〈 healing 〉
“…ジョくん…”
“…スンジョくん!おきて!”
ハニがカーテンを開けると眩しい日差しが俺の眠りを妨げた。
スンジョ:“…今日は休みだ。”
ハニ:“天気もいいし、3人で出かけようよ”
この一週間働きづめで、俺は、ずっと医局に寝泊まりしていた。
ようやく家に帰れたのは昨日の深夜、今日こそベッドでゆっくり眠れると思っていたのに、俺の安眠はハニによって妨げられた。
スンジョ:“俺は疲れてるんだ”
ハニ:“大丈夫!疲れてると思って、ちゃんと調べておいたから!”
“ほら、早く早く!”
何をどう調べたのかは知らないが、疲れたときは体を休めるなんて常識は、俺の妻には通用しないらしい。
仕方なく起こされ、着替えを済ませて下に降りると、ハニとスンハが準備万端で待っていた
スンジョ:“…どこに行くんだ?”
ハニ:“お弁当も作ったし、ピクニックに行きましょ?”
そう言ってハニが見せたのは雑誌の1ページだった。
ハニ:“う~ん、気持ちいいね~♪”
“知ってる?木からマイナスイオンってのがでてて、ヒーリング効果があるんだって。”
スンハ・スンジョ:““知ってる。””
ここは、とある森林公園。
ハニが自慢げに語った知識は誰でも知ってる事で、先程見せられた雑誌にデカデカと載せられている文句だ。
公園内を少し散策した後、俺たちは大きな木の下で昼食をとることにした。
ハニ“じゃじゃ~ん♪”
ハニが取り出したのはのりまきだった。
色とりどりの野菜が入って、見た目が上々な分、肝心の味は、かなり怪しい
『美味しいでしょ』と言わんばかりに目をきらきらさせて感想を待ちわびるハニ
恐る恐る食べてみる。
とりあえず中身に火は通っているようだが、なんと表現したらいいのだろうか。気の抜けた味というか、味にしまりがない
スンジョ:“おまえ、ちゃんと味見したのか?”
ハニ:“ううん?どうして?”
どうして?逆に俺が聞きたい。
どうしておまえは味見もせずに人に食べさせようとするんだ?
スンジョ:“…おまえ、塩と砂糖間違えたんじゃないか?”
ハニ:“え?”
ハニものりまきを食べてみる
ハニ:“あ、ホントだ”
“でも、食べれなくはないでしょ?”
そういう問題か?
スンジョ:“ったく。”
水を飲もうとペットボトルを取ろうとすると、ハニの手に邪魔をされた
ハニ:“ダメダメ!スンジョくんはこっちのスペシャルティー飲んで!”
スペシャル?かなり怪しい響きだが、少し口をつけてみる
スンジョ:“渋!!”
“何だコレ?”
ハニ:“疲れをとるにはクエン酸がいいっていうから、レモンたっぷり入れておいたの”
スンジョ:“バカ!入れすぎだ!いいから水よこせ!”
ハニ:“なによ!せっかく作ったのに。”
ふてくされるハニ
気持ちは嬉しいが、そんな怪しげなものを口にする俺の身にもなってみろ!
『俺は実験体じゃないぞ!!』
…なんて言えるわけもなく、
スンジョ:“創作料理がしたいなら、もう少しまともなものを作れるようになってからにしろ!せめて味見くらいしろよ。”
ハニ:“もう、わかったわよ。”
そう言いながらも俺は、ハニが一生懸命作ったこののりまきを、どうにかたいらげていく。
昼食を食べ終わると、ハニは“ちょっと待ってて”とどこからかバドミントンセットを借りてきた。
ハニ:“ストレス解消には体を動かすこともいいんだよ♪…でも2人分しか借りれなかったの”
申し訳無さそうなハニ
スンジョ:“俺は少し休んでから行くから、お前たち先にやっててくれ”
ハニ:“じゃあ後で順番代わろうね”
スンジョ:“わかったから早く行け”
スンハ:“行ってくるね。パパ”
スンジョ:“あぁ。行っておいで”
そうしてハニとスンハは少し離れた場所でバドミントンを始めた。
1人になって休んでいると、通り抜ける風と葉っぱの間から漏れる太陽の光が心地良く、俺はいつの間にか居眠りをしていたようだ。
スンハ:“パパ~、ママじゃ相手にならないよ。パパもしよ~”
スンハの声で目が覚めた
スンジョ:“仕方ないな。ママと交代だ”
ハニ:“ハァ、ハァ、スンハったらいろんなとこに飛ばすんだもの”
スンジョ:“おまえがヘタだからスンハに遊ばれてんだよ”
ハニからラケットを受け取り、俺とスンハはバドミントンを楽しんだ。
スンハ:“あ~楽しかった~。やっぱりスポーツはパパとする方が楽しい♪”
スンジョ:“そうか?”
スンハ:“うん♪”
スンジョ:“そういってもらえると、パパも嬉しいよ”。
スンハ:“えへへ♡”
“あ!パパ~、ママ寝ちゃってるよ?”
木にもたれ掛かり眠っているハニ
気持ちよさそうな寝顔を見てると心が和む
スンハ:“もぅ、ママ~”
ハニを起こそうとするスンハ
スンジョ:“いいよ。寝かしといてやれ。”
スンハ:“でも…
スンジョ:“これ(弁当)作るのに相当早起きしたはずだから。”
スンハ:“そっか。そうだね。”
スンジョ:“ママが寝てる間に、パパと一歩きするか?”
スンハ:“うん♡”
俺たちが公園内を一回りして帰ってくると、ようやくハニは目を覚まし、俺たちは帰路に就いた
《2人の部屋》
ハニ:“あ~ん、かゆいよ~”
スンジョ:“あんなとこで寝るからだ”
俺は今ハニの背中に痒み止めを塗らされている。
ハニ:“起こしてくれればいいのに”
スンジョ:“知るか。”
ハニ:“なによ!あたしをほったらかしにしてスンハと散歩するなんて、あたしだって行きたかったのに…ブツブツ”
スンジョ:“だからこうして薬塗ってやってるだろ?”
ハニ:“それはそうだけど…”
スンジョ:“ほら、寝るぞ。”
ハニ:“薬は?”
スンジョ:“もう塗り終わった。”
ハニ:“ありがと。スンジョくん♡”
もぞもぞと布団に入ってくるハニを、懐に入れ抱きしめた
ハニ:“あたし、薬だらけだよ?”
スンジョ:“いいから。”
ハニ:“フフフッ♡”
スンジョ:“…今日は楽しかった…癒されたよ”
確かにあの環境にも癒されたが、森林浴よりもおまえたちの笑顔と、俺のためにと一生懸命だったおまえの気持ちに俺の心は癒された
スンジョ:“ありがとな。ハ”
ハニ:“でっしょ~!!ほら、やっぱり森林浴が効いたんだよ!”
ガバッと起きあがるハニ
スンジョ:“……”
珍しく人が感謝の言葉を述べてるっていうのに、コイツは人の話を聞きやしない。
ハニ:“あ!もしかしたらあたしの愛情たっぷりスペシャルティーも効果あったのかも、また作ってあげるね♪”
スンジョ:“いらない。”
ハニ:“遠慮しなくていいから♪”
スンジョ:“遠慮じゃない!”
“(ボソッ)ったく、礼を言おうとした俺がバカだった”
ハニ:“え?なになに?”
スンジョ:“何でもない”
ハニ:“えっ?だって今何か”
スンジョ:“いいから早く寝ろ!!”
ハニ:“そんな怒ることないじゃない、もう。”
“………zzz”
怒って背を向けたかと思えば、わずか数秒後には寝息が聞こえてきた
笑って、膨れて、寝て。ホント、忙しい奴だ。
まったく、癒されてんだか疲れさせられてんだか…
ハニ:“…フフフッ スンジョくん♡ …フフッ”
クスッ どんな夢を見てるんだ?
幸せそうに寝ているハニの髪をそっと撫でてやる。
こいつと出会ってからというもの、俺はこいつに振り回されてばかり。
…だけど、
こいつの幸せそうな寝顔を見たら、そんなことどうでも良くなって、愛しさだけがこみ上げる。
スンジョ:“おまえ、俺にどんな魔法をかけたんだ?”
返事をしないハニをもう一度腕の中に引き寄せ優しく抱きしめた。
俺の腕の中にすっぽり収まる小さな体。
この小さな体のどこにあんなパワーが秘められているのか…
そのパワーに魅せられて、気付けばおまえなしでは生きられなくなってる。
本当に不思議な女だ
いつからだろう…おまえの温もりと、聞こえてくる規則正しい寝息に安らぎを感じる俺がいる。
特別な何かをしなくても、
こうやって、おまえを抱きしめて眠ること。
それが、俺の一番の癒しだってこと、
おまえはいったいいつ気づくんだろうな。
end.