1. タッピング(EFTなど)とは
1-1. 概要
タッピングとは、身体の特定のポイント(ツボや経穴と呼ばれる場所)を指先などで軽く叩きながら、ネガティブな感情や身体症状などに意識を向けていく手法の総称です。代表的な手法に「EFT(Emotional Freedom Techniques)」があります。EFTは、アメリカのGary Craig(ゲイリー・クレイグ)氏が考案したとされ、心理療法の要素(認知行動療法など)と東洋医学の経絡理論を組み合わせたものです。
1-2. タッピングの目的
- ストレスや不安、恐怖、トラウマなどの感情を和らげる
- 体の痛みや不調の軽減
- 自己肯定感の向上や思考のクリア化
- 日常のセルフケアツールとしてのストレス・マネジメント
1-3. タッピングの特徴
- 物理的に軽い刺激を与えるため、誰でも比較的手軽に行いやすい
- 難しい道具を必要としない
- 心身両面に働きかけるアプローチであるとされる
2. タッピングによって改善・治癒したとされる事例
2-1. 痛みの軽減
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腰痛や肩こり
物理療法や整体では改善しづらかった慢性の腰痛や肩こりがタッピングによって短期的に軽減した、あるいは痛みの程度が下がったという報告事例があります。 -
偏頭痛
ストレス要因が大きいとされる片頭痛において、タッピングとリラクゼーションを組み合わせることで、痛みが軽くなったり発作の頻度が下がったというケースがあります。
2-2. メンタルヘルスの改善
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PTSD(心的外傷後ストレス障害)
アメリカの退役軍人のPTSDプログラムでEFTが用いられ、フラッシュバックや過剰な不安感が顕著に減少したという研究報告があります。 -
うつ症状の軽減
セラピストの指導のもと、タッピングを行った結果、不安や絶望感などが軽くなったとの事例報告がいくつか存在します。
2-3. 難病や重い病気のケース
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自己免疫疾患の症状緩和
例えばリウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)の関節痛が、タッピングを日常的に取り入れることで痛みが緩和したと語る人もいます。ただし、完治までを裏付けるエビデンスは現在のところ十分とはいえず、あくまで緩和やQOL(生活の質)の向上といった観点での報告が多いです。 -
がん患者のストレス軽減
がんを患う方が心的ストレスの軽減や、痛みや抗がん剤の副作用による吐き気緩和を目的にタッピングを併用し、症状の負担が少し和らいだ例があります。がん自体がタッピングのみで「完治」するという科学的証拠は現状では見当たりませんが、精神的な苦痛が軽減されることで治療を前向きに進められる効果が期待できます。
3. タッピングのメカニズム
3-1. 科学的な視点
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経絡理論と自律神経のバランス
東洋医学における「経絡(けいらく)」を指先で叩くことで、気の流れを整えるとされています。一方、西洋医学的視点では、“ツボ”と呼ばれるポイントは末梢神経が集中している場所と近く、刺激によって自律神経系に影響を与える可能性があります。 -
ストレスホルモン(コルチゾール)の低減
一部の研究では、EFTを数分間行うことでストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが有意に低下したと報告されています。コルチゾールが高まると免疫力低下や痛みへの感受性上昇などが起こりますので、タッピングがストレス反応を軽減することで痛みや不安を和らげる効果が期待できます。 -
認知行動療法的な要素
タッピング中に、痛みや不安、トラウマなど「つらい感情」へ意識的にフォーカスしながら肯定的なフレーズを繰り返す手法が一般的です。これは心理療法の一種である認知行動療法の「言語的リフレーミング」に似た作用があり、不安や恐れを客観的に捉え直すプロセスを助けると考えられています。 -
プラセボ効果/生体フィードバック
まだ科学的エビデンスが限定的な部分も多いため、プラセボ効果(「良くなる」と信じることによる効果)や、生体フィードバック(自分の身体を意識し、注意を向けることで、無意識の緊張などが緩和される)との関連も示唆されています。
3-2. スピリチュアル的・エネルギー的視点
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気・プラーナの流れを整える
東洋医学における「気」や、インド伝承などにおける「プラーナ」は、生命を支えるエネルギーとされます。タッピングでツボを刺激することで、このエネルギーの流れがスムーズになり、身体的・精神的ブロックが解放されるという見解です。 -
魂や潜在意識の解放
スピリチュアルな文脈では、身体症状は魂や潜在意識からのメッセージとも捉えられます。タッピングで痛みにフォーカスしながら叩くことにより、抑圧されていた感情が表に出やすくなり、癒しが起こると解釈されることがあります。 -
自己ヒーリング力の活性化
タッピングによりリラックス状態を促進し、自律神経やホルモンバランスが整うことで、本来持っている自然治癒力が高まるという考え方があります。特に「自分で自分を癒す」という意識が高まる点が、スピリチュアル的にも大切とされます。
4. タッピングによって病気を癒すための具体的ガイド
以下はEFT(Emotional Freedom Techniques)でよく使われるプロトコルをベースにしたものです。一例としてご参照ください。
4-1. 手順の全体像
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問題の明確化
- まず、解消したい問題や症状を明確にします。
- 例:腰痛、肩こり、頭痛、特定の不安・恐怖など。
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強度を測る
- 0~10の数字で「痛みや不安の強さ」を自己評価します。
- タッピング前後の変化を見るためにも重要です。
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セッティング・フレーズ(導入文)の設定
- 「私は○○という痛み(不安)があるけれど、私は自分を受け入れ、深く愛しています」
- このように、問題を認めつつも自己受容を行うフレーズを用意します。
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タッピングポイントを順番に叩く
- ポイントを順に叩きながら、自分の設定したフレーズを声に出すか、意識の中で唱えます。
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再度強度を測る
- タッピングを1ラウンド行った後、もう一度0~10で強度を測ります。
- まだ数値が高い場合は、問題点や言葉を微調整して別のラウンドを行います。
4-2. 主なタッピングポイント(EFTを参考)
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空手チョップポイント(手刀部分)
- 小指の付け根部分と手首の間あたりの側面をトントンと叩く。
- 導入のセッティング・フレーズはここで主に唱えます。
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眉頭(まゆ頭の内側)
- 眉の始まり(鼻寄り)の部分を軽く指で叩きます。
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目尻(こめかみに近い部分)
- こめかみ付近を軽く叩きます。
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目の下
- 眼窩(がんか)の骨のあたりを優しくトントンと叩きます。
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鼻の下
- 上唇と鼻の間の部分を叩きます。
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あご先(下唇の下あたり)
- ちょうどくぼんでいる部分を叩きます。
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鎖骨付近
- 鎖骨のすぐ下あたり(左右でも中央でもOK)を叩きます。
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脇の下(わきの高さ)
- 脇の下、腕を下ろしたときに手が当たるあたりをトントンします。
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頭頂部
- 頭のてっぺん(百会と呼ばれるツボ付近)をトントンします。
一般的なEFTでは、この順番で繰り返しながら言葉を変えたり、感情や痛みにフォーカスを当てたりしながら進行します。
4-3. 注意点とコツ
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呼吸を深める
タッピング中はゆったりと呼吸をすることで、副交感神経が優位になりやすくなります。 -
言葉はできるだけ具体的に
「漠然とした不安」よりも「○○ができないことへの不安」など、具体的に言葉にすると感情や症状の変化を実感しやすいです。 -
強さは「軽くトントン」
痛みを与えない程度の軽いタッピングが基本です。 -
セルフケアとしての位置づけ
痛みや症状が重度の場合や、精神的なトラウマが深刻な場合は、専門家(医師や心理カウンセラーなど)と併用することが望ましいです。 -
変化の記録をつける
毎回0~10で痛みや不安の度合いを記録しておくと、客観的に効果を追跡できます。
5. まとめと留意事項
- タッピングは、身体の特定ポイントへの軽い刺激と、自己受容の言葉を組み合わせた手法で、ストレス軽減や痛みの緩和に一定の効果があると報告されることがあります。
- 科学的にはコルチゾールの低減や心理的リフレーミングなどのメカニズムが示唆されており、プラセボ効果や生体フィードバックも関わっている可能性があります。
- スピリチュアルな観点では、気・プラーナの流れの調整や潜在意識の解放、自然治癒力の活性化が語られます。
- 難病や重い症状の根治を保証するものではなく、あくまで補完的アプローチとして位置づけることが重要です。医師の診断や治療を優先しつつ、セルフケアの一環として試してみるとよいでしょう。
以上がタッピング(EFTなど)の概要、実際の事例、科学的・スピリチュアル的メカニズム、そして具体的な実践ガイドです。大切なことは、自分の身体や心の声に耳を傾けつつ、必要に応じて専門家の助けを得ながら、無理のない範囲で続けることです。タッピングが日々のストレスケアや痛み、不安の軽減に少しでも役立てば幸いです。