(2012.3.6 修正分を赤字追記しました。)
第3節 資産評価の基準
1 資産評価の諸基準
問4-24☆☆☆ 資産と負債とは何かそれぞれ述べなさい。
資産とは過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源、つまりキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいう。負債とはその経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務またはその同等物をいう。
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資産とは過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源である。負債とは経済的資源を引き渡す義務である。
問4-25☆ 市場(購買市場と売却市場)と時点(過去、現在、未来)の組み合わせにより考えられる測定指標を指摘しなさい。
購買市場・・<過去> 歴史的原価(取得原価)
<現在> 現在受入価格(取替原価)
売却市場・・<現在> 現在払出価格(純実現可能価額)
<将来> 将来キャッシュ・フローの割引現在価値
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購買市場における過去の価格は取得原価、現在の価格は取替原価(再調達原価)であり、売却市場における現在の価格は純実現可能価額(正味売却価額)、将来の価額は割引現在価値である。
問4-26☆ 資産の測定指標と購入から売却までの合計利益との関係を簡潔に説明しなさい。
いずれの資産の測定指標を採用するかにより、各期の利益計上額は相違するが、仕入れから販売・回収購入から売却までの営業循環全体の合計利益は等しくなる、という関係がある。
問4-27☆☆ 取得原価とは何か簡潔に説明しなさい。
取得原価とは、購買市場で資産が取得された過去の時点での支出額である。
問4-28☆☆ 取得原価と実現主義の関係を簡潔に説明しなさい。
取得原価で資産が評価される場合、資産が売却市場で販売されるまでは、収益は計上されず、このことは収益の認識に関する実現原則主義と首尾一貫している。
問4-29☆☆ 取得原価の長所を簡潔に説明しなさい。
資産の取得原価額は、客観的に測定することができ、また支払額を基礎とした資産評価は、株主や債権者から受入れた資金のてん末を明らかにしている点で、受託責任や会計責任の明示に役立つ。
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取得原価は、実際の支出額に基づき客観的に測定することができ、受託責任や会計責任の明示に役立つ、という長所がある。
問4-30☆☆ 取得原価の短所を簡潔に説明しなさい。
貸借対照表に計上された資産額が時価から著しく乖離してしまうおそれがあるだけでなく、現在の物価を反映した売上収益に、過去の価格を基礎とする費用が対応づけられるという欠陥が生じる。
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取得原価は、時価から著しく乖離するおそれがあるほか、現在の物価を反映した売上収益に、過去の価格を基礎とする費用が対応づけられる、という短所がある。
3 取替原価
問4-31☆ 取替原価について簡潔に説明しなさい。
取替原価は、保有中の資産と同じものを現在の購買市場で取得して取替えるのに要する支出額である。
4 純実現可能価額
問4-32☆ 純実現可能価額について簡潔に説明しなさい。
純実現可能価額とは、資産の現在の売価から、販売費等の付随費用を控除して算定した価額である。
5 割引現在価値
問4-33☆☆ 資産の本質とこれに照らした評価を簡潔に説明しなさい。
資産とは、将来時点で企業にキャッシュ・フローをもたらす能力をもった資源であり、その将来キャッシュ・フローを一定の利子率で割り引いて算出した現在での価値(割引現在価値)を資産評価の基礎として用いることが考えられる。
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資産とは、将来、企業にキャッシュ・フローをもたらす能力をもった資源のことであり、将来キャッシュ・フローをもとに算出する割引現在価値は資産の本質と整合した価額である。
問4-34☆☆ 割引現在価値の欠点を簡潔に説明しなさい。
将来キャッシュ・フローの予測と割引利子率の選択に著しい不確実性があるため、現実には信頼性をもって計算することができないのが通常である。
問4-35☆ 割引現在価値が用いられるケースを列挙しなさい。
・一部の不良債権(貸倒懸念債権のキャッシュ・フロー見積法)
・減損が生じた固定資産
・リースの資産と債務
・利息法の償却原価法で評価する社債
・退職給付債務
・資産除去債務
6 現行の資産評価基準
(1)混合的測定
問4-36☆☆ 事業用資産の評価を簡潔に説明しなさい。
事業用資産は、原則として取得原価で評価する。
問4-37☆☆ 金融資産の評価を簡潔に説明しなさい。
金融資産は、時価で評価する。
問4-38☆☆ 金融資産を時価評価する理由を簡潔に説明しなさい。
金融資産は、誰にとっても同じ価値(市場価値)を有しており、売却が容易に可能で、また市場での売却以外に投資の目的を達成する方法がないため、時価で評価する。
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金融資産は、時価の変動による利益の獲得を目的とし、事業の遂行に影響することなく時価での売却が容易に可能であるため、時価で評価する。
問4-39☆☆ 事業用資産を原価評価する理由を簡潔に説明しなさい。
事業用資産は、時価の変動による利益獲得を目的に企業は保有しておらず、売却にも制約があることから時価評価は相応しくなく、また、キャッシュの獲得に期待どおり貢献するとは限らないことから将来キャッシュ・フローに基づいた評価も相応しくないため、取得原価で評価する。
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事業用資産は、時価の変動による利益獲得を目的としておらず、売却には事業遂行上制約がある。また、期待した価値が実現するとは限らないことから、取得原価で評価する。
(2)取得原価とその配分
問4-40☆☆ 費用配分の原則とは何か簡潔に説明しなさい。
費用配分の原則とは、原価基準で適用される事業用資産は、いったん取得原価で計上されたあと、消費に応じて各事業年度の費用として配分されなければならないとする原則のことである。
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費用配分の原則とは、費用性資産をいったん取得原価で資産計上し、消費に応じて各期の費用として配分することを指示する原則のことである。
問4-41☆☆ 費用配分の原則の適用例について述べなさい。
・商品の取得原価のうち売上に伴って引渡しが完了した分を売上原価に計上する。
・機械設備の取得原価を使用に伴う価値減少の発生に応じて減価償却費に計上する。
(3)公正価値
問4-42☆ 公正価値とは何か簡潔に説明しなさい。
公正価値とは、測定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われた場合に、資産の売却によって受取るであろう価格、または負債の移転のために支払うであろう価格(出口価格)のことである。
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公正価値とは、測定日における市場参加者間での出口価格であり、時価とほぼ同義である。