いつもの日常に、光が差した
2025年4月。
大学を卒業してから1年半、都内のIT系の派遣会社でアルバイトを続けていた**岸田悠真(きしだ・ゆうま)**は、どこか満たされない日々を過ごしていた。
かつてはゲーム実況のサイトをHTMLで自作していたほどネットが好きだったが、今は週4日間、簡単なデータ入力とサイトの更新作業を繰り返すだけ。
そんなある日、たまたまYouTubeのおすすめ動画で「GoogleがFirebase Studioをリリース」というテック系ニュースが目に入る。
「AIがコードを書いてくれる時代?しかも無料で使える?…ちょっとだけ、試してみるか。」
期待半分、気まぐれ半分でアクセスしたそのツールは、悠真の人生を根底から変えることになる。
はじめてのAI開発、はじめてのアプリ
ログインすると、まるで未来のようなUI。
上部には「あなたの作りたいアプリを自然言語で入力してください」とある。
彼は、かねてから感じていた「推しアイドルのスケジュールを一括で管理できるアプリがあったら便利なのに…」というアイデアをそのまま入力してみた。
「複数のアイドルグループのSNSや公式サイトからスケジュール情報を取得して、カレンダーで一括表示してくれるアプリを作りたい」
ものの10秒で、Geminiエージェントがプロトタイプを作り始める。
Next.jsで構成されたシンプルなUI、Google Calendarとの連携、SNSスクレイピングの機能、Firebase Authによるログインまで、すべて整っていた。
「……やばい。これ、俺が1ヶ月かけてもできないレベルかも。」
ここから、悠真は夢中になった。
Geminiとのチャットで改善点を相談し、好きなUIカラーに変えてもらい、テストコードまで自動生成させた。あっという間に3日間、彼は寝食も忘れて開発に没頭した。
初めてのローンチと、ユーザーの反応
Firebase StudioのApp Hosting機能でデプロイボタンを押すと、即座にアプリが公開された。
生成されたQRコードをX(旧Twitter)に投稿して、「推しの予定管理アプリ、作ってみた。試してみてください」と添えた。
まさかのバズ。
アイドルファンの間で話題になり、翌日には1万件を超えるアクセス。アプリ名「IdolSync」は、Googleのインフラの上で軽々とスケーリングされていた。
Geminiが生成したGoogle AnalyticsとCrashlyticsのダッシュボードも活用し、ユーザーの離脱ポイントを特定、すぐさま改善。Firebase Studioの運用機能で即座にロールバックもできた。
いつしか彼のスマホは、感謝のDMで埋め尽くされた。
ビジネスへ、次のステージ
SNSで注目された悠真に、インフルエンサーや芸能事務所関係者から声がかかる。
「うちの事務所も独自のアプリを作ってみたいんですが…」 「ファンクラブ機能とか課金連携とか、対応できます?」
悠真は、Geminiエージェントを活用して、Stripe連携やCloud Functionsによる会員管理機能も拡張した。Firebase Data ConnectでPostgreSQLベースの高機能DBを導入し、AIが自動でスキーマやAPIを生成してくれるのに驚いた。
ビジネスが本格化するにつれ、チームも増え、Firebase Studioのクラウドワークスペースでリアルタイム共同開発を行うようになった。
たとえ開発者経験が浅い仲間でも、Geminiが丁寧に説明・補完してくれることで、戦力として活躍できた。
進化するGoogleと、拡張する可能性
2026年。Firebase StudioはGemini Ultra 2との統合により、音声プロンプトやマルチモーダルな入力にも対応した。
悠真は、新しい構想を温めていた。「音声で予定を話すだけで、自動でSNSやライブチケット情報を取り込んでくれるAI秘書アプリ」。
もはや彼にとって、アイデアを持った瞬間がアプリの完成に近づく瞬間だった。
Google CloudとAIの進化が彼の創造性を加速させ、Firebase Studioはまさに“開発者の相棒”として存在していた。
資金調達、法人化、そしてGoogle Cloud Next 2027での登壇へ――
悠真は振り返る。「あのときプロンプトを一行書いただけ。あそこから、全部始まったんだ」
エピローグ:誰にでも、始まりはある
悠真が今、起業家として講演する際に必ず伝えることがある。
「たった一行の文章で、世界を変えられる時代がきた。
大事なのは、あなたの中にある“やってみたい”を信じて、書いてみることだと思う。」
そう言って彼は笑う。彼の背後には、Geminiと共に描いた無数のアイデアの軌跡と、世界中の人とつながるアプリたちがあった。