催眠誘導スクリプト
最後に、エリクソンの手法に基づいた自己催眠用の誘導スクリプトを紹介します。これは読んでいるだけで無意識にポジティブな変化を促すことを意図した文章です。エリクソンは「人は意識していなくても無意識は常に耳を傾けている」と考え、日常会話の中に巧みに暗示を織り交ぜることで相手に気づかれずにトランス状態へ導くことさえ可能だと示しました
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。以下のスクリプトでも、直接的な命令ではなく間接的・暗示的な言い回しを用いることで、読むだけで自然に心にポジティブなイメージが刷り込まれるよう工夫してあります。自己暗示として活用するも良し、音声に録音して聴いてみるのも良いでしょう。その際の読み上げのポイントとしては、落ち着いたゆっくりした口調で、一文ごとに**短いポーズ(間)**を入れながら読むことをおすすめします。息継ぎや区切りの際に穏やかな沈黙を挟むと、言葉のイメージがより深く染み込みやすくなります。また、可能であれば柔らかなBGMを背景に流すと一層リラックス効果が高まるでしょう。では、リラックスできる体勢になって試してみてください。
催眠誘導スクリプト:幸福と充実感を高める自己暗示
ゆったりと腰掛け、静かに目を閉じます。軽く息を吸って、ゆっくりと吐き出すたびに、体の力がふわりと抜けていきます…。(*しばらく深呼吸を繰り返す)…今、あなたの心は穏やかに静まり返り、とても落ち着いた状態です。耳を澄ますと、遠くで鳥のさえずりが聞こえるような心地よい静けさが広がっています…。その静けさの中で、あなたは自分の内側に意識を向け始めます。すると、胸のあたりに小さな温もりがあることに気づくかもしれません。それは、ろうそくの火のように優しく揺れている幸せの種のような感覚です…。今はまだ小さな種火かもしれませんが、あなたが意識を向けるにつれて、その温かな光は少しずつ明るさを増していきます…。あなたはゆっくりと辺りを見回します。そこはあなたにとって安心できる特別な場所です。柔らかな光に包まれ、心地よい空気が流れているその場所で、あなたはとても安全で守られていると感じます…。周囲を見渡すと、近くに静かな湖が見えます。湖面は穏やかで、夕日のオレンジ色が鏡のように映り込んでいます…。あなたは湖のほとりまで歩いていき、静かに水面を眺めます。波一つない水鏡に映る夕焼けをぼんやりと見つめていると、不思議なことに先ほど感じた胸の温もりが、少しずつ喜びの感情となって広がり始めました…。それはまるで、懐かしい思い出を思い出したときのような優しい喜びです。もしかすると、あなたの無意識がこれまで大切にしまいこんでいた幸せな記憶がふっと蘇ってきたのかもしれません。具体的な映像が浮かばなくても構いません。ただ、そのポジティブな感覚を静かに味わってみましょう…。
やがて、湖のほとりに一筋の風が吹き、あなたの頬に当たります。その瞬間、あなたの中で灯っている光がそっと揺れ、さらに明るく燃え上がるのを感じます…。あなたの心の奥底で何かが変化し始めたのかもしれません。それはとても良い変化です…。心の中に希望の芽が顔を出し、ゆっくりと育ち始めているような感覚が広がっていきます。あなたは気づきます。自分の中にこんなにも温かなエネルギーが存在していたことに…。このエネルギーは、これからの日々であなたを優しく照らし、支えてくれることでしょう。あなたが意識せずとも、無意識のうちに前向きな気持ちが芽生え、日常の何気ないひとときにもほっと心が満たされる瞬間が増えていきます…。
これからのあなたは、以前よりも自然に笑顔になる機会が増えているかもしれません。特別な理由がなくても、なぜか心が軽く感じられる日が増えていくでしょう…。人と話しているとき、自分でも驚くほど落ち着いた前向きな言葉が口をついて出る場面があるかもしれません。問題に直面しても、「きっと何とかなる」「自分には乗り越えられる」と静かな自信が湧いてくるのを感じるでしょう…。そしてふと振り返ったとき、あなたは気づくはずです。いつの間にか、あの重く沈んだ虚しさが消え去り、代わりに穏やかな充実感が自分の中に根付いていることに…。それは決して派手ではないかもしれませんが、確かな幸福の感覚です…。あなたの無意識が育んできたこの感覚は、これから日ごとに少しずつ強まり、あなたの人生を豊かに彩っていくでしょう…。
ゆっくりと深呼吸をして、このポジティブな感覚を胸に刻み込みます…。あなたはいつでも望むときに、この穏やかな湖畔のイメージと心の温もりを思い出すことができます…。それでは、十分に心が満たされたと感じたら、ゆっくりと現実の世界に意識を戻していきましょう。手足に感覚を取り戻し、周りの音に耳を傾けます…。準備ができたら、ゆっくりとまぶたを開けます。周囲の景色を確認し、いまここに戻ってきます…。深く満ち足りた気分とともに、あなたは目覚めました。お疲れさまでした…。
このスクリプトは、エリクソン催眠のエッセンスである間接暗示とポジティブなイメージ喚起を取り入れています。直接「こうしなさい」と命じなくとも、読み進めるうちに知らず知らずのうちに心地よい感覚が喚起され、肯定的な自己イメージが無意識に刷り込まれるよう設計されています。実際に読んでみて心が安らいだり前向きな気分になれたりしたなら、それはあなたの無意識にポジティブな変化の種がまかれ始めた証拠です。毎日でも必要なときでも構いませんので、この文章を繰り返し活用してみてください。読むたびに新たな発見や気づきが生まれ、少しずつではありますが確実にマインドセットの変革が進んでいくことでしょう。あなたの無意識という味方を信頼し、その力をこれからの幸福と充実のためにぜひ役立ててください。今ここに記した言葉が、あなたの心に前向きな変化をもたらす一助となれば幸いです。
参考文献・出典:
- Mark Tyrrell, What You Can Learn from Milton Erickson’s Therapy Strategies Beyond ‘Just’ Hypnosis
- 国分寺メンタルクリニック コラム「天才催眠療法家ミルトン・エリクソンの英知」
- トラウマケア専門こころのえ相談室 コラム「虚無感に苛まれてやる気ができない」
- ポジティブ心理学のPERMA要素解説
- NLP-JAPAN ラーニング・センター「自己催眠とは?あなたが自然と変われる催眠の3つの効果」
- Counselling Journal “Strategic therapy; techniques used by Milton Erickson”