそれでいいよ
    潤  今幸せか?』

『翔さんが居なくなった時は
    本当にボロボロになって荒れたけど
    今は仕事も順調だし斗真もいるし
    幸せだと思ってる』

『そっか……なら良かった
    幸せに暮らせよ

『うん……ありがとう
    翔さんも幸せにね』


ほんの数十分の会話
不思議と穏やかに話せたのには驚いた
気付けば
斗真に右手をギュッと握られていた


普通に話せたな

うん  話せたね

その……未練とかは……

無いにきまってるだろ!
じゃなきゃ
斗真と付き合ってない


あ……俺
自然に未練は無いって思えた
あんなに苦しかった日々だったのに

翔さんと向き合えて良かった

少し不安そうに見ていた斗真を
ギューッと抱き締めた