2035年における職業別全体像

近年のAIやロボット技術の急速な進化に伴い、多くの職業が機械によって代替可能になると予測されています。本章では、前章までで分析を行った2035年時点における13領域・81種類の主要職業を対象に、それぞれのAI・ロボットによる推定代替率を可視化した結果を示します。

下図の棒グラフは、各職種ごとに推定されるAI・ロボットへの代替率(%)を高い順に並べたものであり、業種の違いによって代替の進行度合いに大きな格差が生じることが明らかになっています。

製造ライン作業者や事務職、カスタマーサポートといった反復的・定型的な業務を中心とする職種では、代替率が80~90%に達するものもあり、人手の大幅な削減が予想されます。一方で、看護師や介護職、教員、弁護士、研究職などの高度な対人スキル・判断力・創造性を必要とする職種では、代替率が10~30%程度にとどまり、引き続き人間が中心となって担う役割が多く残されると見られます。

このように、AIの進化によって仕事が「奪われる」か否かは単純な二元論ではなく、業務内容の性質(定型性・創造性・対人性など)に強く依存していることがわかります。したがって、単に「AI時代に消える/残る職業」を見極めるのではなく、どのようなスキルや役割が将来において価値を持ち続けるのかを丁寧に分析することが重要です。

次節からは、この全体分析を踏まえ、

AI・ロボットによる代替が困難な職業トップ20

AI・ロボットによって代替されやすい職業トップ20
のそれぞれについて、個別の職種ごとにその背景や理由を詳しく解説していきます。また、単に職業名のリストを示すだけでなく、代替されにくい職業に共通する要素や、逆に代替されやすい職業の特徴についても総括し、AI時代のキャリア選択や学び直しの方向性を見定める一助となるよう構成していきます。

 

 

 AI・ロボットに代替困難な職業トップ20

AI・ロボットによる代替が困難な職業トップ20ランキングを下表に示します。

順位

職業名

AI代替率(2035年)

1位

理学療法士(PT)

1%未満

2位

作業療法士(OT)

1%未満

3位

助産師

5%

4位

生産管理・工程管理者

10%

5位

AIエンジニア/研究者

10%

6位

歯科医師

10%

7位

獣医師

10%

8位

看護師

10%

9位

社会福祉士

10%

10位

警察官(都道府県警)

10%

11位

消防士

10%

12位

美容師・理容師

10%

13位

保育士

10%

14位

漁業従事者
(漁師)

15%

15位

教員(公立学校教諭)

15%

16位

建築士・現場監督

20%

17位

鉄道運転士

20%

18位

経営管理職(マネージャー)

20%

19位

弁護士

20%

20位

研究職・R&Dエンジニア

20%

 

 

これら代替困難な職業に共通する要素として、次の特徴が挙げられます。

 

① 人間の共感力・感情理解が不可欠

医療や介護、教育、カウンセリングでは、患者・子ども・利用者との信頼関係や感情的配慮が業務の中心であり、AIは感情を「理解」できても「共感」や「配慮」はできない。

 

② 状況変化への臨機応変な判断が求められる

看護師・自衛官・消防士・ケアマネージャーなどは、突発的な事態やケースバイケースで判断を求められるため、マニュアル化できない業務が多い。

 

③ 専門的な身体技術や手先の器用さを伴う

理学療法士や美容師などは、個別対応と繊細な手作業が求められ、AIやロボットでは再現困難。

 

④ 専門知識と倫理的判断・責任が必要

弁護士、教員などは、知識だけでなく判断責任を伴う仕事であり、AIに任せた場合の責任の所在が不明確になりやすい。

 

⑤ 対話・交渉・説得といった高度な対人能力が必須

法人営業や教員、社会福祉士などは、相手の反応を読み取りつつ適切な働きかけをする必要があり、AIでは代替が難しい。

 

⑥ 文化的・倫理的に人間が求められる場面がある

助産師や保育士、教員などでは、制度・倫理的観点から人間による関与が期待され続ける(例:出産・育児・教育など)。

 

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