個人的には結構悩ましい変更です。
前のルールでは、「共食い」などの「共○○」のときは漢字で、基本的には平仮名表記だったんですが、今回の改訂で、その「基本的には平仮名表記」だった部分の使い分けが必要となりました。
しかも分かりにくいことに用字用例辞典には用例だけが表示されていて、さらに参考書籍である「言葉に関する問答集」にも記載はありません。
取りあえずその分かりにくい用例を引用しますと、「共」は「共に」「相共に」「行動を共にする」、「とも」は「今後・両方-とも」「公私・自他・名実・我人-ともに」、そして「-とともに」は「雪解けとともに草木が芽吹く」です。「共」の項に「共に」があるけど「-とともに」は項立てまでされていて平仮名一択です。謎だらけです。
こんなときはやはり辞書見てみるしかないためいつものデジタル大辞泉から引用しますと、
1 同じであること。同一。「コートと共のドレス」「共の生地」
2 一緒。また、同時。「起居を共にした仲」
3
(ア)名詞の上に付いて、一対のものが同類である、また、同じ性質であるという意を表す。「共働き」「共切れ」「共蓋 (ぶた) 」
(イ)名詞の下に付いて、それが一緒に込められている意を表す。「送料共一〇〇〇円」「付録共五〇〇円」
(ウ)複数を表す名詞に付いて、それが全部同じ状態であることを表す。「二人共学生だった」「男女共若かった」
です。
これらを用字用例辞典の用例と突き合わせてみますと、まず明らかなものとして、1の意味は「共」でしょう。
3の(ア)は、前のルールと変わりない「共○○」のときです。
そして、3の(ウ)は「とも」でありましょう。
問題は、2です。冒頭に書いた用字用例辞典の「共に」は「一緒」の意味、「とともに」は「同時」の意味に見えますので、ここに当てはまると思います。ですが「トモ」では意味は一緒くたになっています。
ということで、今度はちょっと視点を変えて辞書で「トモに」の項を見てみますと、
1 一緒にあることをするさま。また、そろって同じ状態であるさま。「父と―行く」「私も兄も―健康だ」
2 あることに伴って、別のことが同時に起こるさま。「雪解けと―草木が芽吹く」
というように、用字用例辞典の用例とぴったり合った形で意味が分けて記載されていました。
というわけで、「一緒」のときは「共」、「同時」のときは「とも」でよいかと思います。
なお、「トモ」の意味の3の(イ)は、用字用例辞典の用例に該当するものがないので置いておきます……。多分そんなに使わないのではないかな……。(もはや考えたくない)