

ブログネタ:
ちょっといい話教えて
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そのティールームは、森の木々に隠れるようにしてひっそりとありました。
ここはとびきりおいしい紅茶を飲みながら、うさぎさんのお話が聞けるティールームです。
よく来たね。外は寒かったでしょう。さぁ、ストーブの前に…。
まずは熱い紅茶を1杯。おかわりは何杯でも好きなだけ召し上がれ。
では、さっそくお話をしようか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ある村にひとりの娘が両親と暮らしていた。
それはそれは美しい娘で、その娘の笑顔を見た男は一瞬で恋に落ちてしまうくらいでね。
でもその娘は15歳の誕生日を境にしゃべることをやめてしまったんだ。
理由は誰にもわからない。
しゃべらないとこを別にすればよく笑うし明るく素直な優しい娘だった。
両親はとても心配したけれど、その家は貧しくて名医といわれるお医者さんに
診てもらうこともできなかった。
娘は自分の部屋の窓からいつもシャボン玉を飛ばしていた。
それが娘の唯一の楽しみかのように、夢中で飛ばしていた。
そして娘はふわふわとただようシャボン玉を美しい笑顔で見送っていたんだ。
娘が20歳になった頃、窓からシャボン玉を吹く娘の姿を見て、恋に落ちてしまった男が
次々に求婚してくるようになった。
両親が娘がまったくしゃべらないことを言うと、がっくりと肩を落として帰っていく男も数多くいた。
けれど、それでもあきらめきれない男もいたんだ。
4人。
両親は娘には幸せになって欲しい、こんなにも娘を思ってくれる男性のもとに嫁ぐのが
一番の幸せだと考えるようになった。
そして娘に4人の中で誰がいいかと聞いたところ、娘は紙にさらさらとあることを書いて
両親に渡した。
-2週間後に私が一番望む贈り物をしてくれた人と結婚します。-
4人の求婚者の中に、絵描きの青年がいた。
絵描きはその娘のすぐ近くの家に住んでいた。
小さい頃からその娘のことが好きだった青年はどうしても娘をあきらめることができなった。
でも貧乏な絵描きに豪華なプレゼントを用意できるはずもなく悩んでいた。
アトリエで頭をかかえていると窓からシャボン玉がふわ~っと入ってきたんだ。
「あ、あの娘のシャボン玉か!?」とシャボン玉に近づくと、「ぱちんっ」とシャボン玉は割れた。
するとシャボン玉が割れたと同時に
「海が見たい…」
と女の声が聞こえた。
それは透き通るような美しい声だった。
あの娘の声なのか・・・?
まさか気のせいか・・・。
絵描きがとまどっていると、また一つシャボン玉が窓からふわ~っと入ってきた。
絵描きはおそるおそる絵筆でつついてみた。
ぱちんっ。
「南の島の美しい海が見たい…」
さっきと同じ可憐な声が聞こえた。
まるでシャボン玉が娘の声を包んで運んできたかのように。
間違いない。あの娘の声だ!
絵描きは持ってる中で一番大きなキャンバスをイーゼルにかけると一心不乱に絵を描き始めた。
彼女が望む世界で一番美しい南の島の海を描いてみせる! とね。
さて、いよいよ娘の結婚相手を選ぶ日がやってきた。
ひとり目の男は織物職人。
娘の前でクリーム色のしなやかで光沢あるとても美しい織物を広げて言った。
「この布はヤマヒツジの毛で織ってあります。
それも1頭からほんのわずかしか取れない胸の一番柔らかく暖かい毛だけを使っています。
2週間ほとんど眠らずに織り上げました。 この織物で作った服が似合うのはあなただけです。」
毛が黄色のヤマヒツジといえば数が少ないレア羊。
これだけの布を織り上げる苦労を思えば、その男がどれだけ娘を想っているかがわかる贈り物だね。
ふたり目の男はお菓子職人。
甘い香りのするとてもおいしそうなケーキを持って娘の前に行くと言った。
「このケーキは幻の花QEEN OF THE NIGHTの蜜をたっぷりと使って焼き上げました。
その花を探すのに、13日間森を探しまわりました。
花よりも美しいあなたにこそ、このケーキを食べていただきたい。」
QEEN OF THE NIGHTの花は猛獣の住む深い深い森の中。
その蜜を食べると花の魔力でいつまでも若さを保てるといわれていて、誰もがその蜜を欲しがるけれど
探しに行くには相当の勇気と強靭な体力が必要なんだ。すばらしい贈り物だね。
三人目の男は何も持ってなかった。
仕立てのよい服を着たハンサムで上品な青年で、背筋をピンと伸ばして娘の方へ歩いていくと
さっと膝を折って娘の手を取ると
「私の贈り物は手に持ってこれない物なのでこうして何も持たずにきました。
私の持っているものすべてと私の心のすべてをあなたに贈ります。」
と言って娘の白い手に軽くくちずけをしたんだ。ちょっとキザだね。
その男は村では知らない人がいないくらい有名な貴族であり大富豪ありでおまけにとびきりのイケメン。
村中の女たちの憧れの的なんだ。その彼が自分のすべてを贈りたいとは…ものすごい贈り物だね。
最後は絵描きの青年。
前の3人の贈り物と比べると自分の絵がみすぼらしく見えてきて心がくじけそうになっていた。
でも自分はあのシャボン玉の“声”を確かに聞いた。自分だけが彼女の望みをわかってあげられるんだ。
そう信じて自分でも満足のいく仕上がりになった絵を掲げて娘に言った。
「この絵は私が一度だけ行ったことのある南の島の海です。
あなたにこの美しい海を見ていただきたくて一生懸命描きました。」
娘の目はその絵に釘付けになったよ。
しばらく娘は目を伏せて考えていたようだった。
やがて意を決したようにある男の前に近づいと、美しく可憐な声で
「私はあなたのお嫁さんになります。」と輝く笑顔で言ったんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
紅茶のおかわりはいかがかな?
え?その娘は誰を選んだか?
それはね…
その娘は大富豪のイケメンを選んだよ。
そして他の3人の贈り物も彼に買い取らせたんだ。
今頃ふたりは絵描きの絵に描かれていた南の島で楽しくハネムーンを過ごしてると思うよ。
めでたし、めでたしだね。
あれ・・・ちょっと納得のいかない顔だね。
お望みの結末ではなかったかな?
でも、まぁ、これが現実ってやつさ。
お話が聞きたくなったらいつでおいで。
とびきりの紅茶を淹れて歓迎するよ。