第17回公募要領の要点まとめ
-
補助対象と目的: 小規模事業者(例: 飲食店等の従業員5人以下の個人事業主)が、自社の経営計画に基づき行う販路開拓や業務効率化の取組を支援する補助金です。審査により採択・不採択が決まり、不採択となる場合もあります。制度の目的に合致しない事業は対象外となります。
-
補助率・補助上限: 補助率は原則2/3(※賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)。上限額は通常50万円ですが、政策的な特例措置により増額される場合があります。第17回では以下の特例が設定されています:
-
インボイス特例: 消費税の免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)へ転換した場合、補助上限に+50万円の上乗せ。
-
賃金引上げ特例: 補助事業期間中に事業場内最低賃金を申請時より50円以上引き上げれば補助上限に+150万円の上乗せ。従業員がいない事業者は適用不可。さらに、申請時点で業績が赤字の事業者がこの特例を利用すると、上限引き上げに加えて補助率も3/4に引き上げられます。インボイス特例と併用する場合は上限+200万円(=50万+150万)となります。
-
適用例: 賃金引上げ特例とインボイス特例の両方を満たす飲食店の場合、補助上限は従来50万円から最大250万円に拡大し、赤字なら補助率も3/4となります。
-
-
加点項目(優先採択要素): 上記特例を利用することで審査時に政策加点が得られ、採択されやすくなります。特に「賃金引上げ特例」を希望すれば自動的に賃上げ加点が適用されます。そのほか、第17回公募の加点項目には以下があります:
-
経営力向上計画加点: あらかじめ「経営力向上計画」の認定を受けている場合。
-
事業承継加点: 代表者が概ね60歳以上で事業承継の準備を進めている場合(商工会議所等発行の事業承継診断票の提出が必要)。
-
後継者支援加点: 後継者候補(第二創業者)が革新的取り組みを行い、「アトツギ甲子園」ファイナリスト等に選出された実績がある場合jizokukanb.com。
-
一般事業主行動計画加点: 従業員101人未満で、女性活躍推進法または次世代育成支援法に基づく一般事業主行動計画を公表している場合(いわゆる「えるぼし認定」「くるみん認定」の関連)。
-
小規模事業者卒業加点: 補助事業実施後に常時使用する従業員数が小規模企業の定義(飲食業の場合5人以下)を超えて事業規模拡大(例: 従業員6人以上)となる見込みの場合。※将来的に小規模事業者の範囲を卒業する計画がある場合の加点で、過去に「卒業枠」で採択された事業者は対象外。
これら加点項目を満たす書類(認定証や診断票、労働者名簿等)の提出が必要です。加点項目に該当すれば審査で有利になりますが、要件を一つでも満たさない場合は補助金不交付となるので注意が必要です。
-
-
公募・申請方法上の注意: 第17回公募では電子申請のみ受付(Jグランツ経由)となっています。申請にはGビズIDプライムの取得が必須なので事前に準備してください。商工会・商工会議所発行の「事業支援計画書(様式4)」も電子申請システム上で依頼・取得する必要があります。書類不備や要件未達は減点・失格となるため、応募要領、参考資料、FAQを熟読して指示通りに書類を用意しましょう。特に特例や加点を申請する場合、該当欄へのチェックや誓約書(様式7~9)の確認・提出漏れに注意が必要です。なお、第1回創業型との重複申請はできません。
-
補助事業期間: 第17回公募分の補助事業実施期間は交付決定日(2025年9月頃想定)~2026年7月31日までで、実績報告書提出期限は2026年8月10日です。期間内に事業を完了しなければ補助金は支払われません。採択後は補助事業者として遵守すべき義務(経理報告や効果報告など)があり、不正受給が発覚した場合は交付取消・返還命令等の厳しい措置があります。
以上が第17回公募要領の概要です。特に今回は**「賃金引上げ特例」**の活用が強く推奨されており、賃上げ実施で上限引き上げ+加点というメリットが得られる反面、確実に実行する責任も伴う点に留意が必要です。
過去の採択事例に見る有効な取組例
【40†embed】 過去の採択案件では、飲食業において**販路開拓(売上拡大)**に直結する取組が高く評価されています。以下にいくつか有効な事例パターンをまとめます。
-
地元資源を生かした新メニュー開発: 地元の特産食材を使った新商品・新メニューを開発し、観光客や若年層向けに売上拡大を図った事例があります。例えば老舗飲食店がご当地食材を使った限定メニューを開発し、SNSや旅行サイトで宣伝した結果、新規観光客の来店増加につなげたケースです。地域資源や観光資源を活用した取り組みは独自性があり評価されやすい傾向です。
-
看板商品のブランド強化: 人気の看板メニューや主力商品の認知度向上のため、店舗の看板改良やチラシ作成、プロモーション動画制作などを行った例も見られます。たとえばある飲食店では看板メニューである〇〇鍋のロゴマークを制作し、店頭販売用のパッケージやポスターを作成。自店ブランドの確立によってリピーター増加と客単価向上を実現しています。
-
テイクアウト・デリバリー対応: コロナ禍以降特に多いのがテイクアウトや宅配サービスの新規導入です。店内飲食だけでなく持ち帰り需要を取り込むため、厨房設備を改装しテイクアウト専用メニューを開発、あわせてパッケージデザインや折込チラシ・SNS広告で周知するといった取組が採択されています。例えばある飲食店では総投資額300万円(厨房機器改装・パッケージデザイン・広告費)のうち200万円を補助金で賄い、自己負担わずかでテイクアウト事業を開始できたケースがあります。このように新たな販売チャネル構築による売上増が期待できる企画は採択されやすい傾向です。
-
ウェブサイト活用・ネット販売: ネット通販や予約サイトの開設も定番の取組です。自社ホームページをリニューアルしオンライン予約・決済機能を追加したり、ECサイトで自慢の食品を全国販売した事例があります。実際に「ECサイト立ち上げ+Web広告配信+パンフレット作成」といった組み合わせは採択例として多数報告されています。ウェブ集客は販路拡大効果が大きく、補助金の趣旨にも合致します。
-
業務効率化によるサービス向上: 販路開拓と直接結びつく施策ではありませんが、生産性向上も評価対象です。例えば調理の仕込み時間短縮のため最新調理機器を導入し、その分生まれた余力で新メニュー開発や接客サービス向上に充てる計画などです。ある蕎麦店では老朽化した製粉機を補助金で一新し、安定した品質で提供できるようになったことが評価されました。効率化設備の導入は販路開拓とセットで行うと効果的です。
-
新規客層の開拓: 上記の各取組と組み合わせ、ターゲット層を明確に絞った企画が成功しています。例えば「女性客向けにヘルシーメニュー開発とインスタ映えする内装改装」「高齢者向けに宅配弁当サービス開始とバリアフリー化」等ですlocal-cpa.com。実際の採択事例でも、シニア層取り込みのため店舗トイレの段差解消工事を行い、総額350万円のうち200万円を補助金で賄ったケースがあります。このように狙う客層を明確にし、そのニーズに応じた環境整備や商品開発を行うと計画の説得力が増します。
以上のように、過去の採択案件からは「売上・利益拡大の効果が大きいもの」「新商品・新サービスの展開」「地域資源の活用」「明確なターゲット設定」が共通するポイントとして挙げられています。飲食業の場合、新メニュー×プロモーションやテイクアウト対応など、わかりやすい売上増加策が高評価を得ていることがわかります。
採択率を上げるために押さえるべきポイント
公募要領の理解や事例研究を踏まえ、採択率(※近年は40~50%程度)を少しでも上げるコツを以下に整理します。
-
補助金の目的に沿った計画を立案する: 本補助金の趣旨は「販路開拓等(地道な売上増加策)や生産性向上」です。単なる設備更新や運転資金補填ではなく、売上拡大・利益向上につながる具体的な取組を軸に計画を立てましょう。「この投資で売上○○万円増が見込める」といった明確な因果関係を示すことが重要です。
-
市場分析とターゲット設定を明確に: 現状の課題(例: 若年層客が少ない、競合店が台頭して売上減少 etc)をデータや事実で示し、それを踏まえたターゲット顧客の明確化と戦略を記載しましょう。誰に何を提供し、どう売上を伸ばすのか筋道を通すことで計画の説得力が増します。「地元の観光客需要を取り込む」「近隣の高齢者ニーズに対応する」など特定の層に絞った特徴的な取組は評価が高い傾向にあります。
-
具体的かつ新規性のある取組内容: 補助事業で実施する内容はできるだけ具体的に書きます。例:「新メニュー開発」だけでなく、「地元○○産の野菜を使ったヘルシー鍋セットを開発し、新たにランチメニューに追加する」などです。また完全な新規事業でなくても構いませんが、これまでにない取り組み要素(新商品、新サービス、IT活用等)を盛り込みましょう。ありきたりな取組よりも独創性やチャレンジ精神が感じられる計画が望ましいです。
-
数値目標・成果を明示する: 計画には**KPI(重要な指標)**を設定しましょう。例えば「新規客〇〇人増加」「売上前年比+20%」「Instagramフォロワー○○人獲得」等です。定量的な目標があると、審査員にも成果イメージが伝わりやすくなります。過大すぎる目標は現実味を欠きますが、意欲的な数値を根拠とともに示すことは重要です。
-
政策的加点を活用する: 前述の賃金引上げや各種加点項目に該当すれば必ず申請しましょう。中でも賃金引上げ特例は第17回で重視されており、「従業員の賃上げ→従業員満足度向上→サービス向上→売上増」という好循環までアピールできるとベターです。実際に賃上げ特例を希望すると自動で賃上げ加点が付与され、優先的に採択される可能性が高まります。自社が満たせる加点要件は漏れなく押さえましょう。
-
実現可能性・持続性を示す: 計画倒れにならない説得力も重要です。実施体制(誰が何を担当するか)、スケジュール(いつまでに何を完了させるか)を盛り込みましょう。例えば「◯月までに試作品完成、◯月から新メニュー販売開始」といった工程表を書くと良いです。また、補助事業終了後もその取組が事業に定着し、持続的に成果を生む見込みであることを示せれば加点要素になります。
-
書類の不備ゼロ・第三者チェック: 基本的なことですが、書類不備や記載漏れは即失格につながります。応募要領の指定通りに様式を埋め、必要添付書類(見積書や証明書など)を揃えましょう。可能であれば提出前に第三者(商工会議所の経営指導員等)にチェックしてもらい、客観的な視点でブラッシュアップすると安心です。また、申請書作成に有料の外部コンサルの助力を受けた場合は所定欄にその旨記載する必要があります。記載漏れがないよう注意してください。
以上のポイントを押さえ、「誰に・何を・どう売るか」「どれだけ売上が伸びるか」「それを実行できる根拠」を明確に計画書に落とし込むことが、採択率向上のカギとなります。