ふとしたことで、頭の引き出しの奥の奥の記憶を呼び覚まされることがある。
20年ぶりに会ったアメリカに住んでいた頃の友人。
近況を報告して、昔話に花が咲いた。
「ところで、あのドッグフードは本当に食べたの?」
と言い出した。
正直、彼のその言葉を聞くまで記憶のあまりに奥深くにあったその出来事をすっかり忘れていた。
彼は続けた。
「おまえは真のエンターテイナーだと感心したんだよね~」
ははっ(汗)
彼は仲間内ではお笑い担当の存在だった。
彼にとって人を笑わすことや、サプライズは彼の全てだったのかもしれない。
そんな彼の心に20年も私のとった行動が残っていたのだとしたら光景に思わなくてはいけないのだが、真相はエンターテイメントのようなものではなかったのだ。
まず彼が記憶していたドッグフードだが、真相はラビットフードだ。
当時の海外赴任の任期は大概どの会社も平均で3年くらいだったので、半年に1回は新しい人が来て、誰かが帰国するというようなサイクルだった。
その日もM子の家にお菓子や料理を持ち寄り、誰かの送別会を開いていた。
会も中盤に差し掛かり、ちょっと飽きが来始めた頃、食べ漁ったお菓子もなくなった皿に何故かM子が飼っていたウサギのエサを置いた。
私が間違えて食べるのを見て楽しむちょっとしたイタズラだったのだろう。
しかし、私はきゃっきゃ言いながら仕込みをしている彼女たちの姿が目の端に入っていたので間違えるわけがなかった。
アホらしいと思いつつ、場を盛り上げるためには騙されてやるのが最善だと思った。
知らぬふりしてラビットフードをパクり。
きちっと飲み込んだ。
「きゃ~食べたぁ!」
みなの反応も上々で、M子の母親に至ってはそんなにお腹が空いてるなら何か作ろうかと失笑させたほど。
まっ大成功だったわけだ。
しかも20年後も覚えていた友人がいるくらいな訳で、私の存在感は絶大なものになるというオマケも付いてきた。
さて、このイタズラのターゲットに何故私が選ばれたのか。
先にも述べたが、お笑い担当なら他にもたくさんいた。
M子が私に仕掛けたこのイタズラ、実はたまたまではなく、私を陥れたかったイジワルだった。
場が盛り上げることよりも、それがイジワルだと気づいた私は堂々と受けてたったのだ。
このお話はまた次のタイムマシンの旅で!
