中小企業の経営者にとって、政府や自治体が提供する補助金制度は事業拡大や経営改善の重要な資金源となっています。2024年11月29日に閣議決定された令和6年度補正予算により、2025年度に活用できる補助金の全体像が明らかになりました。本レポートでは、最新の中小企業向け補助金について、その概要、対象、補助金額などを体系的に整理し、経営判断の一助となる情報を提供します。
新設される中小企業向け補助金
2025年度には新たな補助金制度が創設され、成長志向の中小企業に対する支援が強化されます。これらの補助金は、高い成長目標を持つ企業や新事業展開を目指す企業にとって大きな追い風となるでしょう。
中小企業成長加速化補助金
中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円を目指す成長志向型の中小企業を対象とした新設の補助金です。最大5億円という大規模な設備投資支援を行う制度で、積極的な事業拡大を図る企業に適しています。この補助金は、野心的な売上目標を掲げる中小企業が大きく飛躍するための原動力となることが期待されています1。
中小企業新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金は、既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業へ進出するために必要な設備投資などを支援する制度です。いわば「ポスト事業再構築補助金」とも言える本制度は、事業の多角化や業態転換を図る中小企業を強力にバックアップします。市場環境の変化に対応し、新たな事業領域への挑戦を促進する役割を担っています1。
継続実施される主要補助金
2025年度も引き続き実施される主要な補助金制度についても、最新の情報をまとめました。制度の一部は拡充や再編が行われ、より使いやすくなっています。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナや経済環境の変化に対応して事業の再構築に挑むすべての事業者を対象とした支援制度です。新規事業や業態転換による売上拡大、生産設備の導入やデジタル化による業務効率化、市場ニーズに応じた新たなサービスの展開などが支援対象となります。補助額は500万円から最大7,000万円まで幅広く設定されており、中小企業から中堅企業まで幅広い業種が活用できます1。公募期間は令和7年1月10日から3月26日までで、補助率は2分の1から4分の3となっています2。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、2025年度にいくつかの重要な変更点があります。通常枠では1人での申請で最大250万円、共同・協業型では最大5,000万円の補助が可能になるなど、補助上限額が大幅に拡大されました。特別枠も再編され、これまでの「卒業枠」「後継者支援枠」が廃止され、新たに「共同・協業型」や「ビジネスコミュニティ型」が設けられています。対象経費には機械装置費、広報費、ウェブサイト関連費用などが含まれますが、ウェブサイト関連費用には一部制限があるため注意が必要です1。補助率は3分の2から4分の3となっていますが、現在は公募期間外となっています2。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業等の生産性向上のための設備投資を支援する制度です。2025年度は企業規模に応じた投資ニーズに対応するため、補助金額に係る従業員規模区分が見直され、補助金上限額の一部が拡充されています。また、力強い賃上げの実現に向けて対応する中小企業等の取り組みを支援するため、最低賃金引上げ特例が創設されました1。補助額は100万円から4,000万円、補助率は2分の1から3分の2で、公募期間は令和7年4月11日から4月25日までとなっています2。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業等のITツール導入にかかる経費の一部を補助する制度です。デジタル化を促進し、業務効率化や生産性向上を図る中小企業を支援します。補助額は5万円から450万円、補助率は2分の1以内から4分の3で、公募期間は令和7年3月31日から5月12日までとなっています2。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに経営革新を行う中小企業者等を支援する制度です。後継者不在問題が深刻化する中、円滑な事業承継を促進する重要な役割を担っています。補助額は100万円から800万円、補助率は3分の2または2分の1以内となっていますが、現在は公募期間外です2。
地域に根差した補助金制度
地域経済の活性化を目的とした自治体独自の補助金制度も充実しています。東京都を例に取り上げると、以下のような支援制度があります。
創業助成事業
創業助成事業は、東京都内における開業率の向上を目的とした制度です。都内で創業予定の個人または創業から5年未満の中小企業者等が対象となります。賃借料、広告費、器具備品購入費・産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費などが対象経費となり、補助額は100万円から400万円、補助率は3分の2以内です。公募期間は令和7年4月8日から4月17日までとなっています2。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業
この事業は、東京都内における既存事業の深化・発展を支援する制度です。変化する事業環境に対応し、経営革新を図る中小企業を支援します。補助額は100万円から800万円、補助率は3分の2以内で、公募期間は令和7年3月3日から3月14日までとなっています2。
中小企業省力化投資補助事業(一般型)
中小企業省力化投資補助事業は、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助する制度です。労働力不足が深刻化する中、省力化投資を通じて生産性向上を図る中小企業を支援します。補助額は750万円から1億円、補助率は2分の1以内から3分の2で、公募期間は令和7年1月30日から3月31日までとなっています2。
補助金一覧表
以下の表は、2025年度に中小企業が活用できる主要な補助金制度をまとめたものです。経営戦略に合わせて最適な補助金を選択する際の参考にしてください。
効果的な補助金活用に向けて
中小企業経営者が補助金を効果的に活用するためには、事前の情報収集と戦略的な計画が欠かせません。2025年度の補助金制度は全体として、デジタル化の推進、生産性向上、事業再構築、持続的な経営発展など、現代の経営課題に対応した内容となっています。特に新設された「中小企業成長加速化補助金」は、野心的な成長目標を持つ企業にとって大きなチャンスとなるでしょう。
補助金申請にあたっては、対象要件や申請期間を十分に確認し、必要な準備を計画的に進めることが重要です。また、補助金の活用は単なる資金調達ではなく、自社の経営戦略を見直し、持続的な成長につなげる機会と捉えることが成功への鍵となります。
補助金制度は年度ごとに内容が変更されることがあるため、最新情報を常にチェックし、専門家のアドバイスも積極的に取り入れながら、自社の成長戦略に合った補助金を選択することをお勧めします12。