森へ行こう
セイヨウネズのある
密やかな針葉樹の森へ
ぼくはそこですべてを
捨てたかったのだ
心に影を落とす醜さや偽り
怖れのための収縮
いつしか身につけていたペルソナも
それらをもつ自分に嫌悪する
正しくありたいぼくの心
自分に抗う自分が嫌になっていた
森の中を辿り
セイヨウネズの硬く青い実をかじる
苦い思いとともに
(セイヨウネズの実はジュニパーベリー。
実は硬くウッディーな独特の刺激と
香気がある。ジンの香りのもとだ。)
森の奥に
一筋の細い水の流れがあった
口に残るセイヨウネズの
複雑な香気や爽やかな刺激は
自然とぼくの足をその上流へと遡らせた
ほどなく
そこに見たものは
小さくも絶え間なく溢れる水の源
覗き込むとぼくが揺らいで映る
心に影を落とす醜さや偽り
怖れのための収縮もペルソナさえも
湧き出る水とともに
細い木漏れ日に揺らぎながら
輝いていた
自分がいる
小さな豊かな
ぼくの源(source)
水をすくって飲んだ
セイヨウネズの刺激や苦味の中の
微かな甘さと
柔らかい水の甘みは
ぼくの中で一つになった…
そして針葉樹の木立を抜け
ぼくは森を出た
簡単に何かが変わる訳はないけれど
このままいることを受け入れている
自分の今に気づく
舌先に残った微かな甘さと
消えかかる香気を味わいながら
「この感覚をぼくはずっと覚えて
いるだろうか…」
森へ行こう
セイヨウネズの密やかな森に



